ロンダリング2
『あっ……カイザーが来ましたね』
『クエエーーン』
あれからしばらく待っているとカイザーがようやく現れた。
【飛翔】のスピードはとてつもなく、圧倒的な速度で空を駆けるクリスタルバードを置き去りにするほどだったのだ。
カイザーが泣きながら僕に飛びついてきたのであやしてやると…………。
『どうやら疲れてるみたいなのでザ・ワールドで休ませましょう』
イブの言葉もあってルームへと戻って行った。
「無理もないか、かなり飛んできたみたいだからなぁ」
飛んできた方向を見てみると間に山脈が見える。アカデミーにあった地図の記憶によるとここは隣国のはず。
『イブの風魔法が解けてたらマスター凍ってましたよ?』
大袈裟なとは笑うまい。実際、音速に近い速度がでていたようで目に映る光景は真っ白だった。
そんなイブに改めて聞いておく。
「なあ、イブ」
『なんでしょうマスター?』
「お願いしたら聞いてくれるか?」
『当り前じゃないですか。イブはマスターの為だけに存在しているのです。ドラゴンやフェニックスを討伐しろと言われても喜んでいきますとも』
高い忠誠心を持つイブに僕は言う。
「【増幅】の効果が切れる前に戻りたいんだけど風魔法頼める?」
次の瞬間、イブが泣き出した。
「なあ、いい加減機嫌直せよ」
あれから街に降り立ち歩いているのだが…………。
「言ってよい冗談と悪い冗談がありますよ。私は本気で死を覚悟して実行するか悩んだんですからね」
隣ではイブが不機嫌そうに歩いている。
「悪かったって、僕だって折角きたのなら1泊ぐらいはするつもりだったからさ」
恩恵の速度が想定外すぎて隣国まできてしまったのだが、それならそれでやりたいこともある。
「それで、結局この後どうするんですか?」
れいによってイブの幻惑魔法で姿を変えている。
周囲の視線は美少女のイブへと向かっているので僕なんぞは印象にも残らないようだ。
「この機会に色々売りさばきたいと思ってね」
そう言うと僕は魔道具のお店へと入って行った。
「やー、装備も中々高値で売れてよかったな」
「そうですねー。たいした相手じゃなかったから微妙かとも思ってたけど良かったです」
僕とイブは以前に討伐した盗賊達の装備をこの機会に売り払ってきたのだ。
国内ならば足が付くかもしれない行動だが、ここは国外だ。
さらに僕は変装をしているので、もしあちらの国から人員が派遣されてきたとしてもそう簡単に僕までたどり着くのは不可能。
少なくとも【幻惑】で姿を変えて【増幅】で【飛行】を【飛翔】に変えて魔法で飛んできて売った。というところまで突き止めない限りは僕のアリバイを崩すことはできないだろう。
最初から僕を犯人だと狙い撃ちしている人間でもその立証は不可能なので、僕はこの街で安心して行動することにした。
「次はいらないダンジョンコアを売るついでにショップにあるコアの確認だな」
「マスター、イブは新しいコアが欲しいです」
機嫌よく話す僕にイブも機嫌よく答えるとコアの店へと入って行くのだった。
「さて、コアも売り払ったし、ランクⅤのコアも1つ手に入って良かったな」
「マスターはやくザ・ワールドに戻ってコアを取り込みましょうよ」
イブが顔を赤くしてそわそわしているのだが…………。
「なあ、イブ。まだ日が出ている間にやっておきたいことがあるんだけど……」
僕はアカデミーで調べたこの周辺の生息マップを頭で思い浮かべる。
「なんですか?」
それはもともとアスタナ島に行く準備の過程で手に入れるつもりだったのだが、ここが隣国なら都合が良い。
「これから外にでて飛行するからあるものを探しておきたいんだ」
「はぁ……あるものですか?」
僕の言葉をイブは訝しむと…………。
「まあ、マスターのやることなので指示通りにしますけど。今度は何を企んでいるのですか?」
その言葉に僕は笑みを浮かべると答えた。
「なあに、そろそろ【牧場】を試してみたくなっただけだよ」




