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異世界転生術師  作者: 青山春彦
第13章 建国
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122話 身分証とバルハランからの大使

 あれから4日後、とうとう城が完成し、私達は今その城の前に来ている。


「本当にこれだけの城を4日で完成させるとは……『万能工房』の技術力は凄いな。これって中もちゃんと完成しているんだよな?」

「もちろんです。皆さんのご希望に沿って造ってあります。では早速中にお入り下さい」


 大きな堀にかけられた、大きな跳ね橋を渡り城壁内へと入る。この堀の水は特殊で、一見すれば綺麗に澄み渡っているように見えるが、水自体は強酸性の水を張っているため、敵が落ちると骨すら溶かしてしまうだろう。だが、万が一敵でない者が誤って落ちてしまった時のために、その時には魔法でただの水になるようにし、溺れないようにすぐに警備隊などが駆けつけられるような仕組みとなっている。ちなみにこの堀の中の水は一応綺麗に見せる必要があるので浄化システムがあり、大体のものは溶けてしまうがレイスなどの溶けないものが水に触れた際に【ピュリフィケーション】という浄化魔法が発動するようになっている。水害対策もしっかりと行っており、川上と川下に水門があり、その水門を通ると堀の中の水はただの水になるようになっていて、大雨などで水害が起こりそうな時には、流れを別な方向に切り替えることもできるようになっている。

 城門を潜り城壁内に入ると、側塔や城壁塔からなる防衛施設と門番の詰所や離宮、そして大きな庭が広がっていた。裏手は騎士団などの訓練場などに続いている。

 さらにその奥にある立派な大理石でできた広い階段を上がると、水が出るところの上に彫刻がある噴水が中央に設置された庭園が見えてくる。

 その庭園を横切り、さらに進むとやっと城内へと入る扉が現れた。両開きの大きな扉を開けて中へ入ると、とてつもなく高い吹き抜けの天井と豪華なシャンデリア、そして2階へと続く大きな階段が目の前に伸びていた。階段を登ると左右に別れている。まあ、エレベーターで行くこともできるが、せっかくならば階段で登るのもありだと思うし、あの子達の行ける階を制限すれば使わせることも検討しても良いだろうな。


「素敵なお城ですね」


 エリアがそのような感想を言う。

 2階の奥まった部屋の両開きの大きな扉を開けると、そこは謁見の間だった。謁見の間は、とてつもなく広く天井の高く、天井には大きな天窓が取り付けられ、輝く陽光が数段高くなった(きら)びやかな玉座に降り注ぐ。


「なんだか、ベルンガやヴァースの謁見の間にある玉座よりも豪華な気がするのは気のせいか?」


 私が今まで見てきた国の中でもトップクラスで豪華な玉座だぞ。なんで私があんな玉座に座らなくてはならんのだ。そもそも私が頼んだ玉座はもっと落ち着きのある感じだったんだが?なんでこんなことになってるのやら……。


「来訪した他国の使者などを迎える場所なのですから、これくらいしとかないと舐められますわ。春人様が設置しようとしていた玉座を見させていただきましたが、あれでは春人様の素晴らしさを見せつけることが出来ませんわ」


 テレスが言うこともまあまあ理解することは出来るんだが……こんなにも煌びやかなのは正直慣れん。普段は暗い感じの服を着たりしているせいなのだろうか?

 みんなに試しに玉座に座ってみてくれと言われたのでとりあえず座ってみたが、座り心地は悪くはないが、なんだかものすごく居心地が悪い。みんなは「悪くないわね」だったり「これはなかなか」や「凛々しい姿の春人様も良いです」とか、好き勝手に言っていたが、あの子達が満足しているのならば良いか。だが、まだ他国の使者なんかは来ないだろうからしばらくは、この玉座は使わなくてもすみそうだな。

 それからは各々、自分の部屋や、気になる施設などを自由に見て回った。私の方でも城の敷地に設置した施設などを見て回った。

 城の中をある程度見終わると、他の部屋に比べて広くしているバルコニーのある大広間で、みんなでソファーに座ってくつろぐ。


「それにしても広かったですね。これは掃除が大変そうでね……」

「それに関しては心配いらない。城壁内全体にかけた【プロテクション】で簡単には汚れは傷はつかないし、仮に汚れたりしても【ピュリフィケーション】で汚れなんかはすぐになくなるからな」


 ふとバルコニーの方を見ると、エリアとテレスがバルコニーで、まだ草木しかない外の景色を眺めながらはしゃいでいた。やっぱり若い子は元気がある方が良いな。

 そんな感じでくつろいでいると、ラナさんやシリカさん。リース、マリア達メイドが紅茶とお茶菓子を持ってきた。その後ろにはラクアスさんも控えている。


「まさか旦那様にお仕えして少しの間で、再び王宮勤めになるとは思ってもみませんでした」

「エリアに頼まれる形で国王に仕えるのを辞めて我が家に仕えてもらってるのにすみません」

「いえいえ。私は城に勤めていた頃の血が滾るようで嬉しいのです。きっともっと忙しくなるでしょうからな。ところで旦那様……ずっとお聞きしたかったのですが、こちらの方はいったいどなたでしょうか?」


 そう言ってディアボロスの方を見る。まあ、知らない間に増えていたら聞きたくもなるわな。せっかくだし紹介するか。


「こいつは、ディアボロス。昔、我が家で仕えていた執事でな。かなり優秀でなんでもほぼ完璧にこなしてくれる。執事長はラクアスさんに任せますが、副執事長兼国王直属執事をこのディアボロスに任せたいと思いますが、構いませんよね」

「私は別に構いません。これからよろしくお願いします。ディアボロス」

「ええ、よろしくお願いしますラクアス殿」

「ディアボロス。詳しい業務内容はラクアスさんに聞くといい。一応ディアボロスにも権限を与えておくから必要ならばその権限を行使することを許可する。それとラクアスさん。後で全員を執務室へ集めてもらえますか」

「分かりました」


 そう言ってラクアスさんとディアボロスは部屋から出て行った。


「別にこの部屋で済ませても良かったんじゃない?」

「この部屋で渡すよりも執務室で渡した方が良いと思ってね。もちろん君達の分も用意あるから」

「渡すものっていったいなんなのですか?」

「身分証だよ。スターズの身分証あるだろ?あれと同じ感じだが、階級のところには、王妃候補と書いてある。その他は自分の与えられた役割がそのままの身分として書かれてあるな。身分証の顔写真に関してはスターズのを使わせてもらったよ。まあ、服装は制服ではなく普段君達が身に付けている服装だけどね」


 そろそろ呼び終わった頃だろうし、私達も執務室に向かうとするか。

 執務室に全員が揃ったところで、【ストレージ】からそれぞれの身分証を取り出して机に並べる。


「ではこれより、身分証の贈呈式を行う。身分証を手にしたこの時から貴殿らは、アルマー王国の国民となる。身分証には身分によって色が違い、それによっては権限も違うが、宮廷勤めは基本的に上位権限を持つ黒色となっている。言うまでもないだろうが、無くしたりしないように。それではまず初めにラクアス・セバスチャン。前へ」


 ラクアスさんに机の前に来てもらう。


「ラクアス・セバスチャン。其方に宮廷執事長の身分を与える」

「承知しました」

「次、ディアボロス前へ」


 ディアボロスは家名を持たないからついでにここで与えようかな。


「ディアボロス。其方に宮廷副執事長兼国王直属執事の身分を与える。また、ディアボロスにディーオの姓を与える。その名に相応しい働きを期待する」

「ありがとうございます」


 そう言った瞬間、ディアボロスは黒い繭のようなものに覆われた。


「な、何ですかこれ!?」

「大丈夫だ。こいつは今、種族進化をしようとしているんだ。だから心配はいらない」

「進化……ですか?」

「ああ。ディアボロスは人間ではなく、悪魔(デーモン)だ。種族的に言えば、帝国反乱事件の際に呼び出された、あのアークデーモンよりも上位種であり、悪魔の種族の中でもかなり高位種になる。それにディアボロスは『原初の七大悪魔』と呼ばれる悪魔の一柱であり、七大悪魔での呼び名はシュバルツという」

「『原初の七大悪魔』!?なんでそんな存在があるんですか!?しかもシュバルツといえば、『原初の七大悪魔』の中でも最強クラスじゃないですか!」

「『原初の七大悪魔』って何ですの?」

「『原初の七大悪魔』とは、世界に初めて誕生した七柱の悪魔の総称であり、ディアボロスは闇系統を司っている悪魔だ」

「そんなにすごい方なんですね」

「ああ。実力もかなりのもので、奴に勝てる者は世界でも限られるだろうな。それに進化の際に私からかなりの魔力を持っていったからかなり強くなるだろうな。お!どうやら進化が終わったみたいだな」


《ディアボロス・ディーオの進化が完了しました。ディアボロス・ディーオは、デビルロードからデビルエンペラーへ進化しました》


「ディアボロスの進化も終わっことだし、再開しよう。ラナ・ドーマ。前へ」


 前に来る。


「ラナ・ドーマ。其方に宮廷メイド長の身分を与える」

「メイド長の任、務めさせていただきます」

「次、シリカ・アルカルト。前へ」


 前に来る。


「シリカ・アルカルト。其方に宮廷副メイド長の身分を与える」

「拝命しました」

「次、ランリース。前へ」


 前に来る。


「ランリース。其方に宮廷メイドの身分を与える」

「ありがとうございます」


 使用人達の身分証の贈呈が終わって、正式な贈呈式ではないので使用人達には出て行ってもらった。


「さて、君達の身分証はここにあるものだ。エリアからトワ、アイリス、トリス、信女、テレスの順に渡していくから受け取ってくれ」

「分かりました」


 それぞれに身分証を渡す。


「君達の身分証に書かれている身分は全員王妃候補にしてある。これは現在この国で2番目の地位になっているから他の者達にも言ったがくれぐれも無くさないように。まあ、他人に悪用されたとしても、すべての身分証にギルドカードの様に他人が持てば色が変色して、身分証の機能がすべて停止ささるから奪われたとしても意味はあまりないんだがな」


 身分証も渡したことだし、城周辺も建物を建てようかな。やっぱり建てるとしたら各省庁が良いよな。建物の外観なんかは日本とほぼ同じ感じに建てた方が国としての技術力の高さなんかを見せることが出来るだろう。まあ、建てるといっても、この世界の人間が設計図を見たとしても建てることなんてほぼ不可能だろうから【創造】で建てるけども。

 話は変わるが、テレスの護衛騎士だったあの2人はしばらくは帝国で色々な手続きをした後にこの国への派遣という形でテレスの護衛に就き、結婚した後は、そのままこの国に所属することになった。

 省庁のことを考えていると、ラナさんが中に入って来た。


「旦那様、失礼します。城で必要な買い出しに出かけたいのですが、ここからだとかなり遠く、旦那様の【ゲート】で王都までお願いできないでしょうか?」

「ああ。確かにここには今のところ城以外に建物がないからな。買い物も一苦労だろう。そのために一応「転移の間」という部屋を設置していて、そこから自分が行きたい場所を頭の中に思い浮かべれば、その場所の近くに設定されている場所に繋がるように設定してある。今は王都の屋敷だけだけどね。だけどそのうち段々と増やして行く予定だからかなり便利になるはずだよ。それにその「転移の間」に設置してある『ゲート』は型枠に収まるようになっていて、より(ゲート)ぽくなってるから運んだりする時には気をつけるようにな。一応身分証を持っている者でなければ使えないように設定してあるし、その人が行った場所の履歴が残るようにしてあるから無闇矢鱈(むやみやたら)に使わないように他の人にも言っておいてください」

「かしこまりました」


 ラナさんが部屋を退室した後、私達もさっきまで大広間へと戻って再度のんびりとすることにした。


「ねえ、春人。ここの警備ってどうなってるの?」

「ベルンガの屋敷よりも高威力の武器で警備させる予定だし、番犬がわりにビエラの眷属であるケルベロスを2、3匹庭に配置させておく予定だよ」

「番犬にしてはかなり強いですわね……」


 テレスが苦笑いしながらそう言う。その後も設置する予定の各省庁の話をしていると、ラクアスさんが中へと入って来た。


「失礼します。旦那様にお客様がお見えですがいかがなさいますか?」

「今日は誰とも会う予定はなかったはずだが?誰かは聞いていますか?」

「はい。マリン・ラージャントと名乗っておりました」

「ここに通してもらって構いません」

「かしこまりました」


 ラクアスさんがマリンを呼びに行って少しすると、ラクアスさんとマリンが部屋の中に入って来た。ラクアスさんは部屋から退室し、マリンは空いていた場所に座った。


「私が少し見てない間に国の王様になってるとか、どうなってるのよまったく……驚きよりも呆れるわ」


 ソファー座って紅茶を飲みながらマリンが私にそう言い放つ。


「しかもヴァース帝国のお姫様までもらうとか左うちわでいいわねぇ」


 マリンがどこか嫌味っぽく言う。


「あ、それと私、バルハラン王国の大使としてこの国にくることになったから、住むところよろしく」

「おい待て!?マリンは、マリィさんの代わりにベルンガへの大使になったはずだろ?何で急にこの国に来ることになったんだよ!?」

「だってこっちの国の方が面白そうだし、貴方がいるからね。ベルンガの方は私の部下に丸投げして来たわ」

「その部下が可哀想だな……まあ、住むところはとりあえずはこの城の空いてる部屋で良いか?」

「ええ、構わないわ」

「なら、そこにしばらく泊まってくれ。とりあえずこれからよろしくな。マリン」

「ええ、こちらこそよろしくね。春人」

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