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ある日マンホールの底に落ちたら、そこにはエルフの世界が広がっていた

ご覧くださってありがとうございます。初めての投稿です。至らぬ点が多くあると思いますがどうか楽しんでいってください。

 俺は生まれながらの小説家だ、誰よりも頭の中の空想の中でもみくちゃに生きてきた。なぜなら、俺は現実が怖かったから、人、人、人それから騒音。それらから離れて逃れるために己の世界で生きるようになった、現実に殺されないため、自分を守るため、そのために現実世界と自身の内側との分厚い壁を構築し、人に壊され、また厚く、壊され、ますます、厚くなった。その結果どうなったか、人は俺に寄り付かなくなった。どうやらこの厚い壁は俺の目つき、動作、雰囲気となって現実世界に顕現していた。

 見たか昨日のスーパーの店員のあの目、異質なものに対する嫌悪のこもったあの目、あの目だ。あの目が俺をますます現実世界から内側の世界へと遠ざける。俺は23歳、身長183センチ、痩せ型。平凡な瓜実顔に乗った細い目と高い鼻、薄い唇は幸薄く、人よりも高い身長も相まって、どこか人を近づけ難い、歩く不協和音とも言うべきか、違和感のある緊張感を帯びていた。そして、特徴的なのが長く尖った耳。いつか見たファンタジー映画に出てくる、美しい森に住むエルフのような…そんな耳をしていた。ひどく貧乏くさい眼鏡と服装に身を包み、近隣市の大学へ通っている。俺が人と違うのは耳だけじゃない、中身もだ。神経症でうつ病だった。それが分かったのはつい先月、病院で医師にこう告げられた「典型的なうつ病ですね。」。

頭に靄がかかり、世界がモノクロに見え始めたのはいつからだったか。確かあれは小学3年生、母親が…………

これ以上は思い出したくはない、いや思い出せないんだ。思い出そうとすると頭の奥の方からキーンと暗鬱で不愉快な金属音が響いてくる。音、音、音、これがいつも俺を俺を苦しめる。車のエンジン音、街中の喧騒、人々の笑い声、叫び声、全ての音が俺の中身をぐちゃぐちゃにし、記憶と思考、人として生きる力を奪う。まるで、火にかけられた、動物が暴れているような、内側でそういったものを日々感じていた。苦しみの中続く毎日は暗く、どこまでも続いていくかのように思えた。

 その日は雨だった、しとしとと屋根を打つ音は、嫌いじゃない。朝から俺は例の病気が引き起こす暗鬱の中、本を読んでいた。(「自分はことし、二十七になります、白髪がめっきりふえたので、たいていの人から、四十以上に見られます。」か………ふん、悲惨な物語だな。俺の精神も同じくらい、重苦しく、陰湿で、楽しいことなんかこれっぽちもない。唯一の楽しみといえば、ここにあるタバコ、タバコ…あれっ切らしたか。ちっ、しょうがねぇ買いに行くか。)

仕方なく俺は、家の鍵と財布をもって外に出た。雨はじとじとと、どんよりとした俺の内面と世界を繋いでいた。やはり雨は嫌いじゃない。

 いつものコンビニへ行く道を傘をさして、雨音に耳を澄ましていた。雨音はどこまでも優しく、周囲の余計なノイズを遮断し、心を落ち着かせるクラシックと化していた。コンビニでは赤マルを二つ買った。コンビニを出る頃には、さらに雨は大降りになって、盛大な音楽を奏でている。タバコに火をつけ傘をさし、いつものように帰り道、頭の中で一人言をぶつくさ、唱えていた。

(気分がいい、実にいい。一生雨が降ってればいいんだ。そうすれば、どこまでも心は自由に豊かに優しくなれる、そうすれば、俺だってきっと人と上手くやっていけるはずなんだ、そうだろ、だって俺が人と上手くやっていけない理由の一つが、消えるんだから。音なんだよ、特に女学生が喚く音は溜まったものじゃない、先日だって休み時間に騒いでいた連中の横を通りかかったとき、彼氏が韓流アイドルに似ているだのどうだの、クソみたいな感情になっただろ、女ってやつは、いや男もそうか、外面だけで人を判断して好悪をきめるやつどれだけいるか。うちの学校はどれだけいるだろう、全員かもな、ハハッ本当にしょうもない学校にいってるな俺。実際俺は、高校3年間、クラスの連中が繰り出す騒音に悩まされ、ろくに勉強もできず、偏差値の低い学校に進学してしまった。とくに、3年間同じクラスだった元気だけが取り柄の美咲!あの幼馴染の声にはどれだけ苦しめられたことか!!本当に女の声には困ったもんだ。いつから女の声が嫌いになった?……確か……あれは俺が小学生の時、母親が………………)


キーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!

キーーーーーン!!

キーーーーーーーーーーーーーーーン!!


(くそっ、例の金属音だ、治れ治れ治れ、どこかへ行ってしまえ、さもなければ俺がどこかにいくか、昔みた映画のファンタジー世界のような、穏やかで静かな場所に!バカいえ!空想はここまでだ、治れ治れ治れ!)

歩みは止めず、傘を振り捨て、耳を押さえて目を瞑った。その時、ズリッと足が滑り、体全身を浮遊感が包んだ。その浮遊感はちょうどジェットコースターが坂を下っている時のような、お腹の底から湧くあの浮遊感。(俺、落ち………た?死………………………………………………………………………………………

 













目覚めた場所は森だった。


「チュンチュンチュチュン」


(天国みたいな…場所だな)


そこは、森だった。いつか見た森のような気もするが多分気のせいだろう。なんだろう、森の空気に洗われて、心まで澄み切ったような、ずっとこのまま寝ていたい、そんな気分に浸っていた。


「ちょっとあんた、いつまで寝てんのよ!」


そこにいたのは、俺より年下多分18歳ぐらいの金髪、碧眼、尖った耳、ツインテールで、、すらっとした体型だが、出ているところはでている、丈の短い白いドレスに包まれた、まるでアニメにでてきそうな、美少女が立っていた。


「何よその格好、さっさと行くよ!」


(うるさ、…うるさくない?こんなの初めてだ、女の子の声がキンキンしないなんて)


俺はそれと同じくらい、自分に気安く、当たり前のように話しかける人種(女の子)が居ることに驚いた。


「立ーてーーーぇ!!」


後ろから羽交い締めにされるように抱きかかえられて、起こされた。


ムニっ 


その時俺が背中に感じた人生はじめての感触は甘い弾力とともに、優しく包み込むのような抱擁力の伴ったものだった。


「あんた見かけない顔ね、それに、変な格好。まあいいわ、ついてきなさい。」


俺は特にやることはないし、この子について行ってみようと、つまり、どうにでもなれといった気持ちになった。


それからしばらく歩き、着いた場所は、木々の間を抜けて涼しい風の吹く、神聖な空気の漂う街だった。


(綺麗な所だな)


街の入り口である門には二人の門番がおり、俺たち二人を一瞥して、交差していた槍をどけた。


(槍?今のこの日本に?変な所だ、まあ夢かなんかだろう。少しぐらいおかしなことがあったって驚くようなことじゃない。これからなにが起きようとも驚くものか。)

そう俺は気を引き締めて、森の中に作られた壮大な敷地に広がる街へ繰り出したのだった。














ご覧くださりありがとうございました。ぜひご感想をお聞かせください。

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