食事処
『3日後が楽しみですねマスター』
毛皮骨肉店を出るとイブが話し掛けてきた。
(あまり無理しないで欲しいところだな)
1体の解体にどれだけ時間が掛かるのか正確なところは分からない。あれだけ大型の刃物を振るうのだから体力が必要だろう。
イザベラさんはそれほど体力があるようには見えない。その上で僕の期待に応えようと無理をしている可能性もありそうだった。
そんな事を考えながら歩いていると結構な人数とすれ違う。
ここ王都では冒険者や探索者の学校が多数存在する。
そして、学生の身分でもダンジョンランクⅠとⅡにはパーティーを組めば挑む事が出来るのだ。
そんな訳で、僕よりも少し年上の男女達が頻繁にダンジョンに潜っているため、大通りは賑わいを見せていた。
『マスターもダンジョンに潜りたかったらパーティーが必要なんですね』
基本的に学生でも探索者ギルドに登録は出来る。だが、どれだけ実力があろうがダンジョンランクⅠには4人以上のパーティー。ダンジョンランクⅡには5人以上のパーティーでなければ入れない。
そして、学校を卒業して初めてダンジョンランクⅢに6人以上のパーティーで挑めるのだ。
『そう考えると、無人島でロベルトさん達を助けて良かったのかもしれませんね』
教本に書かれているダンジョンに潜るルールを見た際に、誰か一緒にダンジョンに潜ってくれる人間が必要になると考えていたのだ。
(まあロベルトなら一緒に潜っても楽しいかもね)
いずれにせよ学校が始まってからの話だ。それに……。
(イブの力なら出来たばかりのダンジョンや未発見のダンジョンなら潜れるしね)
実際に無人島でもイブが発見したダンジョンに潜ったのだ。パーティーを組まなくても絶対に入れない訳ではないのだ。
そんな事を考えている内にイザベラさんに紹介された店へと到着した。
「お待たせしました。オーク肉のステーキにダイアウルフの舌の香草焼きとサラダです」
鉄板から「ジュージュー」と焼ける音がして美味しそうな香りが立ちのぼる。
無人島では魚と野菜がメインだったので溢れ出す肉汁に僕は目を奪われてしまう。
早速ナイフで肉を切ると抵抗する事無くスーッと切れた。
『戦った時はもう少し硬かったんですけどね』
オークを解体するときのコツがあるらしく、上手く解体しなければ硬さが残ってしまうらしい。このステーキは合格点のようだ。
「美味いっ!」
久しぶりに食べる肉に舌鼓を打つ。
続いてダイアウルフの舌に手が伸びる。
「こっちはコリコリしてるんだな」
香草がダイアウルフの癖の強さを消したおかげで食べやすくなっているようだ。
僕が2つの料理を次々に口に運んでいると……。
『ううう、いいなー。イブも食べたいです』
いくら幻惑魔法で姿を作れたとしても無理だろうな。
僕はそんな事を考えながらサラダに手を伸ばすのだが……。
「……いまいちだな」
改めて自分の【畑】から採れる野菜が素晴らしい物だと理解した。
恐らくだが、売り出せばあっという間に人気がでるのは間違いない。
『そう言えばロベルトさんにお土産持たせるの忘れてましたね』
何となく良い雰囲気で別れたので忘れていた。
今度会う時にでも渡してやらなければいけないな。
そんな事を考えつつサラダを食べ終えた。
『この後はどうするんですか?』
店を出ると時刻は丁度夕方を回ったぐらいだった。
日中に王都に戻ってきたので、結構な時間を過ごした事になる。
ぼちぼち店じまいをしている露店も目立ち始めたので、この時間から何か活動をするのは難しいだろう。
「そうだな……。試験が終わったばかりだし、今日は部屋でゆっくりするかな」
僕はそう言うと裏路地に入り込むとザ・ワールドへと入っていくのだった。




