14話 春人とアリスその3
みんなへの報告の日からしばらくの月日が経ち私達は、結婚式の準備を始めていた。
「春人さん」
「ん、何?」
「結婚式に招待する人は普通に招待状を手渡したほうが良いのでしょうか?」
「いや、招待状は招待したい人の名前を書いてまとめたあとに、人事構成課に出したあとに人事構成課がそれぞれ名前が書かれた人物に配送するようになっていたはずだけれども。もしかして、自分で手渡したかった?」
「いいえ。ただ確認がしたかっただけですから」
「そう?なら良いんだけどさ。もし手渡したかったならべつに直接渡しても良いと思うんだがな」
「はい。では、直接渡したい人には直接渡したいと思います」
「そうだな。そうした方がその相手ももしかしたら喜んでもらえるかもしれないしね」
アリスがそう、嬉しそうに笑った。
「それじゃあ、とりあえず今のところは結婚式は、半年後くらいで良いかな。それまでには式の準備なんかをしなくちゃね。まず初めに招待者のリストの作成に、その作成した招待状に一枚一枚、直筆でサインをしなくてはならないから招待状だけでも少し時間がかかるし、その他にもいろいろとあるけれどもまぁ大体はそんな感じかな」
「思っていたよりも結婚式の準備って大変なんですね。もっとこう担当者がやってくれるものかとばかり思っていましたね」
「なに、結婚式さえ終わってしまったらそんなに忙しくなることはないと思うよ」
「そうですね。結婚式が終わるまで、頑張らなくちゃならないですね」
すると突然スマホに、プルルル、プルルルと着信がなり速やかに部屋から出た。
「アリス、ごめん。少し出る」
「あ、はい。わかりました」
電話の登録名を確認すると、連絡して来たのは、やはりと言うか、神界の最高神であるエレナント様だった。
「はい、もしもし。いったいどうなさいましたか?」
「もしもし。ちゃんと電話が無事繋がったようで良かったです」
「それで、いったい何の用ですか?こう見えて私も結構忙しいのですが。用がないようなのであれば、このまま電話を切りますよ」
「あ、ちょ、ま、待って下さい!結婚式の準備で忙しいのは重々承知していますよ。ごほん。それで、今回貴方に連絡をしたのは、その貴方達の結婚式の件でお願いしたいことがあるのですが……」
「なんですか?」
「私達もその、貴方達の結婚式に参加させては頂けませんか?」
「いや、そんな急に言われても無理だと思います。それにスターズの者達しか参加はほぼ出来なかったはずですし、………ん?聞き間違いでしょか。先程私達と、と聞こえた気がしたのですが」
「いいえ、聞き間違いでも気のせいでもありませんよ。確かに私は先程私達としっかりと言いましたから」
「その私達って、どう言う意味ですか?まさかとは思いますが、他の神々もいらっしゃるとかではありませんよね」
「いやー、貴方を私以外の神々に見せたら思いのほかみんな貴方に興味を持ったようで」
「その他の神々っていったい……?」
「そうですね。例えば、術神や魔法神、剣神や恋愛神それにあまり地上には興味を示さない妖魔神や暗殺神なんかも珍しく貴方にかなり興味を示していましたね」
「なんか不穏な名前の神がいたような気がしたのですが」
「神と一括りに言ってもたくさんいますからね〜」
「それでさっき話した続きですが、今私が話した神達とともに貴方達の結婚式に参加したいと思っています。私達のお願いを聞いては頂けませんか?」
「わかりましたわかりました。とりあえず、一応聞いてはみますけれどもあまり期待はしないでくださいね」
「もちろん、そこら辺は分かっています。わかり次第私に連絡をお願いします」
そして、エレナント様との電話を切った。
その後、さっき私の家族(仮)が私達の結婚式に参加したいと連絡があったことを伝え、その事をアリスや他のシャドウナンバーズに相談すると意外にも簡単に了承してくれた。
それで良いのか。いくら私の家族(仮)と言えども普通そんな簡単に許可は出さないと思うんだがなぁ。
そう思って聞いてみると……。
「春人の家族ならばべつに問題はないと思うし、逆にどういう人なのかが一度あってみたいと思うのは当然じゃないか。だって、これだけ強い異世界人もなかなかいないしさらにその家族ならば尚更興味が湧いてくるってもんだろ」
「許可した本音がだだ漏れだぞ」
「べつに良いだろ」
「まぁ、許可をしてくれるんならべつに何も言うことはないんだけどさ」
エレナント様に許可が出たことを伝えなくちゃな。
「そういえばお前の家族って何人くらいで誰が来る予定なんだ?」
「そこら辺は詳しく聞いてないからまた後でで良いかな」
「べつに良いぞ。じゃあまた後でってことで」
エレナント様に許可が出たことを伝えるために電話をかけた。
「もしもし」
「はい、もしもし。それで許可はもらうことは、出来ましたか?」
「はい。ところでこちらにいらっしゃる神々はどの立場でいらっしゃるおつもりで?一応最初に言っておきますが、家族のみしか許可が出ませんでしたからそこら辺を考えて決めて下さい。出来れば今すぐにお願いします!」
「ああ、そこら辺はもう決めているので大丈夫ですよ。出席するのは、まず私が母親として、父親が万能神、祖父が次元神、祖母が時空神、長女が恋愛神、次女が剣神、三女が魔法神、長男に武神、次男に暗殺神、三男に妖魔神といった感じでそれぞれ地上の名前も決めていて、私は、望月円香で、万能神は、望月藤二郎で、次元神が望月大助で、時空神が望月時子で、恋愛神が望月歌恋で、剣神が望月双刃で、魔法神が望月珠那で、武神が望月武で、暗殺神が望月暗影で、妖魔神が望月紅魔といった感じに名前がもう決まっているんですよ」
「なんだか名前が適当な方もいたようですが良いんですかね。まぁ、本人が良いようならべつに良いんですけど。それじゃあ参加するのは祖父、祖母、父、母、姉二人、妹、兄三人で良いですね?それじゃあそういうふうに伝えておきます」
「それじゃあ、また、結婚式当日にお会いしましょう」
そして電話を切り今のことを伝えに戻った。
「えーと、さっきの家族の参加についてですが。参加するのは、祖父と祖母、母と父、姉二人に妹、そして兄三人の計10人です」
「そうか。にしてもこれまた随分な大所帯だな。まぁとりあえず参加する人数が早めにわかって良かったよ」
そして、あの日から半年近くが過ぎその間いろいろなことがあったが私達は無事に結婚式を迎えようとしていた。
私の控室つまり新郎控室である。今はアリスも一緒にいる。
そこにエレナント様はじめとした神々いや、今は人化しているから人間というか、聞いたところによると人化しているとはいえほぼ究極人間レベルなんだそうだ。
そして、その一向が入室して来た。
「春人さん。お久しぶりですね。電話では最近話したばかりですが直接会いのは神界以来ですね」
「確かに話したのは最近ですが、こうして直接会うのは久しぶりですね」
「あの、お話中すみません。春人さんこの人達は誰ですか?見たことのない人達なのですが……」
「そういえば、こうして会うのは初めてだったね。この人達は、私の家族で今話しているこの人は私の母だよ」
「春人さんのお母様でしたか!!これは大変失礼致しました。私は、春人さんの妻となるアリスロード・クリステル……いや、望月アリスロードと申します。ご挨拶が遅れてしまい申し訳ありません」
「アリスさんのことは知っていますよ。この子の結婚式の日程を聞いた時にアリスさんの名前も同時に聞きましたから」
「ああ。そうだったんですね」
「それに他世界にわざわざ挨拶だけで移動するのもかなり大変なことですし。……あ、でもこの子ならもしかしたら来れるかもしれないですね。私達も【ゲート】という移動空間魔法にさらに手を加えて次元を渡れるようにしましたから、多分、春人も出来ると思いますけど。出来ますか?」
いくらなんでもそれは流石に難しいんだが。
「出来ないことはないと思いますけど……」
ドアからコンコンコンとノックする音が聞こえた。
「お話中失礼します。式の準備が完了しましたので、そろそろ準備のほうをお願いします」
「はい、わかりました」
「それじゃあ私達は向こうの式場のほうで先に待っていますね」
エレナント様達は先に式場に向かった。
そして、式場の前に来ると、アリスは大きく息を吐いた。
どうやらかなり緊張しているみたいだな。そりゃあそうか。結婚式は人生で一度きりと言われるほどの人生の一大イベントの一つなんだ。緊張していない方がおかしいのか。
「私達もとうとうこの日を迎えられたのですね」
「ああ、そうだな。私達長命種とって半年なんてあっという間なはずなのに、この半年間はこの結婚式の日を楽しみにしていたからか、かなりの月日が経ったように感じてしまったよ」
「私も同じですよ、春人さん。私もこの日がとても待ち遠しかったんですからね」
「そうか。ならば、二人の人生の中でも最高の日にしなくてはな」
「それでは皆様お待ちかね新郎新婦の入場です」
式場に私達が入場すると同時に私がお願いしたこの曲は、プロイセン王国出身で、ドイツ・ロマン派の作曲家、指揮者、ピアニスト、オルガニストとして知られているフェリックス・メルデルスゾーンが1842年に作曲したこの行進曲は、私達の新たな人生の幕開けと、一緒に最後まで暮らしたいという意味で、この曲を選ばせてもらった。
そして会場の中は、盛大な拍手と大音量で流れるBGMの音でいっぱいだった。
ここだけを見るととてもこの世界の中でも最高峰の組織に所属する暗殺者や諜報員そして、さらに10人の神々がいるとはとても思えんな。
もしこの場が襲撃されたとしても速やかに解決できるんだろうなぁ。
そして、腕を組み合った私達は、神父の前にやって来た。
ていうか、スターズに神父がいたことに何気に今初めて知りつい、驚いてしまった。
「春人さん。あなたはアリスロードさんを妻とし、汝は、健やかなるときも、喜びのときも、悲しみのときも、富めるときも、貧しいときも、妻を愛し、敬い、褒め合い、共に助け合い、その命ある限り真心を尽くし愛することを誓いますか?」
「はい。誓います」
「アリスロードさん。あなたは春人さんを夫とし、汝は、健やかなるときも、喜びのときも、悲しみのときも、富めるときも、貧しいときも、夫を愛し、敬い、褒め合い、共に助け合い、その命ある限り真心を尽くし愛することを誓いますか?」
「はい。誓います」
「それでは。誓いのキスを」
その言葉とともにお互いの唇どうしを合わせあった。
そして、おめでとう〜!という言葉が式場中に響き渡った。
これでやっと、私達は名実ともに正式な夫婦になれたんだな。
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