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第三十八話 百足は生理的に受け付けない

お仕事の休みがこれから一ヶ月ほど不定期になってしまっているので、投稿日がバラけるかもしれません・・・。

休みが欲しい、切実に。

 シンと静まり返った空間に気絶し転がる一人の騎士。

 力加減はしたから気絶しただけのはず・・・死んでないよね?

 途端に不安になっていると。



「・・・お前達、この気絶している馬鹿を先に荷車にでも乗せて街へと連れて帰ってくれ」



「了解しました。団長はどうするのですか?」



「私は事後処理をする。留守中は任せたぞ、ディーラ」



「了解です、団長〜」



 イライザが周りの団員へと指示をし、それに従って指示を受けた者達は宴会を取りやめ、テキパキと作業を開始する。

 ある者は食器の片付けを、またある者は馬車に載せる荷造りを。

 そしてイライザはというと。



「我が狩護騎士団の者が大変な失礼を犯してしまった。国を護る為に振るわれるはずのその剣、それがあまつさえ恩人に向くだなんて事はあってはならない、ならない事だ」



「・・・まあそうだろうな。だが悪いのは上の命令を無視して殴りかかろうとしたアイツだろ?」



 正直、いきなり斬りかかられるとは思いもしなかったのでめちゃくちゃビビった。

 だって普通こんな公の場でいきなり襲いかかるなんてしないだろ?するとなればソイツは明らかなイカレ野郎だ。

 ・・・目の前に転がっているコイツはどうやらそのようだったが。


 俺がフォローを入れようとするも、イライザは尚も頭を下げ続け謝罪をする。



「しかし、部下の暴走を目の前に止められなかった私に責任があるというのも事実だ。・・・かくなる上は恩人に剣を向けたという罪で斬首を貴殿にーー」



「待て待て待て!誰もそんな事求めてないって!」



 唐突に何を言い出すんだこの騎士団長は。一体なんだ、騎士の世界ってのはそんなに物騒なのか?

 クレス兄さんもそのうちこんな事言い出したりしないよな、心配だ。



「・・・しかしそれでは狩護騎士団の名に恥を」



「あー、そもそも俺は剣を向けられてないぞ?だって抜かれる前に気絶させたしな」



「そうね、私も見てたけどセアの言う通りよ」



 ナイス援護、イリサ。俺はこっそり親指を上に立てる。

 かなりの屁理屈だが仕方ない、目の前のこの人の首が物理的に飛ぶ所など見たくないからな。



「ぐ、しかしだな・・・」



「ふふっ。こういう時のお兄ちゃんは何を言っても効かないですよ?それにこの場で貴方が死んで喜ぶ人など居ないと断じます」



「という訳だ。俺は一切不利を被ってないし、なんなら寧ろ寝床を提供してもらった恩もある。貸し借りは無しだ」



 ぶっちゃけ宴会も出来てないし、料理も自分達で調達した物だが。それでも安全な寝床を確保出来ただけ、旅人にとっては十分ありがたいのだ。


 イライザはふうと一つ息を吐くと、下げ続けていた頭を上げこちらに向き直る。



「・・・分かった。君達の厚意に感謝する」



「ああ、それでいい。俺も異国に来て最初に会った人の首を斬るなんてごめんだからな」



 これでも俺は一期一会の縁は大切にする方なんだ。

 ティルクソリア王国でも、面白い人達と縁を持てたしな。こういう物を大事にするのは・・・って、イライザがまだ何か言いたそうにしているな?



「どうした?」



「いや何、結局宴会は出来ずじまいだったからな。せめてもの礼に君達を我々の国にて歓迎させてもらおうと思うのだが、良いだろうか?」



 なるほどな、それくらいならば良いのでは無いだろうか。

 別に誰の命を奪うという訳でもなく、シンプルな礼としての歓迎。

 後腐れもなく終わりそうだが、他の皆の意見は・・・。



「私達の護るフィドンナ公国は要塞都市だが、名産もある。最も有名なのは砂糖とミルクをふんだんに使ったケーキだ」



「「「ケーキ!」」」



 どうやら良さげのようだった。ケーキに食いついたな。

 三人とも行こう行こうという意思を宿した視線を向けてくる、流石年頃の女子達だ。



「そうだな、お願いしよう。案内は任せたぞ?」



「ああ、任せろ。是非にオススメの店を紹介させてもらおう」



 こうして俺達は、フィドンナ公国にて最も大きな武力を誇る狩護騎士団に連れられ、実質的なVIP待遇にて迎え入れられる事になるのだった。






 翌朝早朝。

 イライザ含む俺達は、昨日に討伐した巨大ムカデの元に集まっていた。



「で、どうしたんだイライザ?またこんな所まで・・・って真正面から見たらやっぱ気持ち悪いなコイツ」



 追いかけられてる時はバイクを運転していたため感じていなかったが、目の前に巨大なムカデが横たわっているという現実に冷や汗が。

 イリサ達も直視したくないらしく、どこかに視線を逸らしていた。



「いや、コレに勝てたのは殆ど君達のお陰だからな。我々狩護騎士団と君達での報酬の配分をと思ってな」



「いやでも報酬はもう貰ってるだろ?それも俺たちからすれば破格の報酬が」



「ふむ。アレは私からの個人的な報酬だぞ?だから君達にも勿論の事、コイツの素材を受け取る権利がある」



 あっけらかんとそう言う騎士団長。

 ・・・マジか。コイツの素材をアイテムボックスにいれるのか?普通になんか嫌だ。

 せめて武器防具にしてから渡して欲しい。


 俺が難しそうな顔をしていると、イライザは顎に手を当てながら首を傾げる。



「どうしたんだ?他にも報酬が欲しいのであれば聞かせてもらうが」



「いやそうじゃない。報酬云々に関してなんだが・・・、辞退って出来ないのか?」



「辞退?コイツの素材は希少価値があるのだが・・・ああ、成程そういう事か。しかし加工してから渡すとなると中々時間がかかってしまうな。なんせこの大きさだ、死体を持ち帰るのに一週間はかかるぞ」



 察しのいいイライザに少しばかり安堵する。

 後は皆がそれで納得するかだが・・・。


 クイクイと袖を引っ張られるのでそちらを向くと、セツナがそこに。



「セアくんセアくん。アイテムボックスにならそこそこ入ると思うんですが、騎士団さんのお手伝いは・・・」



「おいセツナ?話の内容をちゃんと聞いてーー」



 あっ、よく考えたら直接的にはムカデがダメだなんて言ってないな。

 俺がすぐ様に彼女へと説明をしようとした時だった。



「アイテムボックスか。天職が豪商等であれば持っていると聞くが・・・それでもここまでの量は入らない。そういえば君もアイテムボックス持ちだったな。君達のテントくらいの量で一杯だっただろう?」



「えっ」



 ・・・他にも大量の食料や道すがら狩った魔物の素材が入ってるんだが。

 俺はセツナ達に視線を向けると、彼女達もあれ?と首を傾げている。



「そういえば前から気になってたんだけど・・・。セア達のアイテムボックスってどのくらい入るの?」



「わからん、試した事ないからな。だがまだ限界なんて事は一度も・・・」



 ・・・仕方ない、お試しということで腹をくくろう。

 俺は完全に動かなくなっているグランドセンチピードへと手を当て、アイテムボックスと念じる。



「やっぱり入るよなぁ・・・」



 目の前から一瞬にして消えるその巨体。

 頭部分から俺が氷杭で真っ二つにした所までの箇所までをアイテムボックスへと収納する。

 ・・・やっぱりムカデは無理だ。

 俺は直ぐにアイテムボックスから元の場所へと配置する。多少のズレはあるだろうが、これでほとんど元通りだろう。


 その一連の流れを見ていたイライザは、顎に手を当てたまま目を見開いて固まっていた。

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