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異世界転生術師  作者: 青山春彦
第14章 日常?3
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139話 新たなSランク冒険者

「勇者って、この間会った剣の勇者と同じような感じなの?」

「勇者という意味では同じだ。だが、双剣の勇者が成長すれば、近接戦闘の勇者の中では、かなり強い部類だ」

「それって、どれぐらい強いの?」

「はっきり言って、アンデッドドラゴンよりも強い。まったく……よりにもよって、最後にとんでもない置き土産を置いていきやがって……」

 

 あいつは、双剣の勇者を呼び出した時に気絶しているし、あいつは投獄するか。


「そいつを急いで拘束し、監獄島に投獄しろ」

「か、かしこまりました!」


 あいつを拘束しようとした、者達に双剣の勇者が襲い掛かろうとしていたので、私は咄嗟に、腰に下げていた刀で、その双剣の攻撃を防いだ。


「こいつの相手は、私がやる。だからお前達は、急いでそいつを連行しろ!」

『は!』


 なんとか攻撃を防ぐが、アンデッドとなっても、流石は勇者ってなだけあって、一撃がかなり重かった。

 あの子達に危害が及ぶ前に逃すか。


「みんな!今から城に【ゲート】を開く。そうしたら君達は、城に退避しなさい!」


 そう叫びながら、双剣の攻撃を防ぐ。その攻撃を防ぎながら、少し遠いところに【ゲート】の入り口を開く。


「今【ゲート】を開いた!さあ、今のうちに早く退避しなさい!」

「私達は、まだ戦えます!それに、春人様を置いて行くことなんて出来ません!!」

「これは、お願いではなく命令だ!いいから言うことを聞きなさい!」


 そうこうしている間にも、双剣の攻撃はより激しくなる。アンデッド化していることで、疲労感なんてまったく感じないのだろうな。

 一旦、私は双剣の勇者から離れて、双剣の勇者を拘束する。


「【ホーリーチェーン】」


 【ホーリーチェーン】が双剣の勇者を拘束する。これで、少しの時間稼ぎくらいにはなるはずだ。そして、私は彼女達のもとへと歩みよる。


「君達は、速やかにこの場から撤退しなさい」

「いやよ!」

「ハァー。分かった。では君達には、城に戻り、リリーに今、この場で起こっていることの状況報告を頼む。それと同時に、スターズ本部に連絡を取り、五星使徒(ペンタグラム)第1席サルガス特将と同じく五星使徒(ペンタクラム)第3席アルケナー特将を至急派遣するように私から要請があったと伝えれば良い。頼めるか」

「そういうことでしたら……分かりました。ですが、信女さんあたりは、この場に予備戦力として残しておくべきでは?」

「はっきり言って、まだ未完成の勇者と言っても、今の君達よりも遥かに強い」

「つまり、あたし達は足手纏いってこと?」


 あまり、この子達に言いたくはないが、ここは、はっきりと言った方が良いだろう。


「ああ。だから君達は、城で私の頼み事が済んだら、そのまま城で待機していてほしい」

「……分かりました。では、私達は行きますね」


 今の状態では、こう言うことが最善なんだ。すまないが、どうか分かってほしい。


「すまん」

「いえ、春人様が謝ることではありません。では、私達は、先に行きます」


 つい無意識で、謝罪の言葉が出てしまい、トワに気を使われた。彼女達は、おそらく私の思いに気づいていているのだろうな。

 そして彼女達は、【ゲート】を潜り抜けて、城へと戻ったのを確認して【ゲート】を閉じた。

 【ゲート】を閉じたのと同時に、双剣の勇者を拘束していた【ホーリーチェーン】が砕け散った。


「ギリギリだったな……あの子達もいなくなったし、少し本気で相手をしよう。【ホーリーブレイズ】」


 上空に、金色に輝く剣が無数に展開される。それらは、双剣の勇者へと一斉に向けられる。


「これから、お前の魂を解放してやろう」


 私は、双剣の勇者にそう言って、上空に展開させた無数の【ホーリーブレイズ】を放った。

 双剣の勇者は、その双剣で【ホーリーブレイズ】を凌ごうとするが、数が多過ぎて防ぎきることができず、四肢が【ホーリーブレイズ】によって切断されると、身体にも【ホーリーブレイズ】が突き刺さった。だが、元が勇者の身体なだけあって、ほぼ動かなくなってはいるが、微妙に身体が動いていた。


「今、楽にしてやる」


 【ストレージ】から一枚の呪符を取り出す。

 そして、その霊魂を解放するために術の詠唱を行う。


『मृत्युको दयनीय श्रापमा फसेका आत्माहरू। मेरो आवाज सुन्नुहोस् र स्वर्गमा फर्कनुहोस्। आत्मा प्रविधि: आत्मा पठाउने प्रविधि』


 術の詠唱を始めると、位相の中から数多の呪符が出て双剣の勇者を取り囲むようにして、展開する。

 これは、数ある術の中でも、秘術に分類されるひとつなので、アリス達を蘇らせようとした術と同様、特殊な詠唱が必要となる。

 双剣の勇者は、アンデッドと化していたその身体から霊魂が私の術により霊界へと向かって逝った。


“解放してくれてありがとう”


 霊界へと逝った双剣の勇者から、そんな声が、一瞬だけ聞こえてきたような気がした。

 その後、城に戻って呼んで来てもらったソーラル達が到着した。もう片付いたことを伝えると、少しだけ苦い顔をされた。仕方ないので、この森に残っているすべてのアンデッドの処理の手伝いを頼むと、嫌々と手伝ってくれた。


「なんで、アンデッドの残党処理をしなければならないんだよ」

「すまんな、ソーラル」

「そう思っているんだったら、あの場で俺達を帰してくれても良かったんじゃないか?それに仕事だってあったのに、お前が至急の派遣要請を俺達に出したからって聞いて急いで来てみれば、もう終わっていて、あまつさえ、俺達に残党処理を手伝わせるとは、随分だと思わないか?ん?」


 ソーラルの言葉には、少しだけ怒気が込められていた。


「だからすまんって言ってるだろ?後で礼はするからさ」

「なら、今度お前ほどの料理の腕前が絶品だと言う、お前の婚約者のテレスフィーナって子の料理を食べさせてくれたらそれで構わん」

「そんなことで良いのか?」

「もちろんだ。今度、お前の城に行くから、そん時にでも頼む」

「分かった。テレスに伝えておこう」


 ソーラルって、こんなに食いしん坊キャラだったか?まあ、礼がこの程度で良いのであれば楽で良いがな。あ、テレスには少しだけ申し訳ないとは思ってるぞ。

 すると、この話を聞いていた2人がこっちに駆け寄ってきた。


「あ、ズルい。何よそれ!春人。私もテレスの料理食べさせて頂戴!」

「是非、私もお願いしたい」


 イレルリカとカーラルまでもが、そんなことを言い出した。

 流石に3人がバラバラで来られても困るし、テレスには悪いが、3人一緒に来てもらうことにしよう。


「すまんが、3人バラバラで来られても、こっちの都合もあるから、3人一緒に来てもらえると助かる」

「分かったわ」

「私もそれで構わない」


(テレス……私も手伝うから許してくれよ)


 私は、心の中でそうテレスに向かって謝った。


「そろそろ、アンデッドも片付いたし、後は私がやるから帰っていいよ。今回は、手伝ってくれてありがとな」

「ところで、双剣の勇者の力はどれほどのものだったんだ?」


 ソーラルが尋ねる。


「未完成の状態でアンデッド化してしまっていたから、本来の勇者としての実力は、発揮できてはいなかったが、それでもあの子達を護りながら戦うには、難しいレベルで厳しいかったというのは確かだぞ」

「お前がそれほど苦戦するのは珍しいな」

「相手は、未完成の勇者とは言っても、その力はドラゴンよりも遥かに強い。正直言って、もしあれが完成している勇者だったとしたなら、1人で倒すことは、ほぼ難しかっただろう」

「そんなになのか?」

「それだけ勇者という存在は、無視することはできないし、強力な存在だということだ」

「なるほどな。なら、今度からは、他の勇者の動向の監視強化させる」

「監視強化だけでなく、今回のように勇者が寝込みとかによって殺される可能性もあるため、その敵の排除もその監視役に命じておいてくれ」


 3人は、コクリと頷く。特にイレルリカは、情報局局長でもある。こういったのは、イレルリカの管轄になる。


「頼んだぞ」


 私は、イレルリカに向かってそう言った。


「分かってるわ」


 イレルリカがそう返事をすると、3人共本部に戻って行った。

 残っていた事後処理部隊も仕事が終わって、必要なものなどを回収して帰った。

 

「さて、アクシデントはありましたが、試験の結果を教えてはもらえませんか?」


 シャーリーが木の上から降りて来る。


「試験の結果は、合格とします。これよりAランク冒険者、望月春人様をSランク冒険者に正式認定致します。よって、ギルドカードを更新したいので、ギルドカードをお貸しください」


 シャーリーにギルドカードを渡すと、シャーリーは、ポケットから判子のような物をギルドカードに押し当てると、Sランク冒険者の証である虹色のギルドカードへと変色した。

 これで、私もSランク冒険者となったわけだな。

 ギルドカードを財布(さいふ)のカードケースにギルドカードに仕舞い、【テレポート】で城へと帰った。

 後に知ったことだが、今回、死霊術師(ネクロマンサー)のケイオスによって、寝込みを襲われてアンデッドとされてしまった双剣の勇者の名前がマーティンということ。そして、ケイオス・クセルという亜神級の死霊術師(ネクロマンサー)がただの我欲で動いていた人物ではなく、フェアラートの下部組織である『プロディティオー』の幹部構成員だったということを知ったのだった。

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