打ち上げ
「団長。全員武装を解除して縛ったぞ」
目の前には盗賊達が身ぐるみを剥がされた状態でロープに縛られて転がされている。
やったのはトーマスさんと戦士の2人。他のメンバーは盗賊が反撃してきた時に人質にされると不味いので背後に控えている。
「この人達って殺さなくて良かったんですか?」
ダンジョンで強盗をするなんて死刑になっても当然の所業だ。
「ひぃっ!」
盗賊の何人かは意識を取り戻しているのか、僕の発言に悲鳴をあげた。
「犯罪者だから基本的に殺しても問題は無い、だけど生かしたまま連れ帰れば犯罪奴隷としてギルドに買い取ってもらえる」
なんでも、普通の人がやらないような過酷な仕事をやらせるらしい。
「それはそうと、結構良い装備してるんだな」
目の前には盗賊達が身に着けていた武器や防具が転がっている。
反った刀身のシャムシールだったり、バトルアックスだったり……。
盗賊稼業で奪ったものなのだろう。奪われた人達が可哀想だな……。
僕が考えていると……。
「よし、コアも取ったしこいつらを引き渡さないといけないからそろそろ戻るか」
ダンジョン内での処理を終えたトーマスさんがメンバーに声を掛ける。
そこで僕は当初の目的を思い出した。
「そうだトーマスさん。お願いがあるんです」
「ん。なんだ?」
「実はダンジョンコアが欲しくて……。売ってもらえませんか?」
市場を通さないことで安値で買うために僕はこうして同行をしたのだ。
「構わないぞ。金貨60枚でなら売ろう」
「えっ? それだと随分安くないですか?」
コアの店でのランクⅣの買取は70枚。それより少し多く支払うつもりだったのだけど……。
「エリク君の今回の働きがなければ入手できていないからな。問題ないさ」
そう言ってメンバーにも許可をとったトーマスさん。
「ありがとうござます」
こうしてコアは僕の手に収まったのだが……。
「そうだ、今僕金貨が足りないので戻ってお金を作ったら支払いたいんですけど……」
毛皮骨肉店に行けばそろそろ解体も終わっている頃だろう。その報酬と合わせれば支払い可能だと考えていると……。
「なら、あたしはそっちのバトルアックスを売ってくれないか? 今使ってるのより良い品だし」
「あっ、俺もそっちのシャムシールを予備の武器に欲しいんだよな」
戦士の2人が妙な事を言い始めた。
「えっ? 何を……?」
なぜ僕に許可を求めたのかわからない。
僕が疑問を浮かべているのがわかったのか、弓使いさんが言った。
「盗賊なんかの装備は倒した人間の物になる。パーティーを組んでる場合は仲間で分配するけど、今回エリクは荷物持ちとして参加しているからな。規定でダンジョン内の分配に参加する資格が無い代わりに、倒したモンスターのドロップは個人の物になるんだ」
それは探索者ギルドの優遇措置のルールだった。
基本的にレベルにあったモンスターの相手をするのだが、新人に経験を積ませるために先輩方が見守る中戦うことがある。
その時に運よくレアドロップをすると揉め事が起きかねない。なのであらかじめルールが規定されているらしい。
そして、それはモンスターに限った話ではないらしく、盗賊などの犯罪者にも適用される。つまりは……。
「この盗賊達を突き出して得る金もエリク君の物ということよ」
魔法使いさんが当然のように言った。
とりあえず混乱しつつ、街に戻ったら諸々を清算する約束をした。
荷物持ちの報酬と今回の盗賊の売買金。さらにその装備も丸々僕の物になるという事で結構な金額になるらしい。
僕は「皆の力で得たのだから報酬は山分けしましょうよ」と頑固に主張してみせたのだが、誰も首を縦に振ってくれなかったので、そのまま受け取ることになってしまった。
若干「いいのかなぁ」と考えていると……。
『いいんですよ。新しいコアも手に入ったし、その収入で他に色々できそうじゃないですか』
イブの楽観的な言葉を聞いているとそんな気もしてくる。
トーマスさんたちへの感謝は忘れないでおこう。僕はそう考えていてふと、どうしてもやっておかなければならないことができたので、盗賊のリーダーに近寄って行く。
あれから、ダンジョン探索成功を祝って酒場へと繰り出した。
嬉しいことに僕もその打ち上げに呼んでもらえて、そこで楽しい時間を過ごさせてもらった。
トーマスさんからは探索者を続ける上での仲間との信頼関係について。
魔法使いさんからは後方火力の魔法の使いどころについて。
治癒士さんからは全体を見渡す観察眼について。
弓使いさんからはどんな戦局でも冷静に対処するように。
女戦士さんからは武器の取り扱いについて。
男戦士さんからは料金が安くて可愛い女の子がいるお店について聞いている最中になぜか魔法使いさんと治癒士さんが来て話を中断させられた。
とにかく、全員が初心者のためになる話をしてくれた。
そして僕も色々聞かれたので、既に見せている部分についての話をした。
ルーム内からアイテムを自由に取り出せることとか、アカデミー試験でクリーンがいかに役に立ったかなど……。
とにかく楽しい時間はあっという間に過ぎて行き、気が付けば……。
「じゃあ、皆ちゃんと帰れよ」
「ねえ、エリク君。私と一緒に呑みなおしましょうよ」
「エリク君はまだ未成年ですよっ! 私が送っていきましょうか? 宿はどこですか?」
あっという間に時間が経っていて解散になった。
「お前たち、エリクが困ってるだろ」
弓使いさんが間を取りなしてくれる。
その間に僕は皆に頭を下げるとその場をあとにした。




