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異世界転生術師  作者: 青山春彦
第16章 アルマー王国騎士団入団試験
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146話 城下の視察

 私は今、城下町をエリアと私とエリアの王級警察本部の護衛部隊で訪れていた。まあ、要するに城下町の視察のようなものである。

 そして、最月(さいげつ)に寄り道をした。


「店の状況はどう?」

「おかげさまで、この通り繁盛して毎日が忙しいわ。今は、私一人しかいないからもう何人か人員を確保出来ない?」


 何故、ヒナタがこのようなことを私に相談するのかというと、この国での最月(さいげつ)は、国営の宿屋となっている為、ヒナタは、私が雇っている従業員ということであり、人員の調整も私の判断で決めることが可能なのである。


「人数の増員の件は、なるべく早く対処しよう。人員以外で困っていることはあるか?」

「そうねえ……宿泊人数が増えて、部屋数が足りなくなっていることぐらいだけども……流石にこればっかりは、すぐに解決は無理よね」


 ヒナタは、半ば諦めているような表情を見せた。


「客室は現在、どのくらい足りないんだ?」

「10部屋ぐらいね」

「10部屋か……」


 この最月(さいげつ)は三階建で、一階に受付、食堂、厨房、トイレ、小規模の休憩スペース、浴場。二・三階にそれぞれ15部屋の客室とトイレで、客室は、一部屋最大でも、3人までしか一緒に宿泊することが出来ない。


「分かった。宿の増築ならば、すぐにでも可能だよ。良かったら今からでも作業に取り掛かろうか?」

「本当にできるんなら、お願いしようかしら」

「任せろ」


 ヒナタは、私の話を少し信じられないような感じで聞きながら、増築の許可を出した。

 そして、私は【創造】で、階の増築を行なった。新たに四階と五階を増築し、それを見ていたヒナタが驚きのあまり、声が出ないという表情を眼見せていた。


「増築を一瞬でって、本当に凄いわね……」

「相変わらず、春人さんの【創造】は、規格外ですね。ところで春人さん。四・五階って、二・三階と同じ構造になっているんですか?」

「そうだね。初めは、少し豪華な部屋も付け足そうかなと思ったけども、ここがもっと発展すれば、もっと沢山の観光客や商人、冒険者などが集まってくる。そうすると、また増築の必要が出てくるだろ?だから、もう少ししたら、部屋の改修工事をしようと思っている」

「そうなんですね。そういえば、高坂さんが言っていたのですが、春人さんが施設の建設の建設や拡張工事、道の舗装工事などを一人で行わず、そういった仕事を行う者達に依頼という形で行わせてほしいとのことでした」


 ああ、そういうことか。私がすべてやってしまうと、専門業者の仕事を減らしてしまう。そうなってしまうと当然、金が入らない。そうなってしまうと、生活に困る者も出てくる。そうならないように、国がそういった者達に依頼をし、金を払うことによって、国の経済を回す必要がある。そうしなければ、最終的に国の経済が回らなくなってしまうからな。


「なるべく気を付けよう。だが、各省庁だけは、私しか対処出来ないから、そこら辺は勘弁してほしい」

「それは、私ではなく、高坂さんに言ってください」

「分かってるよ」


 その後、少しだけヒナタと世間話をした後、再び街の視察へと戻った。

 街の視察に戻ると、以前よりも人通りが多くなっていた。そのほとんどが、商人やその護衛の冒険者であり、その入国目的が、新興国というのもあり、ベルンガ王国やヴァース帝国に行くための休憩ポイントとしてしか、利用していなかったようだったが、この国が自分達の想像以上に発展さしていたため、滞在期間を延長して滞在しているという者が多いようだった。


「思っていたよりも、商人達の評判は良さそうですね」

「そうだな。もう少し歩こうか」

「はい」


 そうして街中を歩いていると。


「あ、こんにちは!へいか」

「王様こんにちは!」

「みんな元気そうだね」


 このように、街の子ども達に挨拶をされる。次第に、他の子ども達も集まって来た。


「へいかは、今日どうしたの?」

「あ、分かった!お母さんが言ってた、でーとってやつでしょ!!」


 正確には、デートではないんだが、視察と言っても分からないだろうし、デートってことにしておくか。


「そうだね。今は、このエリアとデート中だよ」


 そう言いながら、私は、エリアを私の方へ抱き寄せた。すると、エリアは、りんごのように顔を赤くしながら照れる。まだ、あまりこういったのには、慣れないようだな。


「そうなんだ!それじゃあ、俺達は邪魔になりそうだな」

「じゃあね王様!」

「気を付けて帰りなよ!」


 少しだけ子ども達に揶揄われたような気がしたが、多分気のせいだろう。


「春人さん。アセドライン商会に行きませんか?」

「ん?そうだな。最近、アセドラインとも会ってなかったし、会いに行ってみるか。まあ、それも、アセドラインが居ればの話だがな」


 そういうわけで、アセドライン商会に行くことになった。

 アセドライン商会に着いた私達は、店内に入る。すると、入店して来た私達に気付いた、一人の店員が、こちらに近づいて来た。


「いらっしゃいませ。陛下、エリアリア様。本日は、どのようなご用件でしょうか?」

「アセドラインはいるか?」

「商会長でしたら、執務室にいらっしゃいます。私でよろしければ、ご案内致します」

「では、頼む」

「かしこまりました」


 店員の案内で、執務室へ向かった。


「こちらが、執務室となります」


 そして、店員がドアをコンコンコンとノックをする。


「入りなさい」


 部屋の中から、アセドラインの声が聞こえた。


「失礼します。商会長、春人陛下およびエリアリア様がお見えですが、こちらにお通ししてもよろしいでしょうか?」

「お二人が来ているのか!?それで、お二人はどちらに?」

「その、こちらに……」

「久しぶりだな、アセドライン」

「春人様!?お、お久しぶりです」


 アセドラインが驚いたような声でそう言った。そして私は、部屋の中に入った。


「……相変わらずのようだな」

「面目ございません……」


 机やテーブルだけでなく、床にまで、書類が乱雑に置かれていた。


「これは……凄いですね……」


 エリアがそう、引き攣った顔をしながら言う。


「前から言っていたよな?床に置くのはまだ良いが、書類などは、ちゃんと束にして置くようにって。なのに、これはどういうことか説明出来るかな?」


(あ、これ。春人様普通にキレてますね!?)


「そ、それは……忙しくてまとめる余裕がなかったというか、その……」

「ハァー、前に一度言ったよな?そんなに忙しいくして、書類を乱雑に置くぐらいならば、秘書を就ければ良いと」


 私は、少しアセドラインに呆れながら、そう言った。


「おっしゃる通りです。ですが、秘書を就けない理由があるのです」

「ほぅ?その理由とやらを聞こうか」

「はい。正確には、秘書を就けないのではなく、秘書候補となり得る人がそもそも見つからないのです」

「もしかしてだが、秘書として募集をかけてるわけじゃないよな?」

「その通りですが?」

「お前なぁ、商会長の秘書の項目だけでの募集では、集まるものも集まらんぞ」


 私は、アセドラインに呆れた風にそう言う。


「それは、どういうことでしょうか?」

「いくらアセドライン商会が世界有数の大商会であったとして、その商会長の秘書を募集していたとしても、ただ募集しただけだと、本当に使える奴は、来ないだろう。お前のことだから、世間体を気にし過ぎて、亜人種を募集条件に入れていないのだろう。でもな、アセドライン。亜人種の中には優秀な者もいるし、人間よりも長命な者も多いから逆に人間の秘書を雇うよりも良いかもしれんぞ。もしくは、商会で既に雇っている者を秘書にするのも良いかもしれないな。既に採用されている者ならば、新たに雇う者よりもお前も少しは、信頼出来ていると思うし、商会のことを理解しているから、商会に関することならば、スムーズに作業が進むと思うぞ」

「そうなんですね、分かりました。春人様の助言を参考に、秘書選考を考え直してみます」

「ああ、そうしてみると良い」

「あの、ところで春人様は、どうしてこちらに?」

「ただ様子を見に来ただけだから、特に用事はないな」


 用事がなかったから、直ぐに商会を出ようと思っていたが、アセドラインの秘書の件で、予想以上にここにいてしまったな。


「あの、春人様」

「ん。なんだ?」

「トワは、元気にしておりますか?」

「ああ、元気にしてるぞ。今日だって、訓練場で信女と模擬戦をすると言って、着いて来なかったしな」

「そうでしたか。なら、良かったです」

「そうか。では、私はこれで失礼しよう」

「本日は、ありがとうございました」



 私達は、アセドライン商会から出る。店舗の外に出ると、もう夕方になっていた。


「そろそろお城に帰りましょうか」

「そうだな」


 私がエリアの手を握ると、エリアの顔は、赤くなって照れていた。

 そうやって城に帰ろうとしたその時。


「動くな!」

 

 そんな叫び声が聞こえ、そっちの方を見ると、冒険者と思わしき人物が、女性の首元にナイフを突き立て、人質にしていた。その犯人に対して、複数の警官が説得を行なっていた。


「もう逃げられないぞ!大人しくその女性を解放して投降しなさい!」

「一旦落ち着け!その女性は関係ない。人質ならば、俺がなる。だからその女性を解放してくれないか?」

「黙れ!俺は投降もしないし、人質を交換する気もねえ!俺がこの国を出るまで大人しくしていろ!」


 相手は、かなりの興奮状態だな。それにナイフがあんなにも近くては、近づいた途端にあの女性の首を掻き斬る可能性が高いな。

 とりあえず状況を確認するため、警官と合流することにした。ただし、エリアには少し遠くから見てる程度に留めてもらった。


「ご苦労。状況はどうだ?」

「へ、陛下!?ご苦労様です」


 その場にいた警官が、私に一斉に敬礼をする。普段ならば問題ないが、この場での対応としては、あまりよろしくない。理由は、誰が上官なのかが明らかに分かってしまうからだ。


「普段この場で、そんなかしこまった挨拶をする奴が何処にいるんだ、この馬鹿モンが!!」

「も、申し訳ありません!」

「まず、アイツを人質から離す必要がある。ナイフが首元から1センチ程度、離れさせることが出来れば、私のスピードでどうにかなる」


 警官に小声でそう伝える。


「ならば、我々でどうにか奴の気を引き、首元のナイフを遠ざけるようにします」

「頼む」

「お任せください」


 私は、警官に後のことを任せて、犯人の後ろ側に行く。ナイフが首元から離れたかは、空気の流れを読めば分かるから問題ない。

 警官が犯人の気を引こうと、あれこれ言っていたら、犯人の気に触れるようなことを言ったようで、犯人が警官にナイフを向けて叫ぶ。


「テメェらいい加減にしろよ!この女を殺されてえのか!良いか、俺がこの国を出るまで俺に近づくんじゃねぇ!!もし近づいたらこの女を殺すからな!」


 そう叫んでいる間、ナイフが離れているのを見逃さず、犯人が叫び終わって、首元にナイフを戻そうとする瞬間に、奴のナイフを持っている方の手首を握り、ナイフを握れない程の力を入れ、犯人の手から地面に落ちたナイフを足で遠くに蹴飛ばした。

 そして腕を後ろに回して、関節を完全に固定し、動けなくした。


「大人しくしろ」

「クソォォォ!!」

「ワッパ寄越せ」

「どうぞ」


 警官の1人から手錠を借りて、犯人の手に掛ける。


「人質強要の現行犯で逮捕する」

「何でこうなるんだよ。この国には、騎士団がないからって思ってみれば、何でこんな奴らがいるんだよ……」


 そう呟きながら、警官に連行されて行った。


「ご協力ありがとうございました。陛下」

「気にするな。後始末が終わったら通常業部に戻れ」

「了解しました」


 騎士団……か。


「エリア。そろそろ夜だし、城に戻ろうか」

「はい」


 明日の午前にでも騎士団についての会議をするか。

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