火と地のランクⅤダンジョン②
「これはちょっと流石にな……」
僕が覗き込んだ場所から下に5メートルほど降りた場所には大きな広間がある。
そしてその中央の台座にはダンジョンコアと思われる石が埋め込まれているのだが………………。
『なぜですか? いつもみたいに丸太を振り回して薙ぎ払えばいいじゃないですか?』
イブは自分の発言がおかしいことに疑問が浮かばないのか妙な提案をしてくる。
「いや、さすがにダイアウルフにトロルにサラマンダー。Bランクモンスターまで混在していると同時に相手をするのは厳しいって」
広間にはところせましとモンスターたちが集まっていて、統率されているかのようにダンジョンコアを守っている。
『そうですか? 魔法を併用すればなんとでもできそうな気がしますけどね』
そんな疑問を浮かべるイブに僕は1つ告げる。
「それなんだけどね、昨日の【リペア】の疲労が思ってるよりも残ってるんだよ」
今まで魔力の消耗で疲労を感じたことはなかったのだが、今回は身体がだるい。
体感でいうと属性魔法を2つも使えば打ち止めな感じだ。
宿で1泊すれば完全回復とならないのはそれだけ僕の魔力量が多いからなのか?
『マナポーションもっと用意すればよかったですね』
エクレアさんの病気を治すためにスタミナポーションはかなり作ったのだが、マナポーションに関しては作れるか試す程度しか用意しなかった。
これまで使い切れていなかった魔力だが【増幅】で高位の能力を使えるようになったことから今後はストックしておいた方が良いだろう。
『どうしますか? いったんザ・ワールドに戻ってゆっくり休んで体調を整えてからにしますか?』
その方法をとれるのが僕の最大の強みだろう。
普通のパーティーならば疲労を押してでも戦わなければならない場面なのだが、僕は安全な場所で休むことで万全に整えてから挑むという選択肢を加えることができる。
これは食糧や安全地帯を確保できるからこその方法だ。
「いや、ダンジョンの入り口は解放しちゃったからな。このまま休みに入って出てきた時に攻略済みにされてしまったら困る」
いくら見つけにくいダンジョンとはいえ、ダンジョン探索専門の冒険者は侮れない。
『じゃあどうするんですか?』
そう聞いてくるイブに僕は気負うことなく答える。
「たまにはパーティープレイでもしてみようか?」
「よし、カイザー。攪乱して! イブは魔法で弾幕を張れっ!」
「クエエエー!」
『わかりましたっ!』
あれから広間に降りるとモンスター達は一斉に僕をターゲットにしてきた。
「動きが遅いうえに単調だ。これならいくらでも問題ないっ!」
僕は襲い掛かってきたサラマンダーを蒼のショートソードで斬り裂く。
切断面が一瞬で冷凍され、サラマンダーの瞳から光が消えたことで絶命したのがわかる。
「よし良い感じだ。2人共(?)そのまま頼んだぞ」
僕がとった作戦は1人で倒すことがリスクならば味方を増やしてやることだった。
自分が魔法を使えない分をイブに魔法を打たせることで補い、カイザーにスピードで敵を攪乱してもらうことでモンスターを一度に相手にしないようにする。
おかげで僕は背後の安全を確保しつつ数匹ずつを相手にすることで形勢は徐々に僕らが有利に傾いていく。
「よしっ! ここからが大事だ! 油断せずに行くぞっ!」
僕が発破をかけるとイブとカイザーは。
『任せてくださいっ!!』
「クックエッ!」
呼応するように叫ぶのだった。
『マスターあぶないっ!』
「ギャアアアアアアアアアア」
「クエエエエーーーーー!!!」
「グルルルウルアアアアアアーーー!!!」
「えーと………」
それから間もなくして僕はショートソードを構えると棒立ちしていた。
何故なら、戦局が傾き始めてからというもの僕の元に敵が来なくなったからだ。
『マスターはお疲れなんです。カイザー1匹たりとも通すんじゃないですよ』
「クエックエックエッ!」
何故なら目の前では大火力をもってモンスター達が蹂躙されているからだ。
イブの魔法が飛び交い、逃げ惑うモンスターをカイザーが確実に倒していく。
それも僕の方へと向かってくる敵を優先してなので出番が完全にない。
正直この2人(?)がいれば最初から何とかなったのではないかと思う。
イブは僕の成長に合わせるかのように力をつけているので当然だが、カイザーもなんだかんだで出会ったころに比べると強くなっている。
今ならAランクモンスター相手にガチで戦えるのではないだろうか?
「僕はもう見てるだけにしよ」
パーティープレイを提案したのだからもう少し前にでようかとも考えたが、あの2人が張り切ってるのは僕を休ませるためのようだ。
ならばここは甘えさせてもらうのが正解だろう。
それからしばらくの間、広間では圧倒的な火力による蹂躙が行われていた。
『クッエエエーー』
『マスター、全滅させましたよ』
褒めて欲しいとばかりにすり寄ってくるカイザーとやってやった感をだすイブの声。
「2人とも良くやってくれた!」
僕はカイザーの頭を撫でながら2人を労うのだった。
『それにしてもこのダンジョン妙ですよね』
「ん。どういうことだ?」
モンスターの魔核を回収しているとイブが怪訝な声をだす。
『ダンジョンの構造は探索者に攻略させるためにできているんです。モンスターはところどころを徘徊していますし、中央にはボスがいるはず。なのに今回は一度降りたらモンスターを全滅させないと上がれない段差になっていたり大量のモンスターを集結させてたじゃないですか』
「たしかにね…………」
思うところはある。
Bランクモンスターが10匹程混じっていたとはいえこの数は驚異的だ。
イブとカイザーがいなければ僕でも挑まないぐらいなので、もしこれを突破できるとするとSランク探索者パーティーでもやっとではなかろうか?
大人数で挑めば途中の罠で人が減り、ここまでたどり着いたとしても大量のモンスターを前に絶望する。
ランクⅤのダンジョンだけあって深い作りになっているので、ここまで潜ったら帰るのにも時間がかかる。そこまでの食糧を考えると玉砕覚悟でも突破しなければなるまい。
つまりこのダンジョンは何者かの思惑のせいでランク以上の難易度を誇っていたのだ。
『……それにしても探っても何も見当たりませんね。偶然こんな状況が生まれるとは思わないんですけど』
そう訝しむイブに…………。
「まあいいさ、取り敢えず疲れたし。今日のところはコアを取ったら帰ろう」
雑魚相手とはいえそれなりの数を倒したのだ。
本調子ではないこともあってか結構辛かったりする。
『そうですね。他に何もないようなので帰りましょう。今夜はサービスしちゃいますよ』
イブの言葉を聞き流しながらコアを取る。
赤と茶が半々のコアだ。
「さて、それじゃあテレポーターで出口まで飛んで…………」
『マ、マスター! 何か来ますっ!』
次の瞬間、広間の中央で魔法陣が輝くと……………………。
「「「GAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA」」」
3つの頭を持つ魔獣が咆哮を上げていた。




