106話 帝城侵入
【ゲート】で帝都にやって来た私は、そこに広がっていた光景に思わず目を見開いた。
そこには、逃げ惑う人々に燃え盛る建物。支部の者達が反乱軍に向かって撃っている光景。最早ただの戦場にしか私には見えなかった。
このままただ見ているわけにもいかないので、とりあえず帝城の方へ向かった。もしかしたら避難できていない可能性もあるしな。
そう思い、近くにある建物の屋根へと飛び、屋根伝いに帝城の方へと、下の様子を見ながら向かう。
帝城へと向かう最中に反乱軍の軍人2人に襲われていた騎士を見つけ、その騎士を助かるために一旦屋根から降りてその軍人2人の脳を撃ち抜いて射殺して助け出す。
「大丈夫か?」
「助けていただきありがとうございました」
この状態では、途中で襲われたら今度こそ殺されてしまうと思い、安全な所まで一緒に行くことにした。
「これから安全な場所まで避難する。私が護るので安心してほしい。早速、そこへ向かおうと思うが立てそうか?」
「なんと、か」
そう言った直後、その騎士は体勢を崩す。
「立てなさそうだな。とりあえず、一旦の応急処置として回復魔法をかけるが良いか?」
「……」
もう、喋る気力さえもないか。
「無言は肯定とみなす。【ハイヒール】」
身体の傷は回復させたが、かなりの量の血液が抜けているようで、意識を完全に失っていた。
「仕方ない。背負って行くか」
その騎士を背負って、戦闘がない場所まで移動して、とりあえず目に見えた民家の中にその騎士を置いて、帝城へと急いで向かった。
帝城に着くと、帝城の入り口から少し離れたところに支部の臨時作戦本部が設置されており、帝城の入り口に向けて盾とライフルを構え、緊張状態が続いていた。
「現在の状況は?」
「シリウス様!?」
その場にいた全員が跪こうとしていたので、それを止めて話を続ける。
「現在。一部の帝国軍部が反乱を起こし、帝城内にて、反乱軍の幹部級の者達が立てこもっており、帝城内の様子は掴めていません。それと、中にいる皇族の生死も不明です」
「そうか。ならお前達はこのまま戦況を維持しろ」
『は!』
そう指示を出した直後に他の部隊の者が来てとんでもない報告をする。
「緊急報告!反乱軍の者達が数名、対処に当たっていた者達から銃を奪い発砲!!現在その対処に他の部隊がおわれ若干押されています」
「なんで反乱軍相手に銃を奪われているんだ!?」
「路地裏から襲撃されたところで奪われたそうです」
「なるほど。すまないが、そっちの件はお前達の方でなんとかなるか?」
「おそらく」
「なら、そっちの件はお前達で対処せよ。私は帝城へ入り中の様子を確認しつつ、皇族の生死の確認。生きていると分かり次第、私が安全な場所まで避難する。この場の戦況維持は、私や他の五星使徒の指示が出るまでは維持せよ!」
「承知しました。その命、このヴァース支部副支部長マルゼンスキー少将にお任せ下さい」
「任せたぞ」
帝城の中へと入ると、奥に進むにつれ、至るところに反乱軍に対抗したと思われる騎士達の死体やその反乱軍の死体が至るところに転がっていた。
十字路になっていた廊下の右側から2人の女騎士が走って来て、私の近くまで来ると、そのまま気絶してしまった。
彼女達の肩甲骨ら辺をよく見ると、矢が刺さっていた。
彼女達を追いかけて来たと思われる反乱軍人達が来たので、とりあえず【ダークブレイズ】で追ってきた奴らを皆殺しにして、彼女達の治療を急いで行う。
矢を矢尻が取れて体内に残らないように慎重に抜き取った後、大量出血が起こらないように回復魔法で傷口を塞いで回復させる。さらにこの矢には、神経毒が塗られていたので、【ポイズンヒール】もかけて、毒状態も回復させた。
そして、彼女達の意識が覚めると、突然横に置いていた剣を持って斬りかかってきた。
その剣を私は捌いて攻撃を受け流して、【ダークブレイズ】を彼女達に向ける。
「落ち着け。私はお前達の敵ではない」
「ならばなんだと言うんですか!」
「敵である可能性がある以上、攻撃を仕掛けるのは当然のことです」
「お前達を治療したのは、私だ」
その言葉を理解した2人は剣を鞘に納めて私に謝罪する。
「勘違いとはいえ、命の恩人に対して大変申し訳ありませんでした!」
「分かれば良い」
「それで、貴方は一体何故、帝城にいるのですか?」
「そうだったな。まず自己紹介をしよう。私は神級魔術師別称『魔剣の魔術師』の望月春人だ」
これが、帝城であの子を助かる少し前の話である。
『良かった』、『続きが気になる』などと思っていただけたなら、評価やブックマークをしてくださると、とても嬉しいです。投稿日時は土・日の午前1時ですが、ズレて投稿する場合があります。どうぞこれからもよろしくお願いします。