105話 反乱の報告
「ここが『焼却場』ですか?」
「そうだな。そして、あの向こう側にあるのが『万能工房』だ。ここは2つが既に合わさっている状態なんだ」
「でもなんで2つが既に合わさっている状態なのかしら?」
「そういえば聞いてなかったな」
「それなら俺から説明させてもらうよ、マスター。今からざっと500年ぐらい前にこの焼却場の飛行装置が故障してな。その際に運良く近くを通りかかった万能工房の管理者であるマリアに事情を説明して許可をもらい連結して現在に至るってわけさ」
「それほどまでにその飛行装置というのは、万能工房の技術を使ってもそんなにも直せない物なのか?」
「いいや。飛行装置自体はもうとっくにマリアが直してくれたよ。だけど、このまま一緒にいた方がお互いに利益がある事と、マスターとなる人物が来た時には、同時に入手出来た方が良いとマリアと話して思ってな。だからずっと連結したままというわけだ」
「なるほど。確かに1つ探す手間は省けたが……まあ、お前達が相互利益があるのなら私は良いけどさ」
それはそうと、これからこの2人をどうするべきか……。
「そういえばさ、ファイアナ。お前の略称をまだ聞いてなかったがなんて言うんだ?」
「ファーナって呼べ」
「ファーナか、分かった。これからはそう呼ばせてもらうとするよ」
「そういえば春人様。この2人はどうするのですか?」
そういえばまだ考えてなかったな。
「すまん。まだそれは考えてなかった。でも私的には、マリアを屋敷の技術整備士として雇用することにして、ファーナには悪いが、決まるまではこのままここにいてもらっても良いか?」
「俺としては別に構わないよ。それに俺に出来る仕事なんて少ないだろうしな」
「そんなことはないと思うんだがなぁ」
屋敷での役割はファーナには難しいだろうが、ベリルベルでの役割だけでも私は充分だと思っている。
「まあいいや。とにかく、これからよろしくな。2人とも」
2人が頷く。
「とにかく、『万能工房』と『焼却場』と『武具保管庫』を連結させて、屋敷の方まで向かってくれ」
「了解だぜ」
フェルがそう答えて武具保管庫の管理室へと向かい、他の2人もそれぞれの管理室(焼却場の場合は制御室)へと向かった。
3つを連結を終わらせて屋敷へと向かう。
屋敷へと戻った私達は、それぞれ自由に過ごすことになった。
そして私はまず、ラクアス達使用人にマリアの紹介をすることにした。
「初めまして。私はマリアースと申します。どうぞお気軽にマリアとお呼び下さい」
「突然ですまないが、彼女をこの屋敷の技術整備士として雇用することになった。彼女は一応メイドの仕事も出来るから、もし人手が足りない時には彼女をメイドとして使っても構わない」
「かしこまりました旦那様。それでは、屋敷の案内をラナにお願いします」
「分かりました。それでは行きましょうか」
フェルは、ラナに連れられて屋敷の案内を受けに行った。
「本当に急ですまなかった」
「いいえ。私としましては、使用人が増えることによって他の者の仕事の負担が減りますから助かりますよ」
「そう言ってもらえると助かる」
私は執務室へと行き今日の事をまとめて送信した。ただし、報告したのは『焼却場』のみだ。『万能工房』も報告してしまうと、面倒臭いことが起こると思ったからだ。
その報告の送信を終えた後も他の仕事をしていると、一件のメッセージが送られて来て、それを開いて見る。
その内容はとんでもないものだった。その内容とは、ベルンガ王国の東に隣接しているヴァース帝国で反乱が起こる可能性があるというものだった。
すると、トワが勢いよくドアを開けて中へと入って来た。
「春人様!応接室に通信用魔道具が突然転送されて来て。とにかく来て下さい!」
トワにそう言われながら引っ張られて応接室へと行った。
応接室に入り、テーブルに置かれた魔道具を指差す。
「これか?」
「はい、これです」
確かこのタイプはここに魔力を通せば……。
『緊急事態発生!ヴァース帝国帝都内にて、反乱事件が発生!至急応援を求む。なお、救援参加条件は、幹部階級クラスが望ましい。以上!』
激しいライフルの発砲音が聞こえながらそのメッセージは終わった。
そして、すぐに向かうことにした。
「聞いた通り、これから私はヴァース帝国の帝都へと向かい、反乱の対処をヴァース支部の者達と行う。トワは出動要請があり次第、ヴァース帝国帝都へと迎え」
「分かりました」
「春人さんが行くのですか?」
トリスがそう尋ねてくる。
「ああ。この辺りの国の総合管轄官は私だからな。反乱事件を許してしまったのは私の責任でもあるから、私が行かなくてはならない。それに今回に限ってはヴァース支部が存在を隠すことなく反乱軍と戦っているから私も行って、一刻も早く反乱を抑えなくちゃならないんだよ」
「そうなんですね。気をつけて行って下さいね」
「ああ、行ってくる」
【ゲート】を帝都に開き、反乱軍の対処へと向かった。
この事件は、後に『帝国反乱事件』と呼ばれ、後世へと語り継がれ、歴史書にも残される程の大きな反乱事件。そして、世界が大きく動き出すきっかけとなった大事件となる。
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