表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/10

第二話 スライム

 人外物の漫画を漁るも、角やケモミミがちょこっとついた物ばかり。

 さらには最終回で人間の美少女になるケモノ。

(どこを見ても人間、人間、人間……もううんざりだ)


 ────


 それがどうだろう。目の前に広がる光景は……本物のスライム!

 水のように透け輝く体。ぷるんとした丸いフォルムがいくつも、草原を跳ねている。

(いや、人外娘……にしてはちょっと原型に近過ぎるか。でも触ったら気持ち良さそうだな……)

(まあいい。初めての剣の練習に丁度いい)

 転生したのはナーロッパ国の王子様。剣術くらいは習っているだろう。


「で……道化師、スライムのレベルは?」

 なぜかちゃっかり旅について来た道化師に尋ねる王子。

「ここら辺のスライムはレベル1のようです」

(レベル1?ザコすぎるな)

 シャンと音を立てて腰に下げた剣を抜く。

 敵意に気付いたスライム達は王子の前へと集まって行き、一体の大きなスライムとなった。

「さて、お手並み拝見と行きますか……!」


「えっと……、えい!」

 転生前はお土産屋のおもちゃの剣しか触った事がないため、どう振ればいいのかさっぱり分からない。とりあえず、棒で叩くようにしてスライムに剣を振った。

 スライムは思ったより柔らかく、プリンにスプーンを入れるようにして二つに分かれた。

「やった! 初めて魔物的な奴を倒した!」

 王子がはしゃいでいると、道化師は深くため息をつき、首を横に振った。

「やれやれやれ……王子。スライムをよく見てください」

 振り返ると、そこにいたのは二匹の中くらいのスライム。

(スライムが……分裂した!?)


 スライムは再び一つになると、王子に迫った。

 ぬるりとした冷たい感触。スライムに脚を取られたのだ。

「わっ、やめろ、はなせッ!」

 スライムから逃れるためにもがくも、逆効果で体がどんどん飲み込まれて行く。腰から下がぬめぬめとした感触でひんやりと冷え、自由に動けない。

「道化師! 道化師助けて! やばい!」

「スライムに剣が効く訳ないじゃないですかぁ、王子ってばユーモアたっぷりですね」

 道化師はニヤニヤしているだけで特になにもしない。

「うわっ、うわー!」

 ついに首から下まで飲み込まれてしまった。体はスライムの体重でずっしり重く、海に浸かったかのように体が冷えた。

(このままじゃまずい!口まで塞がれたら窒息する……! 何ニヤニヤしてるんだあの道化師は!)

 しかし道化師は一切助けてくれず、ただ眺めているだけだった。


「ん ゛ん! ん ゛んんーッ!」

 ついに口元までスライムに飲み込まれていく。鼻も塞がれて息が出来ず、どうする事もできない。王子の美しい顔はどこへやら、髪はスライムの体液でひどく乱れ、絶望した険しい顔で目に涙を浮かべた。

 しばらくもがいていたが、うっすらと気が遠くなり、抵抗する力が弱っていく。

 完全にスライムに飲み込まれた王子は、水槽の中の金魚のようだった。

(何で……レベル1のスライムなんかに……。こんな事なら、会社の方がマシ……いや、そんな事ないか……)

 ──王子、死亡。

 スキル“不死”発動。蘇生。


 道化師が近付いて来る。

「いいですねぇ、その顔。とても王子様には見えませんよ。さて、そろそろリョナ経験値が貯まった頃合いですかね……」

 そう言うと道化師は右手を突き出し、次の言葉を発した。

雷電らいでん!」

 一気に空が曇り、けたたましい音が鳴り響いたと思った瞬間、目にも止まらない速さで雷がスライムに落ちた。

 当然だが、王子にも当たっている。

「お ゛ああああ!?」

 スライムは水のように弾け飛び、王子が出てくる。……感電しているが。

「王子ともあろうお方がまあ、こんなザマで……国から離れた所で良かったですねぇ」

「お、お前、ボクまで雷でしびれ……」

 ビクビクと痙攣しながら地面を這う姿は実に無様であった。

「おや! これは失敬」

 (こ、こんなはずじゃ……。ん?まてよ……)


「道化師、ボクのレベルっていくつか分かるか……?」

 もしかして、と思い道化師に尋ねる。

「今の戦いでレベル2になりましたね」

「まじか……」

 二人の旅は長引きそうだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ