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冤罪
啓太は病院に運ばれた。幸い打撲程度だった。待合室の椅子に腰掛けていると、制服警官が目の前に立っていた。
「それで、痴漢だと思ったんですね?」
「はい、女性が騒いでいたもので、捕まえたんですが、電車が到着の寸前に逃げられまして、転落しました」
「それでどうなりました?」
「線路下に落ちたので、まずいと思い、助けに降りたんですが、気絶していたようだったので、引っ張り出しました」
「電車が来ているのによく線路下に降りましたね」
「もう、無我夢中で……それで、その男の人はどうなりましたか?」
警官は一瞬、言葉を躊躇した。
「命には別状ないが、膝から下が切断されたよ」
「……」
「それにその人は痴漢もしていないことがわかったんだよ」
「ええっ?」
「女性が電車内で急に騒いで、それを気持ちが悪くなった男の人が駅に降りたが、女性がしつこく追ってくるので、逃げただけだったようだ」
「痴漢じゃなかったんですね」
「まったく、気の毒だよ」
啓太は罪悪感に苛まれた。