149話 アルマー王国騎士団入団試験(四・五次試験)
四次試験の内容は実技試験。簡単に言うと、私に一太刀でも当てろということである。
私は、残っている受験者の正面に立ち、四次試験の内容の説明をする。
「これより四次試験を行う。四次試験の内容の説明に入る前に、それぞれに木剣を配布するから受け取りに来てくれ」
各々が木剣を選び終わる。
「全員、木剣を手に取ったな。それでは、試験内容の説明に移る。四次試験の内容は今、お前達がその手に持っている木剣で、私に一太刀でも当ててみせろ。言っておくが、手加減なんて考えない方が良い。むしろ、私を殺す気で、全力で来なければ、私に一太刀当てることなんて不可能だ。それと、これは集団戦に対する試験だから全員まとめてかかって来い。試験時間は30分とする。あ、それと。私も攻撃するからそれにも対処しろ。まあ、魔法や身体強化などを使わないように手加減するから、怪我はするかもしれんが、死ぬような大怪我をすることはないから心配するな」
私が受験者達にそう言い放つと、受験者達の顔が蒼ざめていた。
この時の受験者の考えていたことは一つだった。それは……“当てさせる気がないだろ!!”だった。
「全員構え!それではこれより、四次試験……開始!」
シオンの合図とともに、受験者達は、一斉に私に襲い掛かって来た。全員が恐怖の気配を纏っていたが、それと同時になんとしてでも一太刀入れてやるという、思いが感じ取れる攻撃だった。
私は、剣を受け流したり相手の隙間から奥の方にいる受験者にも攻撃する。
「どうした?この程度では、私に擦りもせんぞ。少しだけ力と速度を上げる。殺す気で来い。でないと……不合格になるぞ」
『オラァアアアア!!』
私がそう言うと、攻撃を上げてきた。どうやら全員、不合格になるのは嫌なようだな。
「さっきよりは、良くなったな。だが、まだまだだな」
その頃、四次試験の試験会場になっている、城の訓練場の横に設置された長テーブルにトワ、アイリス、信女、テレス、ウィルズ、馬場、山県の7人が審査員として、受験者達の動きなどを見て、総合的な点数から四次試験の合否を判断する。
そこから更に速度を上げた。そしてその先どうなったかは言うまでもなく……受験者全員が気絶して終わった。
「それまで!これにて、四次試験を終了します」
シオンが四次試験の終了を伝えた。
それからして、全員が目覚めた後に、最終試験である五次試験の面接試験についての説明を行った。
「最終試験は面接試験だ。試験は明後日の午前10時より行うものとする。試験時間になっても来ない者は不合格とするので、そのつもりでいるように。以上をもって解散とする」
受験者達が宿泊先へと戻る(大体は最月に宿泊している)。その後、私達は会議室で会議を行う。ただし、この会議は元々予定されていた会議である。
「ではこれより、騎士団入団試験途中報告会議を開始する。では初めに、現段階で残っている受験者の人数報告を」
「それについては、私からお伝えします。現段階で試験に残っている受験者数は、2180人中170人が残っています」
高坂さんからの報告を聞く。思ったよりも残ってるな。
「かなり人数は減ったとはいえ、私の予想よりも人数が残っているな。てっきり、三次試験で100人は切ると思ったのだがな」
「けど、三次試験でかなりの奴等が減ったのは確かだぜ」
私の呟きに山県さんがそう答えた。
「五次の面接試験で、90人も落とすことなんて出来るの?」
「その件については問題ないよ、アイリス。事前の会議でも説明をしたが、エリアの『慧眼』と私の『真偽眼』の2つの魔眼とプラスして、事前の会議では説明をしてなかった、この魔道具を使って、面接試験を行う」
「春人様、それはいったい何なんですの?」
私が魔道具を取り出すと、テレスが尋ねてきた。
「これは、自身の求めるものに相応しいかどうかを判断するための『ジャッジアイ』という魔道具だよ。スターズの宝物庫から取り出して来た」
「それって大丈夫なのですか!?」
信女が驚きながらもそう聞いてきた。
「元々この魔道具を作ったのはこの私だ。だから、申請さえすれば、直ぐにでも宝物庫から持ち出して使用することが可能だ。では、話を戻して次に、四次試験での報告を頼む」
「四次試験での結果ですが、思っていたよりも受験者達の結果は良かったです」
「具体的に頼む」
トワの報告に私がそう言い返す。
「はい。まず、全員が何度春人様に地面へと打ち倒されても、気絶する最後までする闘気が見られました。次に、これは何人かの受験者ですが、春人様の動きに対しての戦い方を変えて攻撃しようとする、戦いにおける戦闘技能などが見られました」
「なるほどな。確かにあともう少しで私に一太刀当てられそうな人物がいたのは確かだからな」
「そうね。確かに何人かだけども、春人に一撃を当てられそうな受験者が何人かいたわね」
私の言葉にアイリスがそう言った。
「とりあえず、他に何かある者はいるか?」
どうやらなさそうだな。
「では、五次試験の試験官は予定通り、私とエリアそしてシオンの3人とする。また、試験の詳細については───」
その後30分程、五次試験の詳細について話したりして、少しだけ内容を変えたりした。
「───といった内容で五次試験は行うものとする。以上、解散」
会議を終えた私は、そのまま執務室へと向かった。
「五次試験の詳細は理解しましたが、本当に先程の『ジャッジアイ?』を使っても良いのですか?」
「さっきの会議でも話たが、ちゃんと使用許可申請は行ってるから問題ない。あ、そこにある書類取ってくれ」
「どうぞ」
「ありがとう」
「春人さん。その書類の内容は、いったいどういう意味ですか?」
エリアが渡してきた書類に指を差して、そう尋ねる。渡す際に見てしまったようだ。
「そのままの意味だ」
「それが本当だとしたら大変なことになりますよ」
「分かっている。だからこそ、近日中にどうにかするために本部で会議が開かれることになっている。だから、君達が心配することは何もない」
「分かりました……」
エリアは、理解はしても、納得いかないという表情をしていた。
そして私は、書類にサインをしたりして、その日の予定はすべて終了した。
3日後───
五次試験である面接試験が開催される日となり、面接官の私とエリアそしてシオンの3人で最終打ち合わせをしていた。
「というわけで、試験はこの内容で行う。もしも予定とは違う質問をする場合には、念話で伝えてくれ」
「「分かりました」」
試験の時間となり、早速、扉をコンコンコンとノックがなった。
「どうぞ」
「失礼します」
私が許可を出すと、受験者の最初の1人が中に入る。この五次試験は、集団面接ではなく、個人面接で行われる。
「椅子にお掛け下さい」
「失礼します」
シオンが椅子に座るように促すと、受験者は、用意されていた椅子に座った。
「では受験番号7番。まず、貴方の氏名と種族、出身を述べて下さい」
エリアが名前と種族、出身を聞く。
「自分は、ラムザと申します。種族はオーガ族で、出身は、ズハルレイユ魔界国です」
「次の質問をする。この国の騎士団に志願した理由を答えてほしい」
今度は、私が受験者に志願理由を尋ねた。
「はい。自分は魔族の中では力のある種族です。ですが自分は、オーガ族の中では戦闘があまり好まず、物作りを趣味としていました。そんな中である時、物作りのための材料の調達のために冒険者ギルドに行った際、この国の騎士団で、工作兵も募集していることを知り、これならば自分でも仕事をすることが出来るのではないかと思い、志願致しました」
「なるほど。では、先程君は、物作りが趣味と言っていたが、例えばどのような物を製作しているんだ?」
「例えば、椅子やテーブル、タンス、ベッドなどの家具を主に製作しています」
「なるほど」
私がシートに書いている間にシオンが次の質問をする。
「次に、騎士団に入団したら工作兵となりないと言っていましたが、工作兵でも戦闘を行いますが、それは理解していますか?」
「もちろん理解しています。素材集めの際に戦闘は行って来ましたし、盗賊が出た際には、捕らえたり、場合によっては殺したりもしました」
「よく分かりました。では最後に何か質問はありませんか?」
「2つよろしいでしょうか?」
「構いません」
「1つ目は、本当に私のような魔族でも採用してくださるのかというものです」
最もな質問だった。確かに亜人種族でも採用すると言っても、本当に採用するかどうかは気になるものだからな。
「それは、結果次第としか言えないが、魔族などの亜人種族を雇うのは本当だ」
「そうですか。では2つ目に、この国の騎士の階級制度について教えて下さい」
「騎士の階級は、騎士見習いから始まり、騎士見習い期間が終了したら第四階級騎士、それ以降の第三、第二、第一階級騎士は、昇格試験を受ける形となる」
「分かりました。とても参考になりました」
「では、これで面接試験を終了する」
受験者が椅子から立ち上がる。
「ありがとうございました」
そして扉の前に行く。
「失礼します」
そう言い、退室した。
この後も、このような感じで面接試験は続いて行き、試験が全員の試験が終了したのは、午後3時だった。
数週間後───
入団試験から数週間が経過した。入院や体調不良によって途中の試験を受けられなかった者達も続きの試験を受けた。その者達は、全員見事に合格していた。ただし、面接試験では、不合格になった者も当然おり、その中には、他国の諜報員も紛れ込んでいた。まあ、不合格のほとんどは、アルマー王国として募集した騎士に相応しくないと判断したからだが……。
そして今、入団試験をすべてクリアした者達が訓練場に集まり、入団式を行っていた。
「挨拶の前に先に君達に言いたいことがある。アルマー王国騎士団への入団おめでとう。そして君達には、アルマー王国騎士団見習い騎士の身分がこれより与えられる。だが、これはこの国の騎士としての始まりに過ぎない。さて、ここからが本題だが、入団式が終わってからのこれからについて説明をするから、よく覚えておくように。まず、今日は、寮へ私物などの搬入作業だ。また、寮は一人一部屋としている。その後のことについては、私からではなく、陛下から直々にお話くださるので、よく聞くように。私からは以上だ」
シオンがそう言い終わると、壇上から降りて、私が壇上に上がった。
「アルマー王国国王の望月春人だ。改めて、騎士団への入団おめでとう。早速だが、日程説明の続きに入る。寮の各自の部屋への私物などの搬入が完了次第、この状態でこの場に集合。その後、この城の案内をする。その後に夕食とし、夕食が済み次第、各自自由時間とする。そして今後の説明だが、お前達は騎士見習いの階級であるため、明日の午前9時から午後3時まで座学。午後4時から6時まで実技訓練とする。また、座学内容は、この国の法律、救急法、数学、地学、地理、生物だ。そして次に、各分野の指導教官の紹介に移る」
私がそう言うと、正面に各担当教官になる者達が並んだ。
「お前達から見て、左から順に紹介しよう。まず、法律担当であり、アルマー王国宮廷副執事長兼国王専属執事のディアボロス・ディーオ。そして次に、救急法担当であり、宮廷級医師免許と帝級魔術師の資格を持ち、アルマー王国宮廷医務室室長の淡雪。数学担当であり、私の婚約者の一人で、国際警察本部本部長のトワ・ゼンフォート。地学担当であり、王宮警察本部副本部長のカナデ・グレンチャー。地理担当で、アルマー王国宰相の高坂昌信。生物担当であり、メイドギルドのSランクで、アルマー王国宮廷副メイド長のシリカ・アルカルト。最後に、実技訓練担当で、帝級魔術師の資格を持つのと同時に、剣の腕もこの国上位の実力を持ち、我が国に2つある諜報部隊の内の1つであり、その中でも、秘匿性の高いため、顔を見せられない、アルマー王国国王直属特殊諜報部隊「暗黒群」の隊長のリリーだ」
全員の名前を言い終わった後、担当教官となった者達が一礼する。リリーのことを話すのはどうなのかと言われたが、リリーから顔を隠すことを条件に許可をもらえたので、指導教官にしたのだ。
「ではこれにて、入団式を終了する。各自、自室に荷物を置き次第、この場に集合せよ」
『ハッ!』
それぞれが走って荷物を自室へと搬入し終えた後、再び集合した後、予定通りに城の中の案内をした。途中、城の中でも立ち入り禁止区域の場所や騎士団以外の警備の王宮警察官についての説明などをした後、食事を済ませ、各々自由時間とした。
これで、騎士団入団試験も本当の意味で終了だな。
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