原因追及
目の前には誇らしげな態度でカイザーとキャロルが僕を見上げている。
そして2匹の足元にはそれぞれ色が付いたコアが置いてある。
まず間違いなく先程持っていった使用済みコアだ。
「お前たち、これをどうやって復活させたんだ?」
散々粘ってみたが【リペア】に反応しなかったのだ。それまでの間この2匹はどこで何をしていたのだろうか?
「クエックエックエエクエ!」
「キャルッ! キャルッ! キャルゥーーッ!」
僕の質問に2匹は身振りする。どうやら説明しているらしい……。
僕は一通り2匹の声に耳を傾け頷くと……。
「なるほど。わからん」
イブの通訳がなければ聞き出すことは不可能なようだ。
「クエーン」
「キャルゥ」
僕の言葉に2匹は肩を落としてみせる。こんな状況でなければ抱きしめて撫でまわしたいところなのだが、今は原因の追究を優先したい。
イブに話しかけようかとも思ったが、台座の方を見るとイブが嵌め込まれたコアを見つめて真剣な顔でぶつぶつ言っている。
イブらしくない。僕が帰宅したことにも気付けないほどに集中しているのだ。
それほど今回のコアの解析は大変らしく、彼女の集中力を切りたくはない。
「仕方ない。自分で考えるか」
ザ・ワールド内のことならある程度は自由になる。僕は自分で調べることにした。
僕がじっと見るとキャロルもカイザーも大人しく見つめ返してくる。餌付けの効果もあったのか本当に良く懐いたものだ。
最近は毎日一緒に寝ているので、その豊かな羽毛と獣毛の感触を思い出すと思わず眠気を覚えそうになる。
「ん。キャロル? お前濡れてないか?」
「キャルウ?」
つぶらな瞳を向け首を傾げる。僕は手を伸ばすとキャロルの毛に触れる。
身体を振るわせて水分を飛ばしているようだが、やはり湿っぽい。
「キャロルがきたのは【畑】の方……つまりは……」
僕はコアを持つと2匹を連れて移動するのだった。
「これ……か……?」
【牧場】ではゴールデンシープ達がのどかに牧草を食べている。
僕はその【牧場】から見える場所にある家の……庭へと回り込んでいた。
「おまえ、コアを持ってここに入ったのか?」
このザ・ワールドにおいて水場というのは限られている。
【牧場】にも家畜に与える水があるのでそちらも候補になりえるのだが、僕はキャロルに「あいつらは食うなよ」と言い含めておいたので、おいそれと近寄らない。
動物は本能で行動するので、キャロルの縄張りを考えるとこの場所が最有力。
「キャルキャル」
どうやら正解らしい。キャロルはしきりに首を縦にふる。
「まあ、確かにその可能性は否定できないよな……にしてもそうだと気付いてしまえば確かにここだよな」
目の前にあるのは【温泉】だ。毎日僕の体力と魔力を回復させてくれる最近の癒しスポット。
僕はそこに新しく持ってきた使用済みコアをいれてみせる。
「さすがにすぐには反応しないか……」
だが、ここであってると確信できるのでしばらく様子を見ていると…………。
「きたかっ!」
次第にコアに変化が生じる。コアの中心に光が灯ったかと思うと、その光が徐々に大きくなってきたのだ。
「これは……温泉の効果の体力回復に反応しているのか?」
もしくは魔力回復か両方だろうが、現時点では解析のしようがない。
「それにしても多分まだ回復しきれていないんじゃないかな?」
持ってきたコアを見比べるとどちらも輝きが弱い気がする。僕はそちらのコアも沈めて見せると……。
「とりあえずこのままにしておいてもう1つのコアの謎を解くか……」
今度はカイザーへと視線を向けるのだった。
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「なにっ! 杖の行方がわからなくなっただとっ!」
タック王子の怒鳴り声に部下は身をすくめる。
「一体どうしてそのようなことになってるんだっ! あの場所はダンジョンの最奥フロアだぞ。わざわざ地面を掘って隠し部屋を設置した後、ダンジョンコアから力を吸い出す形で魔法陣まで敷いたんだ。さらに4属性の魔法を最上級でぶつけなければ解けない封印を施したんだ。それを調べて実行することすら人間には不可能だろっ!」
実際、封印の時にもタック王子は自分と部下で出向いている。余程の相手でも不可能なギミックと自負して戻ったのだ。
「そっ、それが……封印が破られたあとがありましたので……恐らくは手順に従ったものかと思います」
「くそっ! 一体どこのどいつが……。人間の国家が秘匿している魔道士か? それにしてもこうまで綺麗に奪いとるなんて……スパイでも入り込んでいる?」
焦りを顔に浮べたタック王子は部下に向き直ると……。
「お前は近くの人間の街に調査に向かえ」
「調査ですか?」
「ああ、ダンジョンランクⅦのコアを抜いた上財宝も持っているんだ。恐らくどこかに立ちよっているはず。何らかの形跡は掴めるはずだ」
なにせあれだけの宝だ、処分をしていれば目立たないわけが無い。コアだって手元に置くよりは引き取らせた方が金になる。余程の馬鹿でなければ売り払って探索したメンバーに分配しているはず。
それを突き止めれば杖のありかを知るチャンスがまだある。
「なるほど。では早速メンバーを率いて向かいます」
「うん。頼んだぞ……俺はぼちぼち出掛けなければならないからな」
「タック王子。どちらへ出掛けるのですか?」
部下の質問にタック王子は答えた。
「アスタナ島にて交流会がある。俺は最優秀生徒として参加しなければならないからな」
各学校で優秀な人材を集めて行われる交流会。それは魔国の学校も含まれている。
交流会とはいえどの学校が優秀な人材を輩出しているのかが比べられるため、気合を入れてのぞまなければならない。
「というわけで、親父が何か聞いてくる前に俺は逃げるから……くれぐれも突き止めておいてくれよな」
そう言うとタック王子は部屋から出て行くのだった。
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