116話 勇者の秘密
本部に着いた私達は、彼女達を筆記試験の試験会場へと向かわせ、軽く説明を受けて試験が開始された。
この試験は、両面印刷のプリントが1枚だ。100点満点のうちで何点かによって最終的に階級が決定する。
それから1時間半後……。
「どうやら終わったようだな」
試験を終えて、結果が伝えられた。結果を言うと、私の予想を超えて全員佐官になった。エリアは中佐、それ以外は少佐という結果だった。いくら私が【メモリーエンチャント】で記憶をコピーして渡したとはいえども、まさかここまでとは思っていなかった。
身分証を受け取ってから元帥室へと行き、部屋の扉をノックする。
「入るが良いか?」
「どうぞ」
部屋の中に入り、ソファーに座り、白夜は反対側の方に座った。
「まずは、スターズに所属していただきありがとうございます」
「それで?あの内容は強制だったと思うんだが?」
「それはえーとですね……その……」
私はそんな白夜の反応にはお構いなしに懐から銃を白夜の方へと向ける。
「父上!?」
「春人様(殿)!?」
「春人 (さん)!?」
他のみんなも予想外の反応に驚いていた。
「はっきりと答えろ。だが、その答えによってはお前でも引き金を引く。だが大方、この子達をスターズに所属させたのはスターズの戦力強化といったところだろうがな」
「はい。父上のおっしゃる通りです。3年程前のあの戦いで、多くの者達が亡くなりました。その中にはスターズ最大戦力ともなる五星使徒とシャドウ評議会からもそれぞれ1人の死者が出ました」
「それと今回のに何の関係がある?今のところ関連性は全く見えないのだが?」
「ここからが重要なのですが、その前にこれから話す内容は、佐官以上でなければ知ることが許されない情報です。佐官未満の方は申し訳ありませんが、この部屋からのご退出をお願いします」
だが、誰も動かない。そりゃあそうだ。なんせここには佐官以上の者しかいないのだからな。
「全員筆記試験で佐官以上の階級になった。だから話しても問題はない」
「なるほど。何かしましたか?父上」
「規定上では問題ない方法で受からせただけだ」
「記憶領域にでも干渉しましたか?まあ、父上のことですからそんなことだとは思いましたよ。佐官になれるほどの情報などをその人達が持っているとは思えませんからね。さて、話を戻しますが、つい2週間程前に鑑定用アーティファクトで、剣、術、砲撃の3人の勇者が確認されました」
「ッ!? 勇者だと!?」
「勇者って、あの御伽話とかに出てくるあの?」
御伽話……か。民間人だったこの子らがそう言うのも不思議ではない。
そう思いながら、白夜に向けていた銃を仕舞う。
「まあ、あながち間違いとは言えないが、御伽話なんかとは違う点が結構多い。なんなら言ってしまうと、世界中に出回っている御伽話はスターズで情報操作をして流した偽情報がほとんどなんだよ」
「なんでそんなことを?」
「それに関しては今説明するよ。まずは、勇者について説明しよう。勇者とは、さっき言った剣、術、砲撃の他にも存在する。例えば、弓、槍、盾、杖、聖だったり他に珍しいものだと時や本または古といった名称の勇者達が存在するが、今確認されているのはさっきも言った3人だけだな。そして、勇者とは元々この世界を守るという使命を持ってこの世界に誕生する。だが、この誕生する勇者の中には使命を持って産まれることなく、自由に過ごして村や町などを破壊したりする場合がある。そんな勇者がいると知られれば、使命持ちの勇者の活動にも影響が出る可能性がある。だからこそ、スターズの方で情報操作を行い勇者の実話も混ぜながら御伽話などという形で歴史に存在を残したのさ」
「つまり勇者も普通の人と同じく善悪があるということですよね」
「まあ、そんな感じだな。ところで白夜。その3人の今代はどんな感じだ?」
「監視の話では、誰も問題は起こしてはいませんが、一応砲撃には厳重監視を行なっております」
「砲撃は他の勇者に比べて使命無しが誕生しやすい。警戒するに越したことはない」
「それで、実は剣と砲撃が会っていたという報告がありました。砲撃についての情報はこちらではあまり掴めていません。ですが、剣ならば我々に協力してくれるやもしれません」
「そうだな。一度剣に会ってみるか」
「剣の勇者は信頼できるのですか?」
剣は、使命持ちしか誕生したいないのだが、そんなことをトワ達が知るわけないか。
「ああ、剣は信頼できる勇者の1人だ。さっき使命無しもいると言ったが、必ず使命持ちとして誕生する勇者が存在する。それは剣、盾、聖、時だな」
「その方達は信頼しても良いということですね」
「あくまでも今まで一度も敵にならなかっただけだから完璧に信用しろというわけではなくあくまでも参考程度だがな」
とにかく、剣に会ってみて砲撃のことを聞いてみるか。
「あの春人さん。もし、剣の勇者に会いに行くのであれば私達も連れて行ってはもらえませんか?」
「よく行くと分かったな」
「春人さんが何をしようとしていることぐらい分かりますよ」
「今回は戦闘はあまりないだろうが、もしも剣が敵になった時を想定して、今回連れて行くのは、この中で近接戦闘に長けているトワと信女の2人を連れて行く。アイリスも近接戦には長けているといえるが、悪いが今回は、このままここにいてくれ」
「仕方ないわね。分かったわよ。でも今度はあたしも連れて行きなさいよね」
「分かってる。白夜、剣がどの辺にいるか分かるか?」
「少しお待ちください」
白夜が机から地図を持ってきて広げてある森を指差す。
「最後に報告があったのは大体この辺りですが、剣はここにある小さな木造の家に1人で住んでいるそうです」
「そういえば剣の年齢は?」
「17です」
「若いな。そんな子どもがこんなところに1人で住んでいるとはな」
「本当に行くのですか?」
「もちろんだ。砲撃に関しては少しでも情報が欲しいからな。それにもし戦うことになったら一般戦闘員では勇者の足止めも不可能だろう。だからここは私が直接行って情報を入手した方がいいだろ?」
「確かにその通りかも知れませんが……」
「場所も分かったし、とりあえず剣に会いに行く。トワ、信女。行くぞ。【ゲート】」
【ゲート】を潜り抜けて、剣の勇者が住む森の中の家の近くへと向かった。
そして残された彼女達は。
「申し訳ありません。父上がご迷惑おかけして」
「いえいえ。白夜さんが謝ることではありませんよ」
「そういえば、春奈が皆さんに会いたがっていましたが、今は任務中ですので、いずれ機会がありましたらご挨拶をさせてください」
「春奈って?」
「あれ?父上から聞いていませんか?」
「いえ、一切聞いていませんね」
「そうですか。春奈は私の1つ下の妹で長女です。一応、五星使徒の末席になります」
「凄いじゃないですか!?」
「予想通りって言うかなんというか、春人の子どもって感じよね」
「アハハ……」
白夜がアイリスの言葉に思わず苦笑いをする。
このような会話が行われているとは知らない春人達は、剣の勇者の住む小屋に向かうのであった。
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