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異世界転生術師  作者: 青山春彦
第15章 ランス教国
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143話 ランス教国の秘密

 ランス教国国境付近に差し掛かる。そろそろだなと思い。無線を助手席に座っている者に取ってもらい、無線を入れる。


『全車両に通達。ランス教国国境付近に差し掛かった為、ここからは、サイレンを鳴らさず、赤灯の点灯のみとする』


 ランス教国の聖都入り口の門を塞がれたら入れないから、先に航空部隊(ヘリ)によって丁度着くタイミングで、ヘリに乗っている宗教ギルドの聖騎士とスターズ職員らで聖都入り口を制圧してから、聖都内に入り、神殿を完全包囲するというのが、第一段階目の計画だ。

 そして、聖都入り口付近に差し掛かると、上空には、多用途ヘリコプターUH-60JA12機が、ドアガンで威嚇射撃をしていた。さらに地上には、そのヘリからリペリング降下したと思われる隊員と大型輸送ヘリコプターCH-47JA13機着陸しており、そのうちの5機には10式戦車が搭載されており、既に門内に入っていた。残りの8機には、国防省の国防陸軍隊員が乗っていたが、その隊員達も門の制圧などに取り掛かっている。

 因みに制圧といっても、別に教国の警備の聖騎士を殺したりはしていない。そもそも今回の作戦は、出来るだけ殺しをしないようにしている。

 門に差し掛かり、私達の車両は、開門された門を通過して行き、神殿を完全包囲するような形で駐車する。更にそこにスターズと宗教ギルドのランス教国支部の者達も続々と到着する。そして、続々と車から降り、それぞれ武器を取り出して、いつでも戦闘が可能な状態になる。


「私はスターズとして家宅捜索令状を見せるため、宗教ギルドの教会捜索令状と国際警察の家宅捜査令状を今作戦の法務局異端審問官の指揮官であるネスト宗教ギルド本部所属司教級宗教ギルド職員とアルベール警部に任せたい。頼めるか?」

「畏まりました、春人法王級ギルド職員様」

「承知致しました。春人様」


 この騒ぎによって、中にいた聖騎士達が出て来る。


「いったい何なんだ騒がしい……」


 神殿から出てきたのは、キャメロン大司教だった。これは都合が良いと思い、スターズと宗教ギルドで令状を見せる。


「我々は、宗教ギルド本部の者だ!これよりこの神殿に対して、宗教ギルドが定める宗教規定法の違反容疑に対する教会捜索の強制執行を行う!!」

「我々は、スターズの者である!このランス教に対して、詐欺罪、殺人未遂罪、不正取得罪などの容疑で家宅捜索令状が出ている!大人しく捜索を受け入れろ!」

「国際警察の者である!この宗教団体に対し、国際人道法違反の容疑で家宅捜索令状が発行されている!無駄な抵抗をせず、大人しくしろ!」


 それぞれ三組織が令状を見せながらそう告げると、聖騎士達の大半は、剣を仕舞ったが、何人かは襲いかかって来たので、そういった者達は、即座に手錠をかけて拘束した。その様子を見ていたキャメロン大司教も恐怖に満ちた顔だったが、それを無視して私は、キャメロン大司教に銃を突きつけて、脅し……お願いをして中に入ってもらった。

 神殿の謁見の間の様な場所へと向かうと、そこには教皇の格好をした、まったくの別人がいた。


「ようこそ我らがランス教神殿へ。アルマー国王陛下、ならびに宗教ギルド、スターズ、国際警察のみなさん。私がこのランス教国教皇ゲルトルーデ・コーナーです」


 少なくとも教皇代理とかと名乗るかと思っていたが、まさか自身が教皇しかも現教皇を名乗るとは思わなかった。これは、侮られてるな。


「あまり私をなめるなよ、小娘」

「こ、小娘……!?」


 私は思わず口調が少しおかしくなっていた。

 ゲルトルーデ教皇の名を騙る者は、私がゲルトルーデ枢機卿級宗教ギルド職員の顔を見たことがないと思っているのだろうが、私も元枢機卿級宗教ギルド職員だったんだ。顔も何回か合わせているので、当然顔を覚えている。


「教皇猊下に向かってなんたる無礼か!」

「私に小娘と言っていますが、アルマー王の方が私よりも年下ですよ」

「やはりこの見た目では勘違いされている様だが、私はエンシェントヒューマンという長命種であり、既に300は軽く超えている」


 私がそう言うと、その場にいたランス教の者達がそろって驚く。


「小娘よ、私はこれでも宗教ギルド本部所属枢機卿級宗教ギルド職員だったから、同じ階級だったここの教皇とは馴染みがあるんだよ。だからそんな下手な真似をしても無駄だ。それと、それぞれの令状の下、この神殿に対して、立ち入り捜査を強制執行する。大人しくその場にいなさい。ところで、本物の教皇は何処だ?」


 その女は、そのまま黙り込む。


「本物は何処かと聞いている」


 今度は殺気を混ぜた声で言う。


「……ち、地下牢の中です」


 なんで教皇を地下牢なんかに投獄してるんだ!?おそらく2人と同じ場所にいるはずだ。


「スターズの何人かと国防軍の衛生科の者は私と共に来い。それ以外は、作戦を継続せよ」


 は!と一斉に言い、それぞれの仕事に取り掛かる。そして、私達は地下牢へと急いで向かった。

 地下牢のある地下への入り口前のドアには、警備の騎士が2人立っていた。その2人に宗教ギルドの身分証を見せたが、襲いかかって来たので、そのまま気絶させたところで、手錠をかけて拘束をし、そのまま監視させた。

 入り口のドアを開けて中へと入り、地下牢への階段を降りる。

 地下牢のある地下へと降りると、幾つもの牢が並ぶ。


「牢の中を確認しろ!」


 部下達に牢をひとつひとつ中を確認させる。


「対象発見!!」


 急いでその牢に向かう。


「アルマー国王陛下!?なぜここに!?」

「説明は後でする。今から鉄格子を破壊するから少し離れていなさい」


 鉄格子から離れたところで、鉄格子を【デリート】で消滅させる。


「無事か?」

「はい、ですが……」

「分かっている。教皇が牢に入れらるとはな……しかも厄介な毒を盛られている。この毒でこれだけ長く生きられているのには驚きだが、このままでは、後30分も持たないだろうな」

「私も力を使って、最初よりも症状は抑えてはいたのですが……」

「なるほど。『治癒の魔術師』の回復ならば、この毒も効果は薄くなるだろうな」

「春人様は、この毒のことをご存知なのですか?」

「この毒は、ある地域でしか生息していない植物から採れる猛毒であり、水滴一滴の半分ほどの量でも体内に摂取しても2時間以内の致死率は100%と言われる、アイギス毒別名竜殺しの毒とも言われ、現在でも解毒剤が存在ていない物だ。いくら『治癒の魔術師』と言われる君でもこの毒を完全に治癒することは不可能だ」

「だったらどうするのですか?」

「私が解毒する」

「可能なのですか!?」

「可能だ。神級の回復が『治癒の魔術師』だけではないことを教えてやる」


 この毒を解毒するには、【ポイズンヒール】や【アルティメットヒール】では解毒することができない。それこそ『治癒の魔術師』のような高性能な回復魔法が必要となる。


《シエラ、竜殺しの毒に対しる回復魔法があったよな?》

《確かに存在しています》

《その名前はなんだったか?》

《パーフェクトヒールです。これは現在この世界でマスターのみが所有している回復魔法です。ただし、このような事態にしか効果を発揮しない回復魔法のため、私がマスターの魔法一覧の中から抜き取りました》

《余計なことを……とにかく今すぐにでも発動できるか?》

《可能です》


 さっさと解毒して、苦しみから解放してやろう。


「【パーフェクトヒール】」


 【パーフェクトヒール】をゲルトルーデにかける。


「【パーフェクトヒール】!?」


 この魔法を知っていたのであろうエイルが驚きの声をあげる。なんせ、この【パーフェクトヒール】は、はるか昔に失われたとされる神話級の回復魔法なのだからな。

 そして、地下牢に目を開けられないレベルの光が広がり、数秒が経つと、光が徐々に収まった。

 そして、死にかけていた教皇が目を開ける。


「お久しぶりです、春人枢機卿級宗教ギルド職員様」

「久しぶりですね、ゲルトルーデ宗教ギルド本部所属枢機卿級宗教ギルド職員」

「はい、解毒してくださりありがとうございます」

「気にしないでくれ。それと、今の私は昇格して、宗教ギルド本部所属枢機卿級宗教ギルド職員ではなく、宗教ギルド本部所属法王級宗教ギルド職員となっている」

「法王級とは、いったいどのようなものなのですか?」

「権限は、宗教ギルド本部所属教皇級宗教ギルド職員とほぼ変わらず、簡単に言ってしまえば、現地最高位司令官って感じだな」

「そうなのですね」

「それよりも今は、なぜ教皇である貴女までこの牢に囚われ、しかも毒まで盛られていたのか教えてくれるか?」

「分かりました。お話し致します」


 何が起こったのかを話しだす。


「この子達が帰国後、アルマー王国で何があったのかを聞きました。太陽神ランス様が存在しないを……その時点で他の枢機卿や大司教は、この子達、聖女であるエイルは、処刑することができないので、エリザベート大司教の処刑が言い渡されましたが、彼女は続けてランス様は、存在していないが、別な神様と会ったと言うではないですか。ですので、処刑に待ったをかけた結果、このようなことになりました」

「もしかしてだが、貴女はランス神が存在していないことを知っていたのでは?」

「……はい」

「この状態がどれぐらい続いていたのかに関しては法務局異端審官による尋問の際に問われると思うが、宗教規定法違反で、貴女には降格処分が下る可能性が高いことを覚えていてほしい」

「覚悟はしておりました。ああ、是非とも、2人が会ったという神に一目お会いしたかったですね」


 そうゲルトルーデ宗教ギルド本部所属枢機卿級宗教ギルド職員が言うと、空間に妙な感覚が生じる。辺りを確認すると、私達4人以外の時間が静止していた。ということは、間違いなく来るな。


「来ましたよ」

「なんか前よりも軽くないですか!?」

「と言われましてもね。この方が緊張しないかと思いまして」

「確かに緊張しないとは思いますが……」

「あの、春人様。この方はいったい……」

「この方が、さっきまで話していた神様のエレナント様だ」

「神界統括をしています。最高神兼全能神のエレナントと申します。この度は、私のせいでこのような事態になってしまって申し訳ありません」

「いえいえ!これは私達の問題ですので、どうか頭をお上げください!」


 エレナント様が頭を下げてあげるが目線は、地面を見たままだった。


「ところで貴女は、いつ頃からこのランス教の教義に疑問を感じていたんだ?」

「私がランス教の教皇に昇格した時には、このまま教義を広めていくことに疑問を持ち始めていました」

「どの時点で教義が偽りのものだと知ったんだ?」

「枢機卿に昇格した時点で枢機卿の先輩に教えてもらいました。ランス教では、枢機卿以上の階級の人には、ランス教の真実を伝えることになっていたようです」

「そうだったのか。分かったとにかく早くここから出よう」

「そうした方が良いと思います。なんだかこの下にある結界がもう壊れそうですよ」

「やはり気付いていましたか」


 ゲルトルーデ教皇がそう、エレナント様に訳ありそうな表情をしながら言う。  


「この地下に封じられているものについてお話し致します」


 ゲルトルーデ教皇は、この教国の国家機密であろうことを話し始めた。


「この国は、宗教ギルドが組織されてから100年近く後になって1人の男性によって建国されました。その男性は、とある神器を持っており、その神器の力を使い、この国を宗教国家としました。その事実を伏せたまま、宗教ギルドに開宗申請をしました。それ以降、力をつけていったランス教は、最高位のSランク宗教となりました。そしてその開祖の持っていた神器は大切に保管されていましたが、いつしか邪悪な物へと変化していき、生物の形を取るようになり、この国で暴れる寸前のところで、当時の枢機卿を含む高位神官らによってそれはこの神殿の地下に封じられました」


 ゲルトルーデ教皇が話終わる。そしてその話が終わるのを待っていたかのようにして、地震が発生する。


「なんですかこの揺れ!?」

「地下に封じられているものが解放されそうになっているのだろう。このままここにいるのは危険だ。エレナント様、今すぐ時間停止を解除して下さい。この建物付近にいる者達を避難させなければ」

「そうですね」


 急いで地下牢から出て、神殿内および付近にいた者達を神殿付近から避難させる。そして、避難が終えたところで、神殿の一部を破壊して、封印されていたのが地上へと出て来た。


「あれが邪神……」

「邪神と言っても、春人さんが地球にいた頃に倒していた邪神とあまり変わりませんよ」

「ええ。ですが、この世界の魔法ではあの邪神には効果が薄いと思います」

「では、私の式神達を呼び出すか」

「そういえば春人さん。最近夜な夜な呪符を作ってますよね?それもなかなかに良いインクを使って」


 なんでも知ってるなこの(ひと)!?

 その夜な夜なコツコツと作っている呪符は現在、【ストレージ】に仕舞っている。まったく、まさかこんなところで使うことになろうとはな。

 まあ、どうにかなるか。


「とりあえず、ここは私に任せてもらっても良いですか?」

「むしろここは、春人さんでなければできないと思いますよ。では、私は上で見てますね」


 エレナント様は、そう言い神界へと戻って行った。


「2人を今から安全な場所に一旦避難させる。【ゲート】」


 被害が来ないであろう、神殿から離れた場所に【ゲート】を開く。まあ、高台だが大丈夫だろう。

 彼女達をそこに置いて、また戻る。

 スターズや国防省の者達は、銃を邪神に撃ちながら、少しでも近隣にいる人々を避難させようとしていたが、当然邪神にはまったく効果が無かった。

 無線を取り出し指示を出す。


『関係各員に命じる。総員直ちに聖都より撤退準備を開始。その際、民間人と一緒に避難せよ』

『スターズ了解』

『国防省了解』

『国際警察了解』

『宗教ギルド了解』


 そして、神殿付近に誰もいなくなったことを確認して、式神達を呼び出す。


《召命───白虎》

《召命───玄武》

《召命───青龍》

《召命───鵺》

《召命───蛟》


 それぞれ式神達は、人型の姿で顕現した。


「お久しぶりです。主(春人)様」

「早速だが、あの邪神を討伐する。その手伝いを頼む。その手伝いの内容は、私から気を逸らしてくれるだけでも良い。だが、できればそれ相応の攻撃は、与えてほしい。ただし、私の合図があるまでは攻撃をするな。では任せたぞ」

『御意』


 五体は、それぞれ動きだす。

 そして一緒に来ていた、コハクとビエラにも働いてもらう。


「コハクとビエラにも動いてもらうぞ。君達には、人間の姿になってもらいたい。その後、私の合図があり次第、攻撃が違うところへと飛んでいきそうになったら、その攻撃を防いでほしい」

「御意」

「かしこまりました」


 私は、近くにあった建物の屋根の上へと飛ぶ。そして【ストレージ】の中から呪符を不可視の状態にして、私の周りを取り囲むようにして、展開する。

 そして私は、式神達とコハク、ビエラに念話を送る。


《攻撃を開始せよ。ただし、攻撃は先程言った通りだ》

 

 さあ、邪神狩りを始めよう。

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