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第二十話 魔力の操作を覚えよう

 魔力の操作を覚えた俺達は、その日は一日中魔力操作を円滑にする練習をしていた。


 そして、気がつけば夕方。

 ゴーン、ゴーンと夕飯を知らせる様に時計の音が鳴った。



「あら、もうこんな時間。今日はここまでね、ご飯にしましょう?」



 そう言って立ち上がる教師、クラリスタ。

 ずっと慣れない魔力操作をしていたからかヘトヘトな俺とセツナを見て、あらあらと微笑む。



「母さん、ちなみに俺とセツナはちゃんと出来ていたのか?」



「うう、これで出来ていなかったら私ヘコんじゃいますよ」



「大丈夫よ、二人ともしっかりと出来ていたわ。・・・(むし)ろ、想定より早かったわね。明日からは外に出て実際に魔法を使ってみるわよ?」



(想定より早かったのは十中八九コレのせいだろうな・・・)


 そう思い、自分のステータスを見る。




・ステータス

 名前 : セア・ティルティフォン

 天職【旅人】


 レベル : 26

 HP : 41/41 

 MP : 145/145

 筋力 : 145

 防御 : 41

 魔力 : 145

 対魔力 : 145

 敏捷 : 275


 天職スキル 鑑定

       アイテムボックス

       生活魔術

       適応

 スキル 剣術(レベル6)

     (割愛)

     魔力操作




 スキル一覧の最後に、魔力操作というものが増えていたのだ。

 ちなみに魔力とMPはほぼほぼ同じらしいが、魔法を実際に発動させなければMP自体は減らないようだ。


 俺とセツナがほぼ同じくらいに魔力の操作が出来たことから、彼女も同じスキルを得たのだろう。


 そんな事を考えながら、俺達はダイニングへと向かったのだが。



「セ、セア様、セツナ様。料理の準備は出来ております・・・って、なんで私こんな事してるのよ!」



 そう言って顔を赤くするイリサ。

 そんな彼女の服装は、何故かメイド服になっていた。


(まあ、メイドの仕事を学びたいって言ったからな。家事についての意味だったんだろうが、そうなるわ)



「わー!イリサちゃん、すっごい可愛いよ!抱きしめていい?」



「ちょっ、お姉ちゃん!ダメだってば!」



 じゃれる二人を微笑ましく思いつつ席へと着くと、セシリーが暖かいスープを差し出してきた。



「メイドとしてはまだまだですね、イリサさんは」



「まあメイド自体になりたかった訳じゃないだろうしな」



 スープを飲みながら答える。

 確かにメイド服を来たイリサも可愛いが、普段の服装の方が自然で馴染んでいる。


 そもそも誰のメイドになるのだという話ではあるのだが。



「ほら、お姉ちゃん。ご飯早く食べて、冷めちゃうわよ?」



「はーい、イリサちゃん。いただきます!」



 イリサにグイグイと押されて席に着くや否や、夕飯を食べ始めたセツナ。

 相変わらずのマイペースだ。



「で、セアとお姉ちゃんはどのくらい出来たの?魔法は習得できそ?」



「もう俺もセツナも魔力は多少操作できるようになったからそこは反復練習するとして。明日からは実際に魔法を覚える事になる様だ」



 今日の成果をイリサへと報告すると。

 セツナも魔力を扱えたのが意外だったのだろう、ほー、とイリサは(ほう)けた声を上げる。



「ふっふーん!どう、イリサちゃん。お姉ちゃん凄いでしょ!」



 そう言って自慢げな笑顔を浮かべるセツナ。



「まあセツナはなんだかんだで器用ではあるからな。回復薬の調合も中々のものだったし」



「あら、回復薬を作れるの?それなら少しだけお願いがあるのだけれど・・・」



 そう母さんが言った時。

 ガチャッ、とダイニングの扉が開け放たれた。



「ただいま戻ったぞ、クラリスタ一一ってセア!?帰ってきていたのか!!」



「少し母さんに用事があってな。父さんは騎士団帰りか?」



「はっはっは!少し違うな!俺は今剣術学校で一一って、そこの女の子二人は?セアの嫁か?」



 最初に二人を見た時の母さんよりも(はなは)だしい勘違いを見せる、父さんであるリカルド。


 一方、イリサとセツナは俯いて何やらブツブツと言っていたが特に聞こえないので割愛させてもらう。



「この二人は俺の友人でパーティメンバーだ。で、横にいるこの子、セツナが刃物恐怖症でな。守るために魔法を覚えるか、って事で母さんを頼りに来たんだ」



「はっはっは!守るために、か!しかしそうか、刃物がな・・・」



 一から十まで手短に説明をすると、父さんは何やら考え事を始めた。


 暫くその状態だったが、急によし!と顔を上げて俺達に提案をしてきた。



「セア、次帰って来た時にどの程度強くなったか見ると言ったな!という訳だ、この後直ぐに()()()()組手をするぞ!」



 その提案に、俺は顔を(しか)めるのだった。






 夕飯を食べ終えてから役一時間後。

 もう日が沈みかけている中、俺と父さんは屋敷の庭に向かい合って立っていた。



「はっはっは!セアよ、どの程度強くなったか見せてもらおう!行くぞ!!」



 彼は、その大きな体躯(たいく)を弾丸の様なスピードで動かし、俺へと突進してきた。


 最初は十メートルはあった距離も一瞬でゼロに。

 しかし、レベルも上がり敏捷が伸びた事でなんとか(かわ)すことが出来た。


 お返しにとすれ違いざまの一瞬で肘鉄を入れようとするも、簡単に回避される。


(流石にそんな簡単には攻撃は当たらないか)


 剣が無いため、攻撃のリーチは自らの体躯(たいく)の長さ分しか無い。

 俺は身長が低い事は無いが、それでも目の前の相手である父と比べれば差が出てしまう。



「はっはっは!甘いな、セアよ!そんな攻撃当たらんぞ一一っと!」



「うおっ!あぶねえ!」



 先程まで背中をこちらへと向けていた彼は、その異常な脚力を駆使してノータイムで回し蹴りを放ってくる。


 無理な体勢から打ったためか、威力はそこまででは無く簡単にいなす事が出来た。


(・・・どうするか)


 先手は取られた。

 その上リーチでは負けて、攻撃は当たらない。

 体術だけでの組手ならば勝ち筋は無いだろう。

 一一あくまで体術だけでの話ならば、だが。



「ではこれはどうする、セア!」



 そう大声を上げながら迫ってくる父。

 とてつもない低姿勢で肩をこちらへ出し一直線に迫ってくる、所謂(いわゆる)ショルダータックルだ。


 これまた一瞬で詰められる距離。

 肩と父の顔が目の前に来たタイミングで、俺は一つスキルを使う。



「ウォーター」



 生活魔法、ウォーター。

 これは便宜上魔法と名前に着いているが、別に水魔法とは違う。

 想像力など無くとも一定の成果を出せる一一まあ偶に使い手によって差は出るが、それが天職スキルだ。



「ぬぅおっ!!?」



 いきなり目の前に水が来ると思わなかったのであろう。

 そのままのスピードで顔を突っ込み怯む戦闘狂、リカルド。


 そんな彼にトドメと言わんばかりに躱したまま後ろから足を引っ掛けて前に倒す。

 倒れまいと藻掻(もが)くが、先程放ったウォーターで足下がぬかるんでいたために姿勢を崩して仰向けに倒れ込む。



「・・・これで、満足か父さん」



「はっはっは!セアよ、してやられたぞ!まさか生活魔法で怯まされるとはな!」



 仰向けに倒れる父の顔前へと拳を据える俺と。

 それを見て豪快に笑う父、リカルド。

 俺の人生で初の彼に対する勝利は、決め手が生活魔法というなんとも稀有(けう)な結果で終わったのだった。

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