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精霊石の瞳  作者:
25/25

複雑


 一つ目の目的を果たせたので次は従者にする人を探しに行くことになった。ディランは兎も角私にはそういったことに詳しい知り合いは居ない。

 誰かに紹介して貰えたりしないかとディランに聞いたところ知っていそうな貴族とは仲が悪いらしい。

 

 よって特に宛もなくガルドに跨ってゆっくりと移動する流れになった。 

 

 「従者ってどこで探すものなの?」

 「そりゃ、適当に気に入ったやつに声掛けりゃいいんじゃねぇか?」

 

 道端の石ころを拾うようにそんなに上手くいくものなのかしら。街中で石遊びをする子供達をぼんやりと見ながら、そんなことを考えていると、ふと耳元で囁き声がする。

 

 近くには来ないようにと伝えてあるからかふんわりと風が感じられ、それと共に齎された声に思わずディランを見上げる。

 

 「あ?どうしたんだ?」

 「…オススメの子が居るんだって」

 「おすすめだァ?誰がンなこと…いや、言わねぇでいいわ」

 答えようとした口を押えられる。ふがふがとディランの手のひら越しに言葉を伝えようとするが音にはならない。なんだか虚しいし、ディランの見た目と言動が厳ついことから誘拐犯と間違われそう。

 

 「…で、どこにいんだ?」

 「私のお金ってあったりする?」

 「質問を質問で返すなよ、めんどくせぇな…まだ遺産相続とかなんだかんだ済んでねぇからすぐは無理だろうが俺が金に困っているように見えるか?」

 

 あの屋敷を思い出し、そしてディランをお気に入り認定している伯父を思い浮かべた。相性が悪そうなのに騎士団長として働いていたということは結構な金額が動いていそうだし、なによりディランが散財する様子が思い浮かばない。

 

 納得しつつ、精霊が教えてくれた言葉を口にした。

 

 「奴隷商人のところ」

 「は?」

 「赤い看板の…だって」

 「随分具体的だな…赤い看板…?」


 少し考えた後ディランが苦虫を噛み潰したような顔をした。その表情が珍しくてまじまじと見つめればディランが視線を空に向けた。

 

 「……本当におすすめなんだな?」

 耳元に再び風が吹いて言葉が届く。

 「うん、そうみたい」

 「……場所は分かった、今から行くぞ」

 

 来た道を戻り始めるディラン。背中から伝わるディランの鼓動が少し早く感じられた。

 

 「ディラン…?」

 「以前行ったことがあンだよ」

 「ディランが奴隷商に用があったことがあるって…なに、逃げ出してきたとか?」

 「ナマ言ってんじゃねぇぞ…?俺は上司にも噛み付くと決めてるんだが」

 「冗談よ」

 

 話したくないなら話さなくていいと告げればディランが鼻で笑う。

 

 「……あそこの店主には一度助けて貰ったことがあンだ」 

 「ディランが!?」

 「あんたの頭の中での俺は化け物かなんかかよ、俺だって困る事だってある」

 

 溜息をつくディランを見上げ、少し心がモヤモヤする。素直じゃないディランが助けて貰ったことがあるということは相当恩があるのだろう。

 でも…

 「次から助けるのは私だから」

 「…は?」

 「ディランの事を次から助けるのは私だから」

 

 その誰かでも無く、私が助ける側でなければいけない。だってディランは私のモノで私はディランのモノなんでしょう。

 

 ディランが面食らった様に黙り込み頭をぐしゃぐしゃと撫でられた。

 ガルドの手網を片手で掴んでの事なので前に座る私のバランスが崩れそうになる。

 

 「!?」

 「デカくなってから言いやがれ」

 

 そうポツリと聞こえる声があまりに小さくて。

 

 らしくもなく震えている気がしたのはきっと気のせいでなければいけない。

 

 私はきっと気づいてはいけないから。

 

 

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