124話 4人の臣下
「なあ、マリン。この4人はいったい……?」
「この子達は、この国に来る際に私に着いて来たのよ。なんでも、貴方に仕えたいそうよ」
4人とも獣人か。ラビットマンの少女に、人狼族の少年、狐人族の少女か。そして、その4人を見ると、見知った顔が2人いた。
「貴女は確かバルハラン王国第二騎士団の騎士のシオンさん、でしたよね?」
「はい。お久しぶりです。春人様」
シオンさんは覚えていたことに対してにっこりと笑い挨拶をする。グリウス騎士団長の部下であり、幼馴染だと聞いた。それにグリウス騎士団長からも期待されていたのになぜ?
「バルハランの騎士団は辞めて来ました。どうかこの国に仕えさせて下さい」
「なんで辞めて来たんですか?グリウス騎士団長にも気に入られていたうえに幼馴染だったはず。出世チャンスだってあっただろうに、なんでまた……」
「春人様が黒竜の若竜を倒したときに、本当に凄い方だと思ったのです。このままバルハランの騎士として過ごすよりも、春人様の下で働きたいと思いました。そして、そんな凄い方が建国したと聞き、居ても立っても居られず、マリン様にお願いした次第です」
「それにしてもなんで君までいるんだ?それに、君はまだ学生だったはずだろ?」
そこに居たのは、バルハラン王国外務省所属の外交官であり、マリィの妹であるルリィであった。また彼女は私に仕えたいとか言って来た。だが、ルリィはまだ学生の身分なんだから雇うわけにはいかん。
「あら、知らないの春人?ルリィはね、姉のマリィ同様、飛び級制度によってバルハランで必要な教育課程をすべて修了しているのよ。だからルリィはもう学園を卒業しているから学生ではないわ」
「本当なのか?ルリィ」
「はい。もっとも、教育過程を修了したのは、今からおよそ1ヶ月前ですけれども」
おいおい。つまりルリィは今、新卒状態ってことかよ。なら、大丈夫なのか?
「分かった。ルリィを私の臣下とする。また、君をアルマー王国外務省バルハラン対応局長とする。また、君にはマリンがこの国にいる間の補佐を命じる」
「分かりました」
「悪いが君達とは面識がないから自己紹介をしてもらえるか?」
狐人族の少女が小さく頭を下げる。
「私はリリスと言います。兄がお世話になりました」
「兄?」
「リリスの兄はグリウス騎士団長なんです」
誰のことかと思っていると、シオンさんがそう説明してくれた。なるほど、グリウス騎士団長から私のことを聞いて来たということか。それなら納得だな。
1人納得していると、残っていた人狼族の少年が頭を下げる。真面目そうというか、マニュアル重視しそうなタイプの顔をしている少年だ。背も高くおそらく170〜180センチはあるんじゃないか。そして、銀髪の上にある犬耳とフサフサの尻尾が揺れる。
「元バルハラン王国外務省外交官のウィルズ・アーベントです。よろしくお願いします。陛下」
そう言って敬礼をしながら直立不動の体勢となる。
アーベントってことはルリィの家と関係があるのだろうか?
「アーベントということは、ルリィ達の家と何か関係があるのか?」
「マリィやルリィは私の母方の従姉になります」
つまり、全員私と何かしらの繋がりがあるということか。
「シオン、リリス、ウィルズの3人はそれなりに腕が立つからこの国の騎士としてはピッタリだと思うのだけど、どうかしら?」
マリンが3人を騎士に推薦する。特に問題なさそうだし、この3人には、騎士になってもらうか。
「まだ、正式な騎士としての仕事はないから、どうしても雑務がメインになってしまうけど、それでも良ければアルマー王国騎士団の初期団員として採用させてもらう」
「「「よろしくお願いします!」」」
返事は良いな。まずは、この子達の住む場所だな。シオン、リリス、ウィルズの3人は、城にある騎士団本部に住まわせるとして、ルリィの住む場所は、とりあえず城でいいだろ。どうせ、部屋はまだ余ってるんだしな。
「とりあえず、これから君達の職場となる騎士団本部に案内しよう」
城はすぐそこなので、歩いて城に向かい、城の敷地内にある騎士団本部まで向かう。
「ここが、これから君達の職場となる騎士団本部だ」
「凄いですね」
「ああ、いくつか注意点を伝えるのを忘れてた。建物内を見るのは自由だが、少し聞いてくれ」
「なんでしょうか?」
「このアルマー王国には、治安維持組織として、騎士団の他にも警察という組織がある」
警察省庁舎を空中に投影する。みんな驚いているが、説明が面倒だから、私の魔法だと無理矢理納得させた。
「これが警察省庁舎で主な内容は、国民の生命・身体・財産の保護、犯罪の捜査、被疑者の逮捕、公安の維持など、社会秩序を保つため、国家の統治権に基づいて国民に命令・強制する、行政上の作用。また、その仕事を担当する組織のことだ。騎士団とほぼ同じような仕事内容だが、警察省所属の全警察官などは拳銃の仕事中の常時携帯許可および非常時の発泡許可も与えているから騎士団よりも権力は少し上になるが、騎士団本部の騎士は最低でも、警察階級での警部の権限を与えている。また、騎士団本部の副騎士団長は警視正、騎士団長は警視長の権限を与える予定だから、万が一のときには警察官を指示できる立場になる。まあ、その騎士団長と副騎士団長なんかは、騎士団としてもう少し組織化の目処がたったら君達の中から決めようと思う。あと、警察には緊急車両という車と呼ばれるものを走る場合もあるから覚えておいてくれ」
「「「はい」」」
「それと、この国では軍もあるが、その軍人は全員国防省所属となり、有事の際には国防省が指揮を取る場合がある。そして国防省には、この拳銃よりも威力や連射性がある銃を使用する。今のところ君達には、銃は渡さないつもりでいるが、武具防具はそこらの国よりも良いものだからな」
既に警察省にも国防省にも私が【創造】で創造した人間が、配備されている。それに国防省に関しては、この王都の外にも空軍基地を設けて、戦闘機などがいつでも出撃できるようになっている。また、その空軍基地は、私の魔法で普通の人間は近づかないし、その存在を確認することもできない基地だ。
「君達の部屋はとりあえず5階にある好きな寝室を選ぶといい」
「「「ありがとうございます」」」
3人は自分寝室選びに向かった。
ルリィはどうしようかな。とりあえず外務省の庁舎に行くか。
「ルリィ、これから君の職場となる外務省庁舎に向かう。ここからだと少し距離があるから【ゲート】で行くぞ」
「はい」
「【ゲート】」
【ゲート】を開き、外務省庁舎前に繋ぐ。
「ここが外務省庁舎だ」
「凄いですね……こんな建物見たことないです」
そりゃあないだろうな。外務省の外観や内装も日本の外務省と同じように造ったんだから。
そしてエレベーターに乗り、ルリィの執務室へと向かう。執務室に着き、両開きの扉を開ける。
「これから、ここが君の仕事場……執務室だ。何か分からないことがあったら、今聞くか、そこにある電話と呼ばれる通信用魔道具で私に連絡してくれ。それぞれに繋がる番号はここに置いておくからな」
「分かりました。早速なんですが、これはなんでしょうか?」
そう言って、ルリィがパソコンを指差す。
「これは、パソコンと言って、まずこの電源と呼ばれるのを押す。そして、画面が表示されたら、例えばこれを押すと、文章作成用のアイコンが開かさり、更に下にあるキーボードという文字を打つためのを決まった順番で文字を入力すると文字がこのように変換することができる。また、このパソコンは、文字作成はもちろん、表計算・図形作成、そこにあるプリンターに完成した書類などのプリントアウト。それにプログラミングなどが出来るんだ」
「こんな小さい物でそれだけのことが出来るんですね」
「そうだ。このパソコンの説明書をあげるからそれを見てやると良いよ」
「はい、ありがとうございます」
こうして、新たに4人臣下が入ったが、この始まりの臣下4人はそれぞれ歴史に名が残るなることになるのだが、この時の誰もそのことを知ることはなかった。
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