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異世界転生術師  作者: 青山春彦
第15章 ランス教国
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142話 いざ、ランス教国へ

 あの子達が処刑なんて納得できるものか。あの子達は、やっと自分の気持ちに素直になることができたというのに、それを邪魔するなんて許されるものか。


《改めて確認するが、2人の罪状は、背信ということでいいんだな?》

《間違いありません》

《聖女エイルに関しては、まだ処刑の話は無いようだが、エリザベート大司教は、処刑が言い渡されたようだが、その処刑の日時は分かるか?》

《5日後の昼に行われる予定です。どうやら、処刑に待ったをかける一派もいたため、即処刑とはなりませんでした》

《そうか。それは何よりだ》


 暗黒群(クラヤミ)から念話で報告を受ける。ランス教の内部にも似たような考えを持っている者達がいくらかいるようだな。そのおかげで即処刑とかじゃなくて安心したが、このままではどちらにしても処刑されてしまう。なんとかしなくてはな。


《君達は、そのまま監視を続けてくれ。あと、もしも2人が処刑を待ちきれない者によって暗殺されそうになった場合は、見つからないようにその暗殺者を始末しろ。私の方でも動く。頼んだぞ》

《は》


 念話を切り、これからどうするかを考える。こうなったら、宗教ギルド本部に連絡をして、法務局異端審問官を動かすしかないか。どちらにせよランス教には黒い噂が絶えないし、一度捜査する予定だったみたいだから、この機会に立ち入り捜査を行うか。

 そうとなれば、宗教ギルド本部に行って部隊の編成を行わなくてはな。

 【ゲート】を開き、宗教ギルド本部へと向かった。


「という訳で、総帥(グランドマスター)。ランス教国神殿への立ち入り捜査の許可をお願いできないでしょうか?」

「いきなりそう言われても、こちらとしても困るんですよ。まあ、今のランス教の状況は分かりました。すぐに令状を法務局異端審問部に手配させましょう。ですが、宗教ギルドから出せる人員は、聖騎士を本部とアルマー支部から合わせて200人、異端審問官を4人ですね。そして、今回の作戦指揮官は、貴方に任せます春人枢機卿級職員。それと、作戦集合地点は、アルマー城でも構いませんか?そこから、国際警察やスターズなどとの合同作戦でいきたいと私は考えています」

「そうなると、本部から城までは【ゲート】で迎えに行くとして、国際警察に関しては、うちとベルンガとヴァースとバルハランの支部から手配することにしましょう。そして、ランス教国までは、人数も多いので、いきなり【ゲート】で行っても大変なことになりそうですので、車両を使って行きましょう」

「では、お願いします。帰る頃には、本部からの部隊の準備は、整えておきますので」

「ええ、よろしくお願いしますね。エレントルディス宗教ギルド本部所属教皇級ギルド職員様」

「相変わらず、正式な階級名で呼ぶのですね。略して呼んでもいいのですよ?」

「混乱を避けるためですので、では私はそろそろここの仕事に行きますので、それでは失礼します」


 部屋から出て、仕事へと向かった。

 それから2時間後、部隊の編成が完了して、本部の入り口前には、その部隊が整列しており、聖騎士隊の前には、4人の異端審問官が並んでいる。

 因みに異端審問官と言っても、別にその宗教背信を問い詰めたりといった感じのことをするのではなく、宗教ギルドに所属する宗教が、宗教ギルドが定める決まりを違反していないかの監視や不正や何かしらの事件を起こしている可能性がある場合は、その捜査などを行ったりといった感じで、簡単に言えば、警察や憲兵みたいなイメージだ。

 【ゲート】で、城まで戻り、みんなに今回のことについて事情を説明することにした。


「急にどうしたんですか?春人さん」

「急に呼び出してすまんな。実は──」


 みんなに今、どんな状態なのかを説明する。


「そんなことになっていたのですか」

「ああ」

「それでこれから具体的には、どのようなことをなさるのですか?」

「ランス教国に直接行くつもりだよ。ただ、ランス教は現在、宗教ギルドにも目をつけられている。だから、その捜査と同時に処刑の取り止めをさせるつもりだ」


 信女の質問にそう答える。宗教ギルド本部の枢機卿であり、一国の王だ。ランス教にそういった発言権は、持っているし、そもそもランス教の教皇を務めているあの宗教ギルド本部の枢機卿が無視するとはとても思えんが。


「それでも処刑すると言ったらどうすんの?」

「牢を破ってでも彼女達を助け出す」

「普通に国際問題になりますよ?」


 確かにエリアの言うことは間違いではないが、今回は事情が少し異なる。普通ならば国際問題になるが、宗教ギルド本部の権限を使えば、ある程度は問題ないのだ。


「その点に関しては心配いらない。さっきの説明でも話たが、今回の作戦では宗教ギルドの案件ではあるが、理不尽な罪により処刑されようとしていることを考慮し、国際人道法に違反する可能性があるため、国際警察も出動させる流れとなった。この事案でランス教国へ向かうのは、宗教ギルド、国際警察、スターズ、国防省の四組織だ。そしてその全体指揮を行うのが私というわけだ」


 さっきスターズと言ったが、正確には暗黒群(クラヤミ)が担当することになっている。


「ところで春人様。ランス教国へは、いつ頃向かわれるんですか?」

「準備が出来次第出発する予定だが、出来れば明日中にはランス教国に行ければと思っている」


 トワの質問に端的に答える。


「それにしても、正義のためならばどんなことをしても許されるなんて、正義という言葉は、そう言った人達には便利な言葉ですわね」

「まったくだ。だが、もう少しすれば、奴等のそんな正義を気取った態度も終わりを迎えることになる」



 呆れたように呟くテレスに私はそう言い放つ。


「では、私達も準備をしてきますね」

「それなんだが、今回は君達を連れて行かないことにした」

「私達も一応スターズの幹部なんですよ?私達も参加する権利は、あると思うのですが?」

「それはそうだが、今回の事件は、なんだか嫌な予感がする。それに今回は、車での移動になるから疲れると思うぞ?」

「私達は、別に構いませんよ」

「いや、やっぱり今回ばかりは君達を連れて行けない」

「そうですか……分かりました。でしたら今回は諦めます」

「ああ、そうしてくれると助かる」


 今回は珍しく諦めが良いな。いつものエリア達ならば無理矢理にでもついて来ようとする筈なのに。

 明日の朝に出発式を行ってからランス教国へ向かう流れで行くか。車に関しては、城の空きスペースを利用すれば問題ない。今回の車両は、大型人員輸送車などを含めてすべての車両が緊急車両だ。ランス教国付近までは、サイレンを鳴らしながら行き、ランス教国の国境内に入ったら赤灯の点灯のみにするか。

 因みに私が乗って行く車は、トヨタ・センチュリー3代目セダンUWG60型だ。実はお気に入りの車だったりする。とはいえどちらにせよ王宮警察の私の担当もついて来るので、運転はその中から選ばれるだろうし、私が運転することは出来なそうだな。

 そうこうしている間に夜となり、夕食を食べてから執務室で、リリーや宗教ギルドの法務局異端審問官などの明日の作戦に参加するそれぞれの代表による作戦会議が深夜まで行われた。


 翌日、日が出始めた頃、城門にて出発式の準備をしていた。


「春人枢機卿。宗教ギルド本部の総帥(グランドマスター)よりお預かりしているものがありますので、お受け取り下さい」

「ご苦労」


 受け取った手紙を確認する。それは、手紙ではなく任命証だった。

 その任命証は、枢機卿級宗教ギルド職員から法王級宗教ギルド職員へと昇格させるというものだった。それに合わせて、法王級のローブもセットになっていた。因みに、現在法王の階級を持つのは、宗教ギルドでも私だけであり、その権力は、宗教ギルド本部所属教皇級ギルド職員と同等の権力らしい。

 そして、法王級のローブを羽織り、正面に出て出発式の言葉を言う。


「今作戦は、宗教ギルド、スターズ、国防省、国際警察の四組織による合同作戦である。今作戦の目的は、ランス教国の大神殿地下牢にて、囚われている大司教エリザベート・コレットおよび聖女エイル・アレーネの救出並びにランス教国の不正証拠の押収である。本来ならば、転移魔法を使って一気に大神殿まで行ければ良かったのだが、今回は人数の関係上の問題により転移魔法を使っての移動が不可能である。そのため、今作戦では、車を使った移動となる。それでは総員、乗車開始!」


 その場にいた全員がそれぞれの乗る車に乗車する。それぞれの乗車する車両は、前日にあらかじめ伝えている為、問題なくすんなりと、それぞれが乗車する車両に乗ることができる。

 因みにだが、この車列には、あの2人が病気による手術などの治療が必要だった時用に備えて、特殊医療救護車とそれに乗車する医師や看護師らも連れて行く。ただし彼らは、戦場となる可能性もある為、アルマー王国国立病院所属ではなく、アルマー王国国防省の衛生科所属の医師免許などの資格を持つ隊員である。


※特徴医療救護車とは、医師・看護師・薬剤師・診療放射線技師・業務調整員などで編成された赤十字病院の救護班が同乗し、被災地や災害現場などに直接出動することで早期に災害医療を開始し、重篤な傷病者の救命率を上げる為に建造された車両である。停車時には車体の左側が拡張し、車幅4.3m、床面積25㎡、4床の緊急手術が可能な救命処置室となる。車両後部のハッチから油圧式スロープを展開し、ストレッチャーに載せたままで傷病者を搬入できる。車体の発電機による電源の他、外部商用電源に接続しての運用も可能である。


 私も車へと乗り込み、無線で伝える。


『各員に通達。これより、ランス教国へと向かう。今回の目的は、2人の救出と証拠品の押収である。そのことを忘れず任務に当たれ。各車、赤灯点灯!サイレン鳴らせ!』


 一斉にサイレンが鳴り響く。先頭車両である私が乗る車が出発すると、それに合わせて、後ろに並んでいた車両も続々と出発する。

 なんだかこの作戦、嫌な予感がするな。エレナント様の直接の降臨が余計にそう思わせる。

 普通ならば、わざわざ直接降臨せずとも、分身を降臨させるという方法もあるのに、わざわざ、直接降臨をしてきた。これが私の思い過ごしであれば良いのだが……。

『良かった』、『続きが気になる』などと思っていただけたなら、評価やブックマークをしてくださると、とても嬉しいです。投稿日時は土・日の予定ですが、ズレて投稿する場合があります。どうぞこれからもよろしくお願いします。

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