107話 皇女救出
「し、神級魔術師ですか!?」
「『魔剣の魔術師』……聞いたことがあります。謎に包まれた神級魔術師の中でも最も新しい魔術師であり、そして最も謎に包まれた存在であり、神級魔術師の中でも最強と謳われていると。もし本当にその『魔剣の魔術師』殿であるのならば、どうか姫様をお助けください!!」
「私が『魔剣の魔術師』であることは本当だ。そしてまず助かる助けないの前にお前達は騎士団所属の騎士で良いのか?」
「まだ名乗っていませんでしたね。私は、第四皇女専属護衛騎士、第ニ階級騎士のフラーシュ・オルス・キャロルです」
「私は、第四皇女専属護衛騎士兼諜報騎士、第ニ階級騎士のメリッサ・ナロア・メルカートです」
茶髪の方がフラーシュで、ダークブロンドの方がメリッサか。
……キャロル家とメルカート家といえば確か、帝国十公の家系だったよな。なんで公爵家の娘が騎士をしているんだ?まあ、そんなことはどうでも良いか。
「皇女を助けてほしいと行っていたが、お前達以外にも当然、その皇女には護衛がついてるんだろ?」
「いいえ。私達が反乱兵を相手にしている間に逃げられるように私達2人で足止めをしていました……」
じゃあ、ひょっとして今は皇女1人なのか!?
「今の話だと、皇女は今1人ということだよな」
「はい。そうです」
「なんでどちらか1人が皇女の側に残るという選択肢を取らなかったんだ!急いで見つけ出さないとやばいぞ!」
『キャ───ッ!!』
その瞬間、悲鳴が聞こえてきた。もしかして今の悲鳴は!
《シエラ!大至急、悲鳴の主を探し出せ!》
《サーチ完了。案内を開始します》
「お前達!時間がないからとりあえず今は黙って私について来い!」
「はい!」
シエラに場所を脳内マップに表示して、銃をホルスターから抜いて、急いでそこへ向かう。
その部屋の扉の前についた直後に、私は勢いよく扉を蹴破り、分厚い扉が吹っ飛ぶと、そこにはオリーブグレーの髪色をした少女が幹部軍人の軍服を着た軍人相手に抵抗していたが、そのほとんどが意味をなさず殺されそうになっていた。
流石にまずいと思い、銃弾をそいつの心臓と脳に撃ち込み即死させる。もちろん使った銃弾は貫通して、その子諸共殺さないようにするため、いつも使っている徹甲弾ではなく通常弾を使った。それでも、貫通する危険性があったため、風魔法を応用して、反乱兵の身体の中で無理矢理止めるように操作した。
もしも、こいつが即死出来てなかったら間違いなく、地獄のような痛みを味わいながら死んでいただろう。なんせ、内臓なんて破裂しているだろうからな。それと、なるべく彼女にトラウマを与えないように出血量も【コンプレッション】という上級風魔法の応用で無理矢理血液を圧縮して抑え込んだ。
出来るだけ彼女を怯えさせないように優しく声をかける。
「大丈夫かい?」
「………」
少女は、身体を震えさせていた。自分が殺されそうになったことに対する恐怖だろうか。
よく見るとドレスのいたるところが切り裂かれ、腕にも切り傷ができていた。早く治さないと傷痕が残ってしまうな。
とりあえず【ヒール】で傷を回復させてから【リフレッシュ】で、精神状態を安定させる。
「これで、傷も治ったし精神状態も安定したはずだ」
「あの……貴方は……?」
少し怯えながらもそう問いかけてくる。
「私は望月春人。神級魔術師が1人である『魔剣の魔術師』だ。一応言っておくが、反乱軍の奴等とは関係ないからな」
一応、念押しをする。またフラーシュのように攻撃されてもかなわんからな。
すると、彼女は私のことをじ──っと見つめてくる。
視線が気になるな。でも、あえてその視線を気にしないことにした。
「君の名前を教えてくれるかな?まあ、この帝城でその服装と考えたら大体の予想はつくが……」
「私は、ヴァース帝国第四皇女、テレスフィーナ・クライン・ヴァースと申しますわ。先程は、助けてくださりありがとうございました。神級魔術師様」
ヴァース帝国での神級魔術師の扱いはベルンガ王国と変わりはなく、皇帝と同等かそれ以上の権限を持った存在であり、今回のような非常事態の際に全体指揮を取ることが可能なのである。
「やはり君が第四皇女だったのか。私がここに来たのは、主に君達皇族の救出をするためだ。それと、今回のこの反乱事件を引き起こした首謀者を拘束することもまた、私の仕事に含まれている」
すると、先程蹴破ったドアの方からやっと私に追いついた2人が駆け込んで来た。
「「姫様!」」
「フラーシュ!メリッサ!無事で良かったですわ」
「姫様がご無事なようで安心しました」
「ご無事で本当に何よりです」
ドタバタとこっちに走って向かって来る者がいるな。早くここから移動しないとバレてしまう。
「感動中に申し訳ないんだが、こっちに向かって反乱兵が数人向かって来てるから、早く移動しないと、余計な戦闘になってしまうから、とにかくここを離れよう」
「そうですね」
とりあえず部屋から出る。
「春人様。これからどうするおつもりですか?」
「まず、皇帝のいる部屋へと向かう。だが、テレスフィーナ皇女達は先に私の転移魔法で安全な場所へと避難してもらう」
「春人様!お願いです。私も一緒に連れて行ってくださいな」
「これから向かう場所はかなり危険な場所だ。私がいる限り死なせることはなくとも、テレスフィーナ皇女には精神的にかなりキツイと思う。それにテレスフィーナ皇女の父親である皇帝ももしかしたら……」
「分かったいますわ。ですが、この目で見たいのです。どうかお願いします」
そう言って彼女は頭を下げる。あ~!もう~!ここまで言われたら連れて行くしかないだろうが!
「分かった。ただし、私の言うことをしっかりと聞くことが条件だけど守れるね?」
「もちろんです!」
影に潜んでいる、プロキオンとベテルギウスに念話を使って、影から出て来るように伝える。
突然私の影から現れた2人にテレスフィーナ皇女達は驚いていたが、今はそんなことに構っている時間がないので2人の説明を省く。
そして2人に指示を出す。
「プロキオンとベテルギウスにはテレスフィーナ皇女らの護衛を頼みたい。あと、今回は通常弾ではなく徹甲弾でいく。では行くぞ」
「「は」」
「少し走るからしっかりとついて来て」
「分かりました」
廊下を走りながら皇帝の寝室へと向かう。
その道中で分かったことだが、皇帝は現在、病にかかっているらしく、ここしばらくは寝たきりの状態が続いているとのことだ。
そうして廊下を走っていると……。
「シリウス様」
「分かっている」
ベテルギウスが後ろにいた3人に手で止まるように合図する。
「止まって」
「どうかしたのですか?」
「ほら、これを見てみて」
「これは……糸……ですか?」
「これは、ワイヤー式の罠で、主にダンジョンなどで使用される物だが、反乱軍はこれを部屋に近づかさせないようにするために使ったんだろうな。このタイプは、解除は比較的簡単だが、今回は時間がないから消してしまうぞ。【デリート】」
「存在を消したんですか?」
「簡単に言えばその通りだね。とにかく今は急ごう」
「はい」
そして、皇帝の寝室があるエリアまで来るが、そこには当然反乱軍の警備兵がいた。
「【ストレージ】」
【ストレージ】の中からマークII手榴弾を4つ取り出す。
「今からこれを投げるが、その際の爆発音によって鼓膜が破裂することはこの距離からだとないだろうが、一応耳を塞いでおいて」
耳を塞いだのを確認して、安全ピンを抜いて見つからないように壁の死角の所から1つずつ投げる。
全ての手榴弾の爆発が終わり、これで全員死んだはずだが、一応生き残りがいないかどうかの確認をする。どうやら全員、今ので死んだようだな。
入り口の扉に近づくと、そこには何種類かの結界が施されていた。そのうちの1つは厄介なものだった。
「シリウス様。この結界、少し妙です。このタイプの結界は普通の人間に張ることは不可能だと思われます」
「そうだろうな。ほとんどの結界は、反乱軍が張ったものだろうが、幾つかは反乱軍どころか、人間が張ったものでないものも混じっている。これはおそらくデーモンの結界だろうな」
「デーモンですか!?」
「結界だけの話だが、敵側にデーモンがいる可能性か高い。それも恐らく結界の構成式から考えて子爵から伯爵級のアークデーモンだろうな」
「そんな高位の悪魔が何故!?」
「落ち着け。これはあくまで可能性が高いという話だ。とりあえず今はこれを解除するから、少し私から離れていた方が良い」
「分かりました」
結界を【デリート】で無理矢理解除する。
「これで解除出来たな。それじゃあ、行くぞ」
銃をホルスターから取り出してそう言う。
扉を開け、中へと入った。
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