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異世界転生術師  作者: 青山春彦
第15章 ランス教国
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141話 神との対面

 エレナント様のその神々しい姿を見た、エイルとエリザベートは、そのまま動けずにいた。まあ、動けないのは、神々しい姿だけというわけではないのだが……。


「エレナント様」

「? どうしましたか春人さん」

「その神気を抑えてもらえませんか?2人が動けなくなっているので」


 エレナント様が、私の後ろにいる2人のことを覗き込むようにして見る。


「ああ、そうだした!すみません。ここが地上だということをすっかり忘れていました。ここは神界と違って、意識をしなければ、神気が漏れ出てしまいますからね」


 エレナント様はそう言うと、エレナント様に(まと)っていた黄金色に輝く神気がスッと消えた。


「これで大丈夫な筈ですが、大丈夫ですか?」

「ええ。先程の神気が嘘のように消えていますね。これで、2人も問題なく動ける筈です。どうだ?動けそうか?2人とも」

「「は、はい……」」

「エレナント様。このタイミングで来たということは、やはり先程までのやり取りを見ていましたね?」

「もちろん観てましたよ。そしてここに来たのは、その子の疑問に答えたいと思って来ました」


 エレナント様は、そう言ってエリザベート達の方を見た。


「エレナント様。ここで話すのもなんですし、別室に移動しませんか?2人もそれで構わないだろうか?」

「ええ。構いません」

「私も構いません」

「それでは一旦、別室に行きましょうか」


 そうして、別室に移動した後に、私の分を除いた3人分のお茶とお茶菓子としてカステラを持って応接室に向かった。


「わざわざすみません陛下」

「気にする必要はない。あ、エレナント様って、紅茶でよろしかったですか?」

「ええ、大丈夫ですよ。わざわざ用意してもらってすみません」

「この空間内で動けるのは、我々だけですし、それに、客人に準備させるわけにはいきませんからね」


 そう言いながら、私はテーブルの上に、紅茶と皿に取り分けておいたカステラをそれぞれの前に並べる。


「それでエリザベート?エレナント様に聞きたいことがあったんじゃなかったのか?」

「そうでした!あの、太陽神ランス様という神様は、実在しているのでしょうか?」

「太陽神ランス……ですか?私もすべての神を把握しているわけではありませんが、正直言って、そんな名前の神は、中級神はおろか下級神でも聞いたことがありませんね」

「そうなんですね……だとしたら、我々の教義はいったいなんなのでしょうか……」


 エリザベートは、エレナント様に言われた言葉に落ち込む様子を見せる。

 その様子を見たエレナント様は、2人に問いかける。


「貴女達は、神がいなければ何もできないのですか?自分達の意思、判断、責任で動くことはできませか?私達のような実在する神や地上で創造された神を宗教という形で、心の拠り所にするのは構いません。ですが、その神に頼ってはなりません。こう言ってはなんですが、神は、神託などを授けることはあったとしても、直接的に干渉することはありません。貴女達を救うのはあくまでも貴女達自身なのです。貴女達が、この世界を動かしていって下さい。私達神々は、それを見守ることしか出来ませんので」


 エレナント様なんかも意外と干渉している気はしなくもないが、神界のルールの範囲内でだから大丈夫……なのか?

 まあ、2人がさっきまでのエレナント様の言葉に感激を受けて涙を流しているし、ツッコミを入れるのはやめておこう。


「とは言っても、実際のところは、春人さんをこの世界に送り込むまでは、普通に放置状態でしたし、春人さんを送り込まなければ、あと数万年は、覗きもしないで放置していたかもしれませんしね」


 さっきの言葉が台無しだわ!ほら、さっきまで泣いてた2人が「え?」っていう表情になってるぞ。まあ、他の管理する世界がたくさんあるというのはわかりますけれどもね。


「最高神として、それで良いんですか……?」

「少し酷い言い方になるかもしれませんが、例えこの世界が滅んだとしてもその世界の者達の責任です。なので、基本的に我々神界の神々は、何もしませんし、出来ません。ですが、神の干渉によって引き起こされた世界の滅亡なんかの問題については、もちろんこちら方で責任は取ります。例えば、邪神の降臨だったりですね」


 神界の決まりって、時々矛盾していることがあるんだよなあ。


「とは言え、基本的にこの世界のことは、この世界の者達にやってもらいたいですね。まあ、突如邪悪な魔王や邪神とかが現れて、地上を征服しようとしていたとしても、それらが、その世界で誕生した者であるのならば、私達は、手出しすることが出来ません。できるとしても、精々勇者にそれらを倒すことができる聖剣や神器を与えるくらいですね」


 神は神で、制限があって大変なんだな。


「我々神々は、苦難や試練をも乗り越え、自らの手で歩み出す君達を見守りましょう。この世界はもう、親に育てられる子どもの世界ではないのですから」


 すると、エイルが少し分からないといった風にエレナント様に質問をする。


「先程ランス様は、存在しないとおっしゃりましたが、そうなると、この世界に呼び出されたとされるランス様は、いったいなんなのでしょうか?」

「呼び出された、ですか……」


 エレナント様は、少し考え込む。


「神を呼び出せる人間は、地上世界にはほとんどいません。いるとしても、気まぐれでその呼び出しに応じる場合が多いですね。でも、春人さんは神格に近い(あやかし)を使役していませんでしたっけ?」

「一応使役していますし、なんなら神を呼び出すことも可能ですけど、呼び出すのって、色々と準備とかが必要で面倒なんですよね。それに呼び出せるとしても、その世界の神が限度であり、エレナント様のような本当の神界の神を呼び出すことは、私でも出来ませんよ」

「そうですか?昔の春人さんならともかく、今の春人さんならば、できると思いますよ。私は」

「そうなんですね。ですが、私はやるつもりはありませんよ。それよりも、質問に答えてあげてはどうですか?」

「そうでしたね。先程の質問の答えの続きですが、その呼び出されたというのは、断言は出来ませんが、恐らく精霊の類いだと思います。そもそも「〜神」といった感じの神は、基本的に下級神や中級神がほとんどを占めていますね。それと今思い出しましたが、ランスという神はいませんが、太陽神ならば、中級神の中にいましたね」


 へえ、やはりどの世界にも太陽神は存在しているんだな。


「私は聖女として、ランス教の教えを広めようとしてきました。ですが、太陽神ランス様は存在せず、更にその教義はランス教の人間によって作り出されたもの。私達が行ってきたことはすべて無意味だったのでしょうか?教えて下さい!」

「確かに無意味だったものもあったかもしれませんね」

「エレナント様!?」

「ですが、私はすべてが無意味だったとは思いませんよ。その教義によって救われた人だっていた筈です」

「勘違いしている人も多いが、宗教とは本来、聖職者が修行をしたり、人々を導くために存在するものであり、神に仕えるためだけに存在しているわけではない。だからこれからは、神のためにしてきたことを少しずつでも、人々のためにしていければ良いと思うぞ」

「春人さんの言う通りです。過去のことも大事ですが、本当に大事なのはこれからどう行動するかです。その行動をした結果、どのような未来が待っているのかは、私には分かりませんが、少なくとも行動をせず後悔するよりもずっと良いと私は思いますよ」


 確かに、何もしないで後悔するよりも、何かしてから後悔した方が良いもんな。まあ、そういう考えを全員が持っているわけではないが、少なくともこの2人は、行動してから後悔する方が良い派みたいだな。


「そろそろ地上にいるのもあれですので、神界に戻りますね」


 【クロノスロック】をこの場で解除したら、向こうにいないとなると少し面倒なことになりそうだから、戻ってから解除するか。


「お二人共、どんなことになっても強く生きなさい。それでは元気で」


 エレナント様はそう微笑みながら、光の粒子となって消えていった。

 謁見の間に戻り、【クロノスロック】を発動させる前の状態にしてから【クロノスロック】を解除する。


「……先程までが夢のようです」

「違う方とはいえ、本物に会えたのですね。なんだか現実感がないですね」

「先程までのは間違いなく現実だ。君達は神と会ったのだ。君達がそのことを信じないでどうするんだ?」

「そ、そうですよね」

「本日は、ありがとうございました。おかげで大切なものが見つかったような気がします」

「そうか。それは何よりだ」


 それから彼女達は、キャメロンのことなどを含めて、ひと通りの謝罪を述べ、謁見の間を去って、ランス教国へと帰国して行った。

 2人がランス教国へ帰国した後、なんだか嫌な予感がしたため、2人を『(しのび)』と『暗黒群(クラヤミの』の諜報員をそれぞれ4人ずつ尾行させた。

 数日後、ランス教国大司教エリザベート・コレットおよび聖女エイル・アレーネは、背信の罪により、その身分を剥奪の上、エリザベートに関しては、処刑が言い渡されたとの報告を尾行させていた諜報員から受けることとなった。

『良かった』、『続きが気になる』などと思っていただけたなら、評価やブックマークをしてくださると、とても嬉しいです。投稿日時は土・日の予定ですが、ズレて投稿する場合があります。どうぞこれからもよろしくお願いします。

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