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【書籍化】ダンジョンだらけの異世界に転生したけど僕の恩恵が最難関ダンジョンだった件【コミカライズ】  作者: まるせい


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フルーツタルト(特製)

 バターを室温で柔らかくしておき、生地になる粉と混ぜ合わせる。

 そして砂糖と卵を混ぜ合わせて冷蔵箱に入れて寝かせる。


『マスター今日は休むんじゃなかったんですか?』


 イブのあきれた声がする。


(うん、だから休んでるつもりなんだけどさ)


 ここはアカデミーの調理室。

 アカデミーの学生は基本的に学内の施設の食堂などを利用するのだが、中には自炊をする人間も存在する。

 そういった人間のために用意されたのがこの調理室だった。


 現在は休日の日中ということもあってか調理室はそこそこ人がいる。

 自分たちでお菓子を作って茶会を始めている女子生徒達がそこらにチラホラいてこちらの様子を窺がっている。


 恐らくだが、この場の唯一の男子の僕が気になるようだ。


『そのわりには午前中も市場に買い出しに行っていろいろ買ってましたし、今だって何やら怪しいものを作っているじゃないですかぁ。何もしない時間というのもマスターには必要だと思うんですよ』


 イブは少し心配性なところがあるようだ。まるで僕が24時間働き続けるのが当たり前のように考えているみたいな節があるので反論しておこう。


(これが僕の休日の過ごし方なんだよ)


『むぅ……じゃあ何を作ってるんですか?』


 そうこういう間にも手を動かしている。シロップを用意し【畑】から取り出した様々な果物の皮を剝いてそれに漬け込んでいく。


 向こう側の女子生徒達が果物につられてかジーっと見ている。

 茶会の会話はいいのだろうか?


(今作ってるのはフルーツタルトだよ。お菓子作りが僕の趣味なんだ)


 これは嘘ではない。前世では外で遊ぶお金も友人も居なかったので、どうせ趣味にするならばと料理やお菓子作りをしていたのだ。


『へぇ……普通に手馴れていますね。あっという間に作業が終わっているのでなんだか恰好いいです』


(……ありがとう)


 そんなことを言われたのは初めてなので少し嬉しかったりする。


「あとは生地を型に流し込んで…………」


 そうこうしている間にも盛り付けるフルーツとジャムの準備を終えて生地の準備が整った。

 僕はオーブンに生地をいれるとしばらく待つことにした。


『それにしてもマスターも休みの日ぐらいロベルトさん達と遊んだらどうでしょう。皆さん集まって運動をしてるらしいですよ』


 王都で流行っているスポーツがあってクラスメイト達はチームを作っており休日はアカデミー内の施設で遊んでいるのは知っている。


(僕が混ざると浮いちゃうんだよな……)


 カイザーの卵を食べたり高ランクのダンジョンに潜ったりしているのでレベル差が大きい。

 下手に混じろうものならば僕が無双してしまうためゲームが成立しなくなってしまう。

 ロベルトも頼めば入れてくれるのだろうけど、彼の友人付き合いをぶち壊すのはしのびないと思っているのだ。


『だったらアンジェリカさんはどうですか。なんだかマスターを誘いたそうな顔してましたよ』


(いや、それは気のせいだろう。ここのところ2週連続で城に付き合ってもらったし、王族なら休日も暇なわけがない。きっと貴族の令嬢達との付き合いがあるだろう)


 そうこうしている間にも生地が焼きあがった。

 もはや完全に視線をくぎ付けにしている女子生徒達をよそに焼きあがった土台にジャムを塗り特製のパウダーを振りかけると上からフルーツを盛り付けていく。

 全部で3つ用意したのでそれぞれ違った味になるように工夫をしながらだ。


 やがてすべての盛り付けを終えて最後に刷毛を使ってナパージュを塗り完成させる。


『うわわあー。食べたい食べたい食べたいですよー』


 イブが興奮気味に騒ぎ立てる。うん、確かにこれは良くできている。

 前世の時は果物も高かったし1人で食べるということもあってか、ここまで映えるフルーツタルトを作ったことはない。

 写真に残して投稿したいぐらいの出来栄えだ。


「さて、試食してみるか」


 いよいよ涎を垂らしている女子生徒達をしり目に僕は均等に切ったそれを口にする。


「うん。生地はサクサクしてるけどフルーツがしっとりしていて素材の甘みを生かしてる。今までの中でも最高の出来栄えだな」


 【畑】の果物を使った時点で良いものができるとは思っていたが、前世でも食べたことが無いような美味しいタルトに自然と頬が緩んだ。


「あの…………何か御用でしょうか?」


 気付いたら僕の周りを女子達が囲んでいた。

 調理室で雑談をしていた3人組が2組。こちらが声を掛けても一切反応せずにタルトを見ている。


『マスターこの娘達、獲物を狙う肉食獣みたいな目をしてます』


(イブもそう思うか……)


 戦ってはダメだと本能が告げる。僕は仕方ないかとため息を吐くと……。


「あの、良かったらこのタルト食べますか?」


「「「「「「えっ?」」」」」」


 残り2皿は渡すわけにはいかないが、これならば別に捧げても問題はない。

 僕の言葉に6人は一斉に顔をあげると僕をみた。


「1切れは食べちゃったけどまだ残ってますし。もし良かったらなんですけど……」


 皿の上には7切れのタルトがあるので人数は足りると思う。


「ありがとう。いただきます」


 女子生徒達がとても嬉しそうな顔をしてお礼を言ってくれた。

 僕としても自分が作ったタルトを美味しそうに食べてくれるのなら嬉しい。


「それじゃあ、僕はこれで失礼しますね」


 クリーンの魔法で調理器具をささっと片付け、残る2つのタルトをルームに戻した僕は立ち上がる。


『肉食獣みたいにマスターのタルトを美味しそうに食べてますね。いいないいなー』


 このままここにいると残りも狙われかねないので撤退で間違いないだろう。


『残りのタルトはどうするんですか?』


 イブの問いかけに僕は最初から決めていたことを言う。


(そりゃもちろん。ロベルト達に差し入れするのさ)


 そのために特製タルトを作ったのだ。

 僕が調理室を出ていくと…………。


『そういえば、あのタルトは全部で7切れで居たのは6人ですよね。最後の1切れはどうするんでしょうかね?』


 出ていくと同時にDランクモンスター並みの殺気が調理室から漂い始めるのだった…………。


 


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