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第二十一話 現代知識って強いんだな

 これまた翌日早朝。

 俺は眠たがるセツナを背に、イリサと共にダイニングへと向かっていた。



「またお姉ちゃんったら・・・。ほら、早く起きて」



「んう・・・。後一時間・・・」



「人の背中でそんなに寝かせるわけないでしょ!?」



 昨日とほぼ変わらない状況だった。

 強いて違う状況と言えば、ダイニングへ行くと父、リカルドも朝食の席に着いていたことくらいだ。



「はっはっは!皆!おはようだ!・・・って一人寝てるじゃないか」



「あらあら、うふふ」



「また変な目で見られるよお姉ちゃん!おーきーてー!」



「うう、分かったよイリサちゃん・・・」



 セツナを降ろすと昨日の様にまたふらふらと歩いて席へと着く。

 下手すれば、このやり取りがここに居る間毎日行われるのではなかろうか、という予感がしたのは言うまでもない。


 俺も席に着き朝食を摂り始めると、母、クラリスタが話しかけてくる。



「そういえばセア、セツナちゃん。昨日は魔力操作を覚えたわよね?

 今日はあの後言った通り、魔法を実際に発動させるから。

 ご飯を食べたら準備して、庭の方へいらっしゃいな」



「とすればセツナの魔法適正も調べなきゃだな。・・・ごちそうさまでした」



 俺はそう言ってメイド達に食器を預ける。

 


「あらセア。魔力を動かしているみたいだけれど、ずっとそうしてたの?」



「・・・分かるものなのか?」



「えっ、セアくん!あれからずっと練習してるんですか!?」



 まあ三週間弱という短い時間だ。

 このくらいしていなければ彼女達を守るなどとは言えないだろう。


 その甲斐(かい)あってか、昨日初めて魔力操作をしていた時に比べると、かなりスムーズに動かせるようになり。

 掌付近で待機させることも出来るようになった。



「はっはっは!やる気に満ち溢れているな、セアよ!」



「・・・セアって、そんなにストイックだったのね」



「まあ多少はな。だが楽しみながらやっているからな、苦ではないぞ」



 そう言って俺は、掌に出した魔力球を()()()()()()()()へと仕舞う。

 その一覧の動作を見た母さんは驚きに目を見開いていた。



「・・・セア?今貴方は何をしたの?」



「ん?ああ、アイテムボックスにな。こうしていたら何時でも魔力を取り出せるんじゃないかと思ってな、何せ自分の魔力だし」



 実際にアイテムボックスへ仕舞うとMPは減ったが、最大値が減らないのでそのまま回復した。

 その後、もう一度同じ事をしてMPを再度減らした後。

 先程の魔力をアイテムボックスから直接取り出して操作をし、体内に取り込むとMPはほぼほぼ最大まで回復した。


 つまり、多少の魔力ロスはあるがMPを貯蔵出来るのだ。


 この説明を聞いた母さんは驚愕(きょうがく)を隠すように咳払いをし。



「んんっ、セア。一先ず分かったから・・・。後で良ければ研究に付き合ってくれないかしら?」



「え、おう。了解?」



 彼女の絶対に逃がさないわよ?という様な眼力に断れるはずが無く。

 これから(しばら)く、スケジュールがとてもハードになる事が確定した俺は顔を背けるのだった。






 朝食を食べ終えて直ぐに準備を整えた俺達は、その足で庭へと向かう。


 昨日父さんと組手を行ったその場所は広く、バスケットコートくらいはありそうだ。



「わー!広いですよ、セアくん!そういえば昨日の試合、カッコよかったですよ?こう、シュババッて!」



「まあ魔法の大切さが分かったよな。生活魔法でアレだ、しっかりと魔法を覚えたらもっと上手く戦えただろうな」



 むんっ、と胸の前に両手を握るセツナに軽く答える。


 時間つぶしにと操作していた魔力を引っ込め、俺は教師役の母さんへと話しかける。



「なあ、母さん。セツナの魔法適正って・・・」



「そうね、それを今から調べるわ。ほらセツナちゃん、こっちにいらっしゃい?」



 そう言って魔力球を浮かべる教師役。

 ほえー、と言ってなんの危機感もなく近付いて行くセツナに少し心配になる。



「この魔力球に触れてみて。そしたら貴方の適正属性が分かるわ」



「おー!お願いします!」



 そう言って魔力球に触れるセツナ。

 彼女が触れたソレは、白色に光り輝いていた。



「あらあら。セツナちゃんは光魔法の適正が凄く高いようね」



 なるほど、光に適正があるのか。

 光魔法には回復が可能な物があると聞く、セツナにピッタリかもしれない。



「じゃあセツナちゃんの適正も分かったことだし。魔法の練習、始めるわよ?」



「ああ頼んだ、母さん」



「よろしくお願いします!先生!」



 生徒達のやる気に満ちた表情を見た教師役は、嬉しそうに微笑んだ。






「魔法というのは、論理にさえ沿っていれば、本人のイメージ次第でどんな魔法でも使えるものです」



 そう言う教師役、クラリスタは手元に魔力を集中させると。



「貫け、『火の矢』(ファイアアロー)



 直後、その魔力は一筋の火の矢となって標的である大岩へと飛んで行った。



「分かったかしら、二人とも?じゃあ手元に出した魔力に意識を集中させて、それぞれ適正属性の矢に変えるイメージをしてね?」



 指示に従って掌の魔力へと意識を向ける。

 ・・・が、弓など扱ったことのない俺は矢を飛ばすところなど想像が出来なかった。


 では代わりに、と想像するのは、前世で見た漫画の技。


(・・・確かこんな感じだったか)


 俺は指を銃の形にする。

 多少ならば銃の構造は調べた事があるため知っている。


 魔力を人差し指の付け根へと集中させる。


(これは火の弾丸だ。人差し指は銃身、ライフリングで回転させて貫通力を高めよう)


 ライフリング一一銃身の内側に刻まれている螺旋状(らせんじょう)の溝。

 貫通力を高めるために設計された部分を強くイメージする。


(撃鉄を降ろして一一放てっ!!)


 直後音を置き去りにして放たれたのは一発の火の弾丸。

 前世での拳銃をイメージして放ったソレは、火の矢とは比べ物にならないレベルのスピードで大岩へと向かい。


 チュドォンッ!!


(・・・やっぱり漫画みたいに連射とはいかないか。となると拳銃よりも機関銃の方がイメージ的にはよかったか)



「・・・」



「・・・」



 俺は横で黙り込んでいる二人に気付かず。

 未だ着弾地点から狼煙のように煙をあげる大岩を見つめ。

 より使い勝手が良く強い魔法を目指してイメージを固めていくのだった。






 もう日は暮れて、夕飯の時間だ。

 俺とセツナはイリサ達が待つであろうダイニングへと向かう。


(・・・結局今日も着させられているのか)


 そこには、相変わらず赤面しながらもメイドの真似事をさせられているイリサ。

 だが、作法も昨日よりかはしっかりとしている辺り真面目に取り組んでいるようだ。


 メイド服を来たイリサへとまたも飛びつくセツナ。


 そんな二人を後目(しりめ)に、俺は今日の振り返りをする。


 まずは『火の矢』もとい『火の弾丸』と名付けられた件の魔法。

 連射をする事こそ出来なかったが、左手でも打つことが出来そうだからそちらも練習する事にする。


 母さんは俺の放った魔法の原理を研究すると言って、そのまま研究室へと向かったようだ。


 また、魔法も手元から離れていなければアイテムボックスに収納出来るようだ。


 試しに、攻撃性の低い水の球を発射直前で収納して、もう一度出すと直接狙った方向へと発射することが出来た。


(・・・最悪、擬似的にだが金ピカの王様の真似事だって出来るのではなかろうか)


 思い出すのは前世で流行っていたゲームのキャラ。

 傲岸不遜(ごうがんふそん)な態度で武器を射出するソレを俺も魔法で出来るのでは、と思ってしまった。


(明日以降、暇があれば試してみるか)


 そう結論付けた俺は目の前に出された夕飯へと手を伸ばすのだった。

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