ダンジョンコアストア
「ここがそうなのか……」
あれから。セレーヌさんに紹介状を書いてもらった僕は地図を片手にその店へと向かった。
最初、セレーヌさんは「もし宜かったら私が案内しますよ」と提案してくれたのだが、あまり僕の用事に付き合わせるのは申し訳なかったので丁重にお断りした。
『ここにまだ見ぬコアが眠ってるんですね』
その代わりという訳では無いが、イブが興奮した声で僕に話しかけてくる。
(頼むから静かにしてくれよ?)
コアが大好きなイブに自重を求めるのは難しいかもしれないが、店内で話しかけられても反応が出来ないから困るのだ。
僕はイブが黙り込んだのを確認すると、豪華な扉を開けるのだった。
「いらっしゃいませ。紹介状はお持ちでしょうか?」
店内に入るなり左右から店員が寄ってくる。
「これです」
それにしても、普通に紹介状を要求されるとは思っていなかった。
世間における低ランクコアの相場を知っておきたかっただけなのだが、セレーヌさんは思っているよりも良い店を紹介してくれたようだ。
店内を見渡す前に、まず奥に続く扉がもう1つある。盗難を防止するためなのか頑丈なセキュリティだな……。
「こ、これはっ!」
「どうしましたか?」
目の前で店員さんがやり取りをする。紹介状を見て顔色が変わったのが分かった。
2人はしばらくひそひそと話をすると……。
「お待たせしました。私が案内させて頂きます」
そう言って奥へのドアを開いた。
「本日はどのようなものをお求めでしょうか?」
そこは、レッドカーペットが敷かれたフロアだった。
壁にはショーケースが置かれており、宝石を取り扱うかのようにダンジョンコアが鎮座されている。
「案内人がつくんですか?」
「ええ、当店は王都で一番のお店ですので。コアの取り扱いには細心の注意を払っております。なので、お客様がいらした場合、案内人をつけるのがルールとなっておりますので」
なるほど、ダンジョンコアは魔道具の動力源としても使える。なので高価なコアを盗んで売り払おうとする輩が行動できない様に監視するのだろう。
それにしても困った。今回は冷やかしできているので買うつもりは無いのだが……。
僕はフロアを見渡してみるとあることに気付く。
「あれ? ここってランクⅠやⅡは置いてないんですか?」
僕が持っているコアの相場を知りたかったのだが……。
「低ランクのコアですか? 取り扱っておりませんね」
どうやら無いらしい。
「じゃあ、一番ランクの低いコアから見せてもらえますか?」
僕はこの店の最低ランクのコアから調査することにした。
「こちら、ランクⅣのコアになります」
案内されたのはお店の一番奥の端。つまり一番目立たなくそれゆえ人がこない場所だった。
「へぇ……。これって色ごとに属性が決まるんですよね?」
大きさは僕が持つ火のコアと同じだ。火のコアは赤なので、目の前にある赤いコアは僕の物と同じ属性で間違いないだろう。
「ええ、ランクⅣには主に火・水・風・土の4種類がございますね」
それぞれ赤・青・緑・黄のコアが飾られていた。
例えⅣがこの店の最低ランクとはいえ扱いが丁寧だ。
「ちなみに、こちらはいくらするんですか?」
場合によっては買えなくも無いか……。
「こちらは金貨100枚ですね」
『へぇ、ロベルトさん達40人分ですねぇ』
(その計算方法やめろっ!)
一瞬納得しかけたが、よく考えると失礼なのでイブに説教をする。
「こちらは貴族様が贈答品としてよくお買い上げされています」
「……なるほど」
店員さんの説明を完全に聞き流すと僕は考える。
こうしてコアを買ってしまえばダンジョンに潜る必要なくザ・ワールドを強化できるんじゃないかと思ったのだが……。
通常、一般家庭での1月あたりの収入は金貨4枚なのだ。だからもし町や村で一般的な仕事に就いた場合、コアを購入するまでに最低2年は必要な計算になる。
一方、冒険者や探索者。その他生産系などのダンジョンとたずさわる仕事の人達は収入がでかい。
一度の冒険やダンジョン探索でモンスターの素材やらコアや魔道具などを得てくるので金貨100枚なんて持っているのが当たり前。
だが、彼らは装備品や道具に金がかかるので、大金があってもあっという間になくなってしまう。
なので、命がけで獲ってきたダンジョンコアの価格が高くなるのは当然と言える。
「ちなみに、火のコアっていくらで買い取りしてますか?」
『マママ、マスター!?』
イブの驚く声が響く。
「今ですと金貨70枚でしょうか?」
なるほど、7掛けといったところなのか……。
いざとなればもう少し安くできそうだな。
ランクⅣでこれならⅤからⅦなんて桁が違うのだろう。
取り敢えず、当面は手持ちのコアで何とかするとして……。
「あの? あっちのコアってなんなんですかね?」
僕は店の中央に位置する場所に飾られた巨大なコアを指差した。




