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アナスタシア王国来訪

 卒業式から一週間が経ち、僕らは盗まれたアルカナコアの調査を行っていた。

 それまでは、なんら有力な情報が一つもなく、いい加減イブとルナの不満が溜まり始めたころ、一つの情報が寄せられる。


『大盗賊ヒルダが予告状を出したみたいです』


 情報を持ってきたのはマリナ。彼女はアナスタシア王国の王女で、今回の予告状を出されたのはアナスタシア王国にいる貴族の屋敷らしい。


『ゴ・ウモンという伯爵家にある特殊な魔導具が狙われているようですよ』


 通信魔導具からマリナの声が聞こえた。彼女は卒業後帰国しており、今はシルバーロード王国で国政をしているらしい。


「わかった、早速そっちに向かうから、ウモン伯爵とのアポイトメントとっておいてよ」


 卒業時には涙を浮かべ、これまでの特訓や修行の話をして、お互いに晴れやかな笑顔で別れを告げたのだが、まさかこんなに早く再会することになるとは思わなかった。


「それにしても、アナスタシア王国にはまだ行ったことがありませんね」


 イブは口元に指を当て思い返すと、訪れたかどうかを思い出す。


「シルバーロード王国の隣だったよね?」


 僕はルナに話を振る。彼女の故郷であるシルバーロード王国と、マリナの故郷であるアナスタシア王国は隣り合っていて同盟を結んでいると聞いたことがある。


「ん、でも、シルバーロード王国には寄らなくていいから」


「ははぁ、流石のルナさんも、マスターとのことでアルテミス女王に突っ込まれたくないんでしょう?」


「それは、僕も嫌なんだけど……」


 一応、アルカナダンジョンを攻略した後で、僕とルナは城に戻り報告を行った。

 その際に、ルナがどうしてもというので、現在僕にプロポーズしていると話を通していたのだ。


 僕としても、もしかするよ将来の義母になるかもしれない人物なので、現状は顔を合わせ辛かったりする。


「ま、まあ、まずはヒルダの件を解決する方が先決だし、早く到着して話を聞ければそれなりの警備体制を敷くこともできるでしょう」


 すべてはヒルダを捕まえてから考えればいい。

 僕はそう纏めると、二人を連れ、アナスタシア王国へと向かった。





「エリク、着たのですね」


「ん、マリナ久しぶり」


 転移と飛行のスキルを駆使して、最短でアナスタシア王国に到着した僕らは、国境の門に到着するなり、豪華な馬車に乗せられて城へと連れてこられた。


 この国ではルナが有名と言うのもあるのだが、僕自身の顔もなんだかんだで売れてきている。


 よくある、いちゃもんなどの手間が省けるのは嬉しいが、豪華な調度品や美術品が並ぶ国賓室はどうにも落ち着かない。


「連絡した時はモカ王国だったのですよね? 相変わらずとんでもないスピードできましたね?」


「マスターの御力ですから」


「エリクだからね」


「おいまて、二人とも。二人が風のバリア張ったり転移スキルを拡大したからここまで早く着いたんじゃないか!」


 なんでも僕のせいにしないで欲しい。規格外なのはこの二人も一緒なのだから。


「それにしても……」


 僕は改めてマリナを見る。

 別れてから数週間が経ち、やや懐かしいという気がしないでもないのだが、どうにも彼女の様子が気になる。


「どうしましたか、エリク?」


「いや、何か変わった?」


 これまでに比べ、妙に目を惹くようになっている気がする。


「もしかして太ったとか?」


「そんなわけないでしょう!」


 マリナはルナを睨みつけた。


「いや、体系までは気にしてないけど……」


 ルナの余計な一言で、マリナが僕を見てくる。その視線には「あなたまで変なことを考えてませんよね?」と語っている。


「ふーむ、他に違うと言えば衣装くらいでしょうかね?」


 イブがポツリと呟く。


「あっ、そうか! 綺麗になったんだ!」


「きっ!?」


 これまでは、剣の特訓であったり、戦闘訓練だったりと、武器や防具を身に着けていたマリナだが、故郷に戻ったからかそのような物騒な物を持たなくなった。


 着るものもドレスに代わっており、化粧までしている。

 おそらく、王族専用の侍女たちに全身の管理をされており、その結果、これまでの美しさに更に磨きがかかっているのだろう。


 改めて、僕はマリナを見る。これまでも美人だと思っていたが、まさかこんなに綺麗になっているとは思わなかった。


「あの、エリク……そのようなセリフを言われると、流石に照れるのですが……」


「マスターの狙いは実はマリナさんでしたか!!」


「エリク……でれでれしない!」


 マリナが慌てた様子で、イブが何やら得心を得たように頷いている。


 ルナはあからさまに不満げな表情をして、頬を膨らませていた。


「いや、客観的な事実を言ったまでだし、僕とマリナの関係は師匠と弟子。それ以外ないでしょう?」


「まあ、そうですね」


 マリナが肯定する。


「どうだか、たまにマリナはエリクのことを好色の目で見ている」


「イブもそれ知ってます。マリナさんみたいなため込む人の方がむっつりなんですよね」


 などと、二人が意味不明な言葉でマリナを追い込んでいると……。


「と、取り敢えず、今はウモン伯爵の下へ案内します」


 マリナは会話を打ち切ると、そう告げるのだった。

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