スライム
・スライムとは?
ファンタジーを知っている者は間違いなく知っているであろうモンスターの代表格と言える存在、スライム。
彼らの多くは不定形で流動的な身体をもつモンスターとして描かれる。
過去から現在まで多くのファンタジー作品内でもメジャーな存在として書かれ、今では多くは駆け出しの冒険者や初心者向けのモンスターとして登場する事の多い、いわゆる雑魚モンスターの筆頭。
同時に、魔王とも呼ばれる程の強大な存在であったり、主人公として人気な生き物でもある。
しかし実際にスライムという生き物を考えてみると、これほど厄介なモンスターは少ないということがわかる。
そしてその不可思議さから彼らは様々な解釈の元、我々の想像の中に跋扈しているのだ。
・スライムの定義
液状の肉体の中に固体の核を持ち、特定の形を形成しない液状のモンスターの総称。
核を持たないスライムは「ウーズ」と定義し、ここでは語らない。
・スライムの身体について
肉体は液体の様な不定形で、粘液、またはゼリー状の物質で構成され、体内に固形の核を一つ持つ。
これと決まったサイズや色は定義されておらず、巨大なものから極小なもの、二色だったり単色だったり果ては核が複数である場合もある。
大体のスライムは色とサイズは自身の持つ属性と一致している。その変化は食事の内容次第で変化することが多いようだ。
彼らは核を中心として自身の体を好きなように変形させることが出来る。
そうすることで僅かな隙間や凹凸に滑り込ませ、壁や天井に張り付いたり敵の身体に密着したりする。
この性質上物理的な損傷を受けることはまずないが、身体が分裂してしまったり、ある程度核から肉体が離れてしまうと制御できなくなるのか、離れた肉体は一定時間の後活動を停止する。
また、核を破壊しても同様に活動を停止するため、核がスライムにとっての心臓部であることが知られている。
核だけを取り出した場合、それが生きているのか死んでいるのか確認する術は無いが、核だけでは何も出来ないためそれはどうでもいいことだろう。
基本的な性質が液体であるため物理的な干渉に強い分、それ以外の干渉にはとても弱い。
核を凍らされれば活動を停止し、炎に焼かれれば身体を徐々に蒸発させていく。雷で感電させられようものなら核を焼かれて瞬時に絶命してしまう。
これらに対抗すべく進化した個体もいるが、基本的なスライムはこのような特徴がある。
・スライムの感覚器
スライムに眼や鼻、手足も無ければ舌も耳も無い。
ではどうやって彼らは接近する者の存在を知るのか。
それは、謎である。
振動、魔力、呼吸、体臭等考えられることは多いのだが、それは作品内によって様々であると言える。
事実作品によっては話したり魔法を撃ったりと多種多様である。
筆者としては呼気に反応しているという説を推したい。彼らの貧弱な攻撃性能を考えるとそれが一番有用な狩りの方法だと思われるからだ。
・スライムの食事と狩り
多くの作品の中で、彼らは体表から分泌する液体、または構成している液体自体が融解性をもち、外的からの防衛と食事のために利用する。
雑食である彼らの食事は基本的に草や生き物の死体等の動かない有機物を主食とするが、動いている者を狙って狩りをすることもあるようだ。
恐らく、動かない餌は勝手に体内に入り込んだ物を消化しているだけであり、食事というより反射に近い行為なのだろう。
動いている者=餌として認識して襲い掛かる習性がある事を考えると、間違っていないと思われる。
基本的な攻撃方法は自身で相手の一部または全体を覆い、融解性の液体で溶かし、吸収するという方法であるが、逆に相手の体内へ侵入し、内部から溶かして食べるなどバリエーションが豊富な様である。
中には酸や毒液を飛ばす能力を持つものもいる。
大きくなった個体では、体の一部を伸ばして絡め取ったり、鞭の様に振り回したり、転がってダメージを与える等、体をぶつける形での物理攻撃を行うこともある。
狩りの方法は天井や床に潜み、相手が近づいた瞬間を狙って飛び掛るというシンプルなものだ。
飛び掛った後は自身で覆いつくして窒息死させる、融解性の液体をもって相手を殺す等の方法で殺害し、その後自身で覆い尽くして相手を消化していく。
また、この際に消化できなかったものは体外へと排泄される。
肉体の構造上ゆっくりとした動きしか出来ない彼らは、体を維持するために必要なエネルギーはそこまで多くない。しかし、動くとなると多大なエネルギーが必要となる。
そのため彼らが移動するのは移動しながら餌が食べれる状態の時か、飢えて餌が必要になった場合のみである。
また、エネルギーが不足すると彼らは自身を食べる。エネルギー確保と節約を同時に行うことで生き延び、餌を確保するためである。
・スライムの生殖
食事を繰り返し、ある程度大きくなったスライムは自身の核を二つに割り、ある程度の肉体と共に分裂する。
分裂したスライムはそれぞれで新たに活動し、食事を繰り返すことで大きくなり、大きくなったら再度分裂し・・・と、この様に増えていく。
そのため食料の豊富な狩場では大量のスライムで溢れ返ることになり、餌が足らなくなると一部の個体は別の狩場求めて移動する。
この様に生存競争を繰り返しながらスライムは各地へと散っていったのである。
・スライムの進化
スライムはその貧弱さゆえか環境適応力が高く、様々な環境に適応したスライムが確認されている。
各属性のスライムはもちろんのこと、メタルスライムやロックスライム、アシッドスライムやポイズンスライム等その場の生活環境や食事内容に合わせて多種多様な進化を遂げている。
もちろん、環境に適応することなく成長を遂げた異例な存在もおり、ただ巨大になることを目指したジャイアントスライム、魔法を使うようになったマジックスライム、他のモンスターと共生することを目指したヒールスライムなど、それこそ想像出来るスライムは全て存在するといえるだろう。
・疑問と回答
スライムが水に落ちたらどうなるの?
彼らの餌の判断基準として「とりあえず体内に入れてみる。溶かしてみる」という性質があるため、池や海などの液体に触れると際限なく体内に取り込んでしまう。取り込めてしまえるため、その結果自身の許容量をオーバーし、水を入れ過ぎた水風船の様に割れてしまう。そしてそれを際限なく繰り返し続けるため、最終的にはコアだけが残ることになるだろう。
稀にそれに耐え切り、巨大なスライムになる場合もあるが、大抵は食料の関係で餓死するか、自身を食い続けて元のサイズに戻る。
~~以下蛇足~~
・大体のスライム
今日の大半の作品では、いわゆるザコモンスターとして描かれているスライム。
倒しやすく、初心者や村人でも怪我をすることなく倒せる存在の代表格として知られているのが彼らだ。
時にはデフォルメされて愛らしく。時には少しコミカルな存在として書かれていることも多い。
・過去作でのスライム
彼らがスライムという名を冠する以前の作品では、ウーズという名で登場し、また、形を持たないもの、不定形、といった名前を冠する事も多かった。
彼らの多くは非常に厄介なモンスターとして登場し、度々村や国を滅亡へと導いている。
・知性あるスライム
一定の体細胞が人の脳細胞と同じ役割を果たし、思考することを可能としている。
また、感覚を得るために常に体表に感覚を司る様々な細胞を用意しているため、むき出しの神経を保護のするべく麻酔効果のある粘性の高い消化液で自身を保護している。
体表にある感覚細胞を常に均一に保ち続けるため、
もし仮に彼らが本気で食事をすれば、彼らが通った後には草一本残らない不毛な台地となり、陸の続く限りスライムの津波に飲まれていくことになるだろう。