1話 死亡、神界
とある森の中、一人の少年?がいた。その少年は、狩衣を着ている。
その少年……いや、その男性の名は望月春人。望月家歴代最年少の13歳で当主となり、歴代最強と呼ばれし87代目の当主である。
見た目は、18歳だが実年齢は39歳でおじさんと呼ばれてもおかしくない年齢である。
彼が術で18歳の見た目で成長を止めているのは、体が衰えてしまうと動きが鈍くなるからである。
そんな彼がこんな森の中にいるのは、仕事……妖術師の任務によりこの森に潜む妖どもの討伐のためである……。
「『雷電の術式、放雷電の術』」
春人は、術を放つ。
「これで終わりかなっと」
と春人が呟いた。
すると、春人の式神の一体はその呟きに答える。
「一応、これで終わったみたいです。……ですが、妙な空間の澱みが感じられます。もしかしたら他にも何か来るかもしれません。念のためご注意ください」
「ああ、分かってる」
確かにこの場所の空間は異常すぎるし、それにこんなの並大抵の術師ならば、気を失っていても別に不思議ではない程のレベルの妖力あちこちにあるな。
それを確かめようとしたその時、『ドン』と雷が鳴ったと同時に雷が落下し、春人に直撃してしまった。
「……!?主人様!!」
こうして望月春人は、享年39歳という望月家としては、短い人生に幕を下ろした。
そう、思ったが…………。
「此処はいったい……私は確か、雷に打たれて死んだはずなんだが……」
少し辺りを見渡す。
それにしてもどこだ此処は?どう見ても現世ではないな。
(私が死亡していることを考えると此処は霊界か天界?もし、後者だったなら天使が一人もいないというのは妙だな……それに霊界だったとしても多少の霊だったりがいてもおかしくないはずなんだが……)
そんな事を考えながら頭を上げるとこの空間の奥には一人の人(?)いた。
馬鹿な、さっきまであそこには誰もいなかったはず。それどころか、なぜいきなりあんなギリシャのアテネにあるパルテノン神殿のような柱が並んでいるんだ!?
そしてその人は、こっちにやってくるやいきなり。
「この度は、私の不祥事により貴方を神の神罰用の雷である神雷にて殺めてしまい大変申し訳ありませんでした!!」
と奥からやって来た女性がいきなり謝罪してきた。
ん〜。いきなりこんな一方的に謝られても少し困るんだが
なぁ。
「とりあえず一旦落ち着いて、まずは何がどうなっているのかは、今の説明で大体は想像できたけれどもわからないところも少しあるから一応説明をしてくれませんか」
「はい。貴方は今、私達神々の世界である、『神界』と呼ばれる場所というか世界にいます。そして貴方は、私が誤って落としてしまった『神雷』によって亡くなりました」
なるほど、ここは霊界ではなく神界だったのか。
……は?神界だと!?
動揺を気付かれないようにポーカーフェイスをしながら話しの続きを聞いた。
「こう言っては、貴方には大変申し訳ないのですが……落としたのが極小のものだったので貴方だけで済んだのですが、もっと大きな場合だったら日本も一緒に消滅していたかもしれません」
後半の言葉が凄く恐ろしいんだが。
「とりあえずここまでの説明ありがとうございます。前世に思い残したことはいろいろとありますが、日本国を守る事を責務や任務としている望月家の当主としては、私1人の犠牲だけで済んで、逆に良かったと思っていますよ。まあ、当主である私が死亡した事によって、望月家の当主は不在の状態となり早急に新しい当主を決めなくてはならないと慌ててはいると思いますが、おそらくは、呪術師としての実力が私の次に高かった妹が次の当主になると思いますからそこまでは心配はしてはいないのです。ですが、私が心配しているのは、いくら極小の神雷だったとはいえど私以外にその神雷に巻き込まれた者は、本当にいないのですか?」
「ええ、その事ならば全く心配いりませんよ。なんせあんなところにまず、普通の人だったらあまり行こうとは思いませんから。それと、貴方の近くにいた方ならば無事ですよ。それに貴方が死亡してから数十秒してから1枚の札になってしまったので、とりあえず貴方のお屋敷のお部屋にこっそりとお持ちして机の引き出しの中に入れて置いたので、もしかしたら誰かが見つけてくれるかもしれませんよ」
いやいや、そもそもの原因をつくったのは貴女ではないか!
と思わず口に出して言いそうになったけれども言わぬが花ってやつだろう。それに、決して言ってはならないような気がしたので、言うのをやめた。
すると、突然女神がある提案をしてきた。
「今回の貴方の死亡は、私の不祥事が招いた事。したがって貴方には申し訳ないのですが、既に死亡している貴方の世界である地球ではなく別世界、つまり異世界へと行ってもらいたいのです。もちろん貴方がお望みのものがあれば今から私がご用意いたします。ただし、私にもできないこともありますので、そこらへんはご注意ください」
春人は、異世界での常識や経済状況などについては一切知らないし、それに自分の持ち物の中には、いろいろと異世界でも使えるものがあるのでちょうど良かったと思った。
「では、質問とお願いが幾つかあるのですが。まず1つ目に、向こうの世界の文明について教えて頂きたいのですが」
「文明は、貴方達の世界でいう『中世ヨーロッパ』時代あたりぐらいになりますが、地球とは違って魔法と呼ばれるものが存在しており、また、その魔法に使われる魔力を使った魔法文明というのもあります。え〜と、貴方が前世で使っていた、『呪術』でしたっけ?それに似たようなものも向こうの世界にもあったりします。ですが、一部貴方の世界と同じか、または、それ以上の科学文明を持つところもありますね」
この時私は、最後の言葉を何気なく、聞き流してしまっていた。
それが後に後悔することも知らずに。
「2つ目に、向こうの世界の金銭価値や種類などについての説明をお願いしたいのですが」
「向こうの世界のお金は地球とは違って、全て硬貨となっており下から順に『鉄貨』、『銅貨』、『銀貨』、『金貨』、『大金貨』、『白金貨』、『王金貨』の順になっており、ちなみに例えば、銅貨10枚で銀貨1枚という感じになっています。もっとわかりやすく地球の金銭感覚でいくと鉄貨1枚=10円、銅貨1枚=1000円、銀貨一枚=1万円、金貨1枚=10万円、大金貨1枚=100万円、白金貨一枚=1000万円、王金貨1枚=1億円となっています」
なるほどね。ファンタジー小説とかによくある貨幣と大体同じってわけね。
「2つ目に魔法のは種類についてなんですけれども。魔法属性というのは、どれくらいの種類があるのですか?」
女神が、興味があるのですか?というような顔をしていた。
「魔法属性は、『火』『水』『風』『土』『光』『闇』そして、これら六つの属性魔法以外の魔法では『無属性』または、『系統外』魔法などとも呼ばれています。お望みならば、全属性全て使えるようにしておきましょうか?」
「お願いします。と言いたいところですが、確かに全属性あった方が便利だとは思いますよ。ですが、あまり目立つのはどうかと思うのですが……?」
「まあ、確かに全属性持ちはかなり珍しいのは確かではありますし、良くも悪くも目立つ可能性は高いとは思います。ですが、決していないわけではないので多分そこまでは問題ないとは思うのですが……」
「では、それでお願いします。あ、それと魔法を自分で改造したり創ったりすることは、出来たりしますか?」
無属性魔法にそういうのがあるかもと思ったんだが流石にそんなのはないか。
「可能ですよ」
え、出来るの。
まあ、そこは一旦置いといて。
「3つ目にこの私が持っている、このスマホを向こうの世界でも使えるようにしてはいただけませんか?」
地球の情報を向こうの世界でも使えればと思っていたんだが、けれどもこれは流石にいくらなんでも無理かなぁと、半ば諦めていると……。
「いくつか制限はありますが、使えるようにしておきましょう。あと、万が一何か困ったことがあったりした場合には私に電話をできるようにしますね。それに通話できる人がいないのは寂しいと思いますしね。まあ、もしかしたら私の方から電話をするかもしれませんが」
おぉ〜流石は神だなぁと思った。
でもなんでだろう。なんだか時々この人が本当に神様なのか怪しく見えてしまう時があるんだよなぁ。
そして、私は最後の望みを話した。
「では、私が最後にお願いしたいのは、私が所有しているもの……まあ、武器だったり式神なんかも向こうの世界でも使えるようにしていただきたいのですが」
女神は快く頷いた。
「いいですよ。貴方の望み、確かに聞き受けました。では、私からも最後に貴方の基礎能力と身体能力の強化、さらに魔法をほぼ制限なく使えるように魔力量を多くしておきますね」
全く、この女神様には頭が上がらないな。
何から何まで感謝しかない。
「何から何まで本当にありがとうございます。向こうの世界では、できるだけ人生を楽しく暮らしたいものです」
女神は少し微笑んで言った。
「貴方は、地球でとても大変な人生だったようなので、向こうの世界ではのんびりスローライフをするのも悪くはないのではないかと思いますよ」
そう女神が言うと私の体が突如、光り出した。
「もう、時間のようですね。無理矢理貴方の魂だけを引っ張って来た影響によって、神界に魂を止めておける時間制限があるのをすっかりと忘れていました。もし運が良ければ、またこの神界へと来ることが出来るかもしれませんね」
「最後に聞いておきたいのですが、貴女はいったい何者なのですか」
女神が答える。
「私の名はエレナント。この神界や数多ある世界を管理する最高責任者にして、そして、数多いる神々をまとめる最高神。これが私の肩書きですね。ですが、本来世界を管理する立場にある神でも今回のような世界に地上の方が死亡するのはごく稀な事ではありますが、以後このような事故が起こらないよう気をつけたいと思います」
「本当に気をつけてくださいね。今回は偶々(たまたま)私一人だけの犠牲だけで済みましたがもし他の人だったらもっと大変なことになっていたかもしれません。それに気をつけるにこしたことはないですしね。今後は、このような事にならないように気をつけてください。それと、今度会う時があったら貴方なんて他人行儀な呼び方ではなくて春人、とでも呼んで下さい」
「もちろん。わかっています。これからは、神雷などの地上世界に危害が及ぶようなものなどに関しては、厳重に管理致します。それと春人さん。今回の件はに関しましては本当に申し訳ありませんでした。ゴホン、それでは、貴方の来世に幸あらんことを」
こうして私は、神界から異世界へと飛び立った。
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