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異世界転生術師  作者: 青山春彦
第12章 帝国反乱
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109話 皇帝の手術

 屋敷に戻ると、庭には、テレスフィーナ皇女の他にフラーシュ、メリッサ。そして意識のないままの皇帝がいた。

 皇帝に関しては、一刻を争う状態だった。


「誰かいるか!」

「どうかされましたか?…‥って、どういう状況ですかこれ!?」

「説明は後にしてください!それよりも今すぐにストレッチャーを持って来てください!あと、救護用の医務室の隣の手術室の準備もお願いします!」

「わ、分かりました!」


 そう言ってラナに走って行ってもらう。


「皇帝の病は、私が魔眼で診た結果、ウイルス性拡張型心筋症かくちょうがたしんきんしょうだということが分かった」


※ウイルス性拡張型心筋症とは、心臓の筋肉を収縮する機能が低下して、左心室が拡張する心筋症の1つである。これが悪化すると心不全や不整脈を起こす。


「ういるす?」

「しんきん?」


 そっか、ウイルスとかをこの世界で知る者はほとんどいなかったな。


「とにかく今は時間がないから病気の詳細の治療法についての説明から入らせてもらう。助かるためには、心臓をまるごと取り替える心臓移植しか方法はありません」

「そんな馬鹿げた治療法があってたまるものですか!!そもそも医者でもない貴方がそのようなこと……」


 【ストレージ】から医師免許を取り出す。


「私は宮廷級の医師免許を取得しています。そして、この手の手術は何度かこなしてその全てを成功しています。ですから、私に執刀(しっとう)を任せてはもらえないだろうか」


※執刀とは、外科手術・解剖でメスを持つこと。特に、患者に手術を施すこと指す。


「……分かりましたわ」

「姫様!?」

「確かに医師免許を持ち、実際にこの手の手術経験があるから「心臓移植しか方法はない」とおっしゃったのではありませんか?」

「その通りです。では、手術を認めてもらえるということでよろしいですね?」

「はい。ですが、私達もその手術の様子を見せてもらえませんか?」

「……今回の手術はウイルス性拡張型心筋症だけではなく、斬り込まれた際にウイルスや細菌に対する抵抗力を失った身体は感染症に感染している可能性があるため、私の指示に従うようにして下さい。あと、これに関しては大丈夫だとは思いますが、私の手術の邪魔はしないでください」

「分かっていますわ」

「プロキオンとベテルギウスは先に手術室に行って、手術準備をしていてくれ。殺菌は忘れるなよ」

「了解」


 すると、ラナがストレッチャーを持って来てくれたのと同時に、プロキオン達の手術室の準備が完了したと念話での連絡があった。


「ラナさん。足を持ってください」

「分かりました」

「それじゃいきますよ。1、2の3」


 皇帝をストレッチャーに乗せて急いで手術室まで運ぶ。


「では、消毒作業に入ります。まずは手洗いをしてもらいます。これは、手術室にウイルスや細菌を持ち込ませないためです。その後、この手術用ガウンと呼ばれる物を着てもらいます。これは感染症の予防と血液や体液が衣服に付着しないための物ですが、貴女方にも念のためこれを着てもらいます。では、あそこにあるクリーンゲートにて全身消毒を行なってもらいます。あと、その双剣は衛生管理上の問題として置いて行って思います」

「分かりました」


 手洗いを済ませた後にクリーンゲートで全身消毒を行い、完全除菌を行い、執刀医として手術室の中へと入る。


※執刀医とは、実際に手術を行う医師のことである。


 手術室の中には、機械戦闘着を脱ぎ、手術用ガウンを着て待機していたプロキオンとベテルギウスの他に、医務室に元からいた私の式である淡雪(あわゆき)という名持ちである鬼の妖もいた。その淡雪には、基本的に角を髪に隠して人間に見えるようにしてもらっている。

 手術着に着替える。そして、手術用ガウンを着る。この際、後ろ側にある手術用ガウンの(ひも)をベテルギウスに結んでもらう。もちろんマスクも忘れずに装着する。

 あの3人には邪魔にならない手術室の(はし)の方に椅子を用意して座ってもらう。元々この手術室にある椅子なので、衛生面でも問題はない。

 麻酔器で、皇帝に全身麻酔をかけて、効いたのを確認する。その後、人工呼吸器を皇帝の口に装着して、人工呼吸を行う。ちなみに麻酔は、麻酔器アネスピレーターを使っている。また、患者監視装置 麻酔記録装置付で、皇帝の心拍数や麻酔管理だったりを行っている。


「これより、ウイルス性拡張型心筋症の心臓移植手術を開始する。──メス」

 

 皇帝の心臓の上を切り、鉗子(かんし)で止血手術を開始する。

 本来心臓移植手術は、4〜5時間は見込まなくてはならない。だが、今の皇帝の体力を考えると、到底そんな長期間手術に耐えられるとは思えない。人工心肺装置で人工心肺を行いながらそう考える。

 一旦心臓を体外に摘出した。思っていた以上に酷い状態だった。これでよく今まで持ったものだな。

 その心臓から正常な細胞を選んで医療用ピンセットで採取する。


《細胞の情報から擬似心臓を【創造】を使って創造を頼む》

《これより解析を開始。……完了しました。【創造】による擬似心臓の創造が可能となりました。これより擬似心臓の創造を開始します》


 【創造】で出来た心臓は、手のひらに創造された。その出来栄えには流石の私も驚いた。なんせ、本物の心臓とまったく変わらないのだからな。

 時間がないので、急いで移植の方を行う。

 移植が完了次第に【アルティメットヒール】で身体を再生させ、心臓の鼓動を再開させる。

 これで無事に終わったかと思ったが、突如として装置から警告音が鳴る。


「心拍数39、血圧57。体内血液の不足を確認!」

「急いで血液型を調べろ!」

「血液型Aと判明!」

「A型の血液を医務室奥の血液用冷蔵庫から急いで持って来い!」

「はい!」


 プロキオンが急いで輸血用の血液を取りに行く。


「心拍下がってます。心停止!」

「DC用意!」


※DCとは、不整脈の治療に使われる医療機器。心房細動・心室細動・心室頻拍などの致死的な不整脈に対して使用される。心臓に直流電流刺激を与えて電気ショックによって心臓の異常興奮を抑制するためのものである。今回の場合は、脈が遅くなる徐脈である。


「準備完了」

「150にセット」

「離れて!」


 作動させるが心拍は戻らない。


「270にセット」

 

 作動させるがまだ戻らない。


「300にセット」


 心電図を見るがまだ戻らない。これでも駄目なのか?


「360にセット」


 これで効かなければ諦めれるしかない。そう半諦めていると、心拍が再開した。


「心拍再開!」

「よし!」


 すると、輸血用の血液を取りに行っていたプロキオンが戻ってきた。


「では、急いで輸血を行うぞ」

「了解」


 その後、輸血を終えて全ての手術がトラブルがありながらもなんとか終了した。


「これにて、ウイルス性拡張型心筋症の心臓移植手術を終了する」


 なんとか、無事に終わったな。


「春人様!お父様はどうなったのでしょうか?」

「手術はなんとか成功た。この後は、皇帝を隣にあるベッドへと寝かせておけば、そのうちに麻酔の効果が切れて目が覚めるはずだよ。だけど、1日経っても目が覚めなければ危険な状態となり、もっと設備が整った、スターズ病院に搬送することになるので、そのことだけは知っておいて下さい」

「分かりましたわ」

「皇帝を医務室の方へ運んでくれ」

「承知しました」


 淡雪達が皇帝を医務室へと運んで行った。


「君達も皇帝と一緒に医務室で待っていてもらえるか。私は少し用事があって少しの間は君達といることが出来ないが、使用人を部屋に待機させておくから何かあったらその人に言うといい良い」

「ありがとうございます」

「では、行きましょう」


 医務室へは、プロキオンと一緒に行ってもらい、その間につけるメイドを探す。すると、ばったり会ったシリカに事情を説明して、ついてもらうように頼んだ。

 そして私は、みんなにも今回の件は話すことにした。


「まさか帝都でそのような事件が起こっているなんて……」

「しかも、スターズが表立って動くんでしょ?本当にそんなことして良いの?」

「あ、それは私も疑問に思ってました」

「今回の件は、スターズでもかなりの重大事件と受け止めているそして」


 話している途中でスマホが鳴る。ソーラルからだった。


「私だ。一体どうしたんだ?」

『帝国の反乱の件に関しては知っているな?』

「そりゃあ、その皇帝と第四皇女、そしてその護衛の騎士を2人、屋敷で保護しているからな」

『えっマジかよ!?お前の屋敷に皇帝と第四皇女がいるのかよ。だが、安全が確保されているんなら安心か。では話を戻すが、先程元帥閣下との話し合いの結果、今回の反乱事件は大規模対策事案と認定。それに伴い、スターズの総力を持ってしてでも早期対処が求められるものとして、近隣各国の支部からも車両に乗っての公開援護並び、本部からも航空機での出動が命令された』

「そんなことをしたら民間人に大々的にスターズの戦力を公表するのと同じ……まさかそれが狙いなのか?」

『そうだ。スターズの戦力を大々的に公表することにより、どの国よりも戦力を持ち、勝てることが出来ないと思わせる。そうすることによって、捜査の時にも協力が得やすくなるかもという考えだ』


 確かにそれならこそこそと捜査するよりも情報が得やすくなる。だが、スターズの名を語って悪さをする可能性もあるから身分証の存在も公表した方が良さそうだな。


「なるほど。とうとうこの時が来てしまったのだな」

『ああ。そうだな』

「さっきの話だが、お前も来るのか?」

『基本的に五星使徒(ペンタグラム)の全員が行く予定だ。それと、今回の件の指揮は、お前に全権を一任する予定だ。それじゃあ頼んだぞ』


 そう言うと、ソーラルは通話を切ってしまった。


「それでどんな会話だったのですか?」

「本事案においての指揮権を私に全権一任するというのと、スターズの方では本気でやるという話だよ」

「スターズが本気でやったら大変なことになりませんか?」

「そのことについては心配いらないよ。スターズはもう全世界にスターズの存在などを公表することをこの事件をきっかけに決定した。だからエリア達が心配するようなことは起こらないはずだ。さあ、分かったら君達は寝なさい。明日は君達にもやってほしいことがあるからね」

「わ、分かりました」


 そう言って他のみんなは各自の寝室へと行った。


「コハク。少し良いか?」

「なんでしょう。主」

「リザードマンのような二足歩行で、武器を使って戦えて、ある程度知能のある魔物がコハクの眷属にいたりしないか?」

「申し訳ありません主。私の眷属に主の要望を叶える者はおりません。ただ、ひとつだけ心当たりがあります」

「それはなんだ?」

「私と同格の存在である神獣『玄武』です。あやつらを呼び出せば、主の願いが叶うやも知れません」

「ならば、その召喚方法を教えてくれ」

「分かりました」


 玄武か。確かにリザードマンは爬虫類系の魔物だから、私の要望通りではあるな。さて、この世界の玄武はどんな見た目をしているのやら。

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