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異世界転生術師  作者: 青山春彦
第16章 アルマー王国騎士団入団試験
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147話 入団試験の打ち合わせ

「というわけで、正式に騎士団員を募集しようと思っている」

「成程。騎士団がいない国ということで、警察という治安組織の存在を甘く見られて、犯罪が発生しやすくなっているので、騎士団員を募集するということですな」

「その通りだ」

「ところで、騎士団員の募集条件とかはもう決まってるのか?もし決まってないままだと、変な奴も採用してしまうことになるかもだぜ」

「山県の言う通りですよ。もし決まっていないのであれば、この場で決めてしまいましょう」


 まるで決まっていないという言い方だが、募集条件に関しては、昨日のうちに決めてある。


「募集要項については、勝手だが、こちらで既に決めさせてもらった。我が国の騎士団での募集するのは主に2種類。まずは、普通に戦闘や警備などをメインに行う一般騎士。そして、戦闘技術はそれほどなくても、建物の即時修復や災害時などの避難所や仮住居、仮橋の設置などを行ったりするのがメインの工兵の2種類だな。また、種族・性別・身分・年齢を問わないものとする。当然ながら、犯罪者や犯罪歴のある者、それから指名手配されている者は除外する」

「その募集条件だと、かなりの人数が来るんじゃないか?」

「ところで高坂さん。この国で騎士になりたいと思っている者がいるかどうか分かる?」


 高坂さんが立ち上がり、書類を見ながら報告をする。


「現在の状況ですが、元武田兵の希望者が40名。それから菖蒲が率いている元武田軍の隠密部隊が20名程。そして、初期募集という観点から、80名前後を採用し、まずはこの計140名を騎士団に採用し、もしも人数が足りなかったり、余裕が出てきたら、また入団試験を行うという形でどうかと」


 確かに、それなら私も管理しやすそうだな。


「よし、なら騎士団の人数や今後の採用方針は、これで決まったな。では次に騎士団長を決めるとしよう。出来れば、元軍属であり、指揮官経験のある者が良いのだが……」


 そう言いながら私は、高坂さん以外の元武田四天王達をチラッと見る。


「俺は嫌だぞ」

「儂も同じく」

「私は元々そういったのは不向きですので……」


 私の目線に気付いたようだが、あからさまに騎士団長になるのを避けた。まあそもそもこの三人には既に役職を与えてしまっている。そこに更に役職を加えるのは、流石に酷かもな。となると……。


「残りの3人の中から団長を選ぶしかなさそうだな」

「な、なんでそうなるんですか!?」


 私がそのようなことを呟くと、つかさずシオンが、椅子から勢いよく立ち上がった。


「今思えばこの3人には、既にそれなりの役職を与えている。となれば、君達3人が団長候補になるのは当然のことだ」

「それはそうですが……」

「私は、シオンちゃんを団長に推薦します」


 シオンが少しそんな反応を見せると、リリスが突然手を上げながら、シオンのことを団長へと推薦しだした。


「自分もリリスと同じく、シオンを団長へ推薦します」

「ふ、2人ともなんで私なの!?」


 2人がシオンを騎士団長候補に推薦すると、シオンが2人にツッコミを入れる。


「シオンを騎士団長候補に推薦する理由を聞いても良いか?」


 私は、2人にどうしてシオンを騎士団長候補に推薦したのかを尋ねた。

 

「理由としましてはまず、リリスは柔軟な発想や部下への対応としては飴と鞭では飴の方であり、その点だけを見れば、団長としては申し分ありませんが、大雑把な性格であり、サボリ癖もあるので、団長としてはいささか問題があります。そして私は、柔軟な思考力を持ち合わせてはいませんし、私は飴と鞭で言えば、間違いなく鞭の方であり、部下に厳しく接してしまうでしょう。それでは、団長として問題があります。騎士団長ならば飴と鞭を上手く使い分けられる方が良い。そうなってくると、自然とシオンが残ってしまうわけですが、彼女は、柔軟な思考力も持ち合わせていますので、私はシオンを推薦します」

「私は、お兄ちゃんからシオンちゃんのことをこの国に来る前から聞いててね。シオンちゃんは、誰も思いつかないようなことを思いついて、騎士団内でも信用を勝ち取って行って、更に、自分に後輩や部下が出来た時には、飴と鞭を上手に使い分けていて、下の者達に凄く信頼されてるってお兄ちゃんがいつも言っていたから、私はお兄ちゃんのその話を信じてるし、その通りだと思う。だから私は、シオンちゃんを団長に推薦します」


 2人とも、それ相応の理由があって推薦しているのだな。


「なるほど。2人の推薦理由は分かった。私は、2人の推薦理由から、シオンを騎士団長に推薦しようと思うが、意義のある者はいるか?」

『意義なし』

「待ってください!」


 全員の一致が決まったところで、シオンが待ったをかけた。


「騎士団長と言っても、他の国の騎士団に比べたら、まだ我が国の騎士団(これから入団してくる者達も含めて)は、小隊や中隊規模。つまり君は、小隊長や中隊長クラスだからそう気負わなくてもいい。それに君を含めて3人とも、私や他の指南役達の訓練もあって、実力は上がってきているから、もしも下剋上を受けても、そう簡単に負けることはないだろう」

「下剋上を受ける前提なんですか!?」

「落ち着け。仮の話だからそう気にするな。それに、騎士団の人数は、140人ほどだからそう多くもないから大丈夫だ」

「春人様……指揮官経験のない者にとって、140名という人数は大きいものです。春人様は、上の立場になってから大人数の部下の指揮を行うというのに、不安などを感じたことはなかったのですか?」


 その場にいた、トワが私に質問を投げかけた。


「私の実家は、それなりの権力を持っていて、私は幼い頃からそういった指導をたたき込まれていた。だから、私にはそういった気持ちを分かった気にはなれるが、完全に理解するのが難しい」

「そうですか……」


 私は、トワの質問に対して、そのような答えを返した。

 そして私は、少し厳格な声に変え、シオンに話しかける。


「シオン。アルマー王国国王 望月春人の名において、其方をアルマー王国騎士団長へ任命するまた、リリスおよびウィルズ・アーベントをアルマー王国騎士団副団長に任命する」

『ハッ!』


 シオンは、反対することなく跪き、それと同時に、リリスとウィルズも椅子から立ち上がるのと同時に、私に跪いた。


「任命に際しての、正式な任命書は後日渡す。だが、身分証の書き換えは今行うから、3人とも、悪いが身分証を一旦預かっても良いか?」

「もちろんです」


 そして私は、3人の身分証の役職を書き換えた後、3人に返す。


「君達は、今からその身分となる。もしも私達が仕事などでこの国を離れることがあったら、この国の事を頼むぞ」

『ハッ!』


 3人は、春人に向かって姿勢を正して敬礼をした。


「陛下。騎士団員の募集は、各ギルドなどで広めるとして、募集期間は如何なさいますか?」


 私にそう質問してきたのは、菖蒲だった。


「2ヶ月だな。特段急いでいるわけではないが、出来れば早い方が良い」


《シエラ、募集用のポスターを1枚、作成を頼めるか?ポスターの今私が想像している通りに頼む》

《作成中……完了しました》

《ありがとな》


「それと募集用の張り紙だが、こんな感じのやつで頼む」


 そう言って、私は【ストレージ】の中から、たった今シエラに作成してもらったポスターを取り出して、全員に見せる。


「何故、これほど派手なのですか?」


 この世界の募集の張り出しは基本的にカラーという概念が無い。だからこそ、カラーの方が目立つし、より宣伝効果があると思ったのだ。


「なるほど。陛下は、他の張り出しより目立たせることによって、より多くの者に騎士団募集のことを周知させ、優れた者達を集めたいという考えなのですね」


 流石は高坂だ。私の考えをこうも簡単に理解してくれるとは。


「流石だな高坂」

「恐れ入ります」

「では、募集の件は頼んだぞ」

「承知致しました」

「では、本日の会議はここまでとする。それでは解散」


 私は会議室から出ると、トワと一緒にそのまま執務室へと向かった。

 そして、即座にあの3人の任命書を作成して、机の中にしまう。これを渡すのは、明日でも良いだろ。


「あの、春人様?」

「どうした?」

「本当にあのような条件でよろしかったのですか?あの条件だと、沢山の応募者が集まると思うのですが……」

「それについてはだな、私の考えている入団試験で、おそらく三分の一は、三次試験で落ちると思っている。何故なら───」


 トワに試験内容を伝える。


「なるほど。確かにその試験ならば、少なからず落とせると思いますが、その2つをどういった意味での試験なのか理解していたらどうなさるのですか?」

「そうなれば、最終試験である面接試験で、相応しくない人物をそこで落とす」

「面接試験は、どのような感じなのですか?」

「質問内容は、氏名、出身地、志望動機、特技、趣味、長所・短所、騎士団に入ってからどのようなことをしたいかだな。だが、この面接試験では、質問内容よりも、その質問に対しての嘘の有無を確かめることが目的だ。少しの嘘ならば許容できるが、嘘が多すぎれば、報告書などが偽造・改ざんされる可能性だってあるし、そんな奴を信用できるわけがないだろ?」

「そうですね」


 トワは、私の問いにそう頷いた。


「でも、嘘の有無はどのようにして見分けるのですか?」

「私の魔眼を忘れたか?」

「確か『鑑定眼』では?」

「確かに『鑑定眼』も持っているが、その他にも『透視眼』『歪曲眼』『隠者眼』『天空眼』『真偽眼』を持っていて、今回はこのうちの『真偽眼』を使う。その他にも、既に頼んでいるが、エリアが持っている『慧眼』という、物事の本質を見抜くこと……つまり、人の善悪をエリアに見てもらって、その人物がこの国に危害を加えかねない人物かどうかを判断し、もしも危害を加える可能性がある人物だったならば、不合格とする予定だ。そうすれば、人数も大体は問題ないだろう」

「そ、そうですね……」


 この時トワは、合格人数が予定人数よりも少なくなるんじゃないかと思ったが、変な人物を城で採用するよりだったら良いのかと思い直した。

 

「2ヶ月後の入団試験が楽しみだな」

「そうですね」


 この時の2人は予想していなかった。試験参加者が、自分達の予想を遥かに超えることを……。

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