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ダンジョンコア

「何だここ?」


 まるで神殿のような場所に出た。

 その最奥まではなだらかな階段が山型に続いていて、結構な距離がある。

 開けた場所で他の生物の動きは無く、これまで気張っていた状況が嘘のように僕は安堵の息を吐く。


 見習い探索者が一人でダンジョンに潜って生還できる可能性は決して高くない。

 むしろ生存率で考えるとほぼ絶望的と言ってもいいぐらいだ。


 だから、僕もここに落とされた時、おぼろげに「ああ。死ぬのかな?」とも考えた。


「使えない恩恵だと思ったこと謝らなきゃな」


 なまじ魔法や武器に特化した恩恵でなくて良かった。

 それらの特化系は鍛えるのに時間が掛かるのだ。


 将来的にこのぐらいのダンジョンを制覇できるかもしれないが、現時点では死ぬだけ。

 そう考えるとルームは戦闘能力こそないが優秀といえる。


 セレーヌさんが見せてくれたアイテムボックスのスキルは中の容量が決まっている。その上生物は入れないらしい。


 その点僕のルームは魔核で空間が拡張できる上、生身の人間が入っても大丈夫なのだ。

 僕自身に戦闘力が無くても、ダンジョンが多数存在するこの世界では役に立つ。


 大量の物資を運び込む事で大人数でのダンジョン攻略が可能になったり、ルーム内で休む事でモンスターを警戒する必要なくきっちりと身体を癒す事も出来るのだ。


「……っと、そういうのはここを出てからだな」


 考えに浸ってしまったが、まずここから出なければならない。

 こういう雰囲気が変わった場所にこそ何かがあるはず。


 僕が辺りを見渡すと階段を上った先に台座のようなものを発見した。

 取り敢えず他に何も見当たらないので、そちらに向かうと、


「あった。テレポーター」


 台座の裏には見覚えのある魔法陣が存在していた。

 ダンジョンから脱出する事が出来る魔法陣。先程踏もうとしても踏めなかった。


「やっとこれで脱出できる」


 内心の不安と焦りがあったのか、僕ははやる気持ちを抑えきれずにテレポーターに飛び乗るのだが……。


「あれ? 動かないぞ」


 頬を汗が伝い流れる。

 落ち着いて冷静に考えるんだ。


「これがテレポーターなのは間違いない」


 この世界でダンジョン探索の物語に触れるなら絶対に出てくるのがテレポーター。

 何より先程同じ魔法陣を見ている。


「まて、光ってないぞ」


 そう。先程見た魔法陣は青白い光を放っていた。


「一体どうして…………?」


 考えろ。ここで答えを出さなければ待っているのは死しかない。

 自身を震わせて脳をフル回転させると――。


「ん? その台座に嵌ってるのって……」


 テレポーターの存在で失念していたが台座を見る。


「そうかっ! ダンジョンコアかっ!」


 そこで答えを見つけた。

 ダンジョンのテレポーターはダンジョンコアを抜き取った後、すなわち攻略完了をもって起動するのだ。


 目の前には前世も含めてこれまで見た中で最も綺麗な赤い石が嵌め込まれている。

 この暑いダンジョンを象徴するようなマグマを閉じ込めたような赤。


 恐らくこれがダンジョンコアなのだろう。


 僕は慎重にそのサッカーボール程の石を台座から外す。そうすると――


 ――ブォン――


 後ろで音がしたかと思って振り返る。


「ビンゴッ!」


 テレポーターが起動していた。今度こそ間違いなく帰れるのだ。


「取り敢えず、ダンジョンコアは持って帰るか」


 もう少しゆっくり眺めていたかったが、いつまでもここにいるわけにはいかない。

 僕はルームを開くとダンジョンコアをそこにしまうと、


 テレポーターに飛び乗り今度こそダンジョンを脱出した。


 

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