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日常生活への復帰③

「とにかく、急いで確認をしないと……」


 あれからマリナがぶっ倒れるまで剣の稽古をした僕は、サクラがドッペルゲンガーにどのような指示をしたのか確認した。


 結果、タックに関しては非人道的ともいえる指導を行っていたことが発覚し、僕はサクラを窘めた。


 理由を聞いてみると、子供の出来心だったらしいので、今回は強く言うことはしなかったが、他のメンバーへの接触にも不安を覚えたのだ。


「あら、エリクさん。こんにちは」


 歩いているとミーニャが現れた。


「やあ、ミーニャ。元気にしてるかな?」


 彼女はとても機嫌がよさそうに僕へと近付いてくる。


「ええ、お蔭様で。健やかに過ごしています」


「それは良かった」


 少し距離が近い気がするが、マリナの時とは違い、ミーニャは満面の笑みを浮かべている。


 流石にサクラが分別のつかない子どもとは言え、連続でやらかす方が難しいだろう。


 僕は、ミーニャに関しては問題なさそうだなとホッと胸を撫でおろしていると……。


「ところで、エリクさん。今日はまだ眠くならないのでしょうか?」


「うん、さっきまで稽古をしていたからね。ちょっと疲れてはいるけどまだそんなに眠くないかな?」


 この後、他の人間の下を訪ねなければならないと考えていると、ミーニャが質問をしてきた。


「そうですか、眠くなったら行ってください。あなたのためにいつでも膝をあけていますので」


「それって……、どういうことかな?」


 嫌な予感がしたので聞いてみた。


「エリクさんが言われたのではないですか、私の膝枕でしか眠れない。いつでも開けておくようにと」


 怪訝な表情で僕を見るミーニャ。どうやらサクラはここでもやらかしていたようだ。


「ちょっと、急用を思い出したから!」


「あっ、エリクさん。いつでも膝を空けて待ってますからねっ!」


 背中にミーニャの声を受けた僕は走り出した。



 それから、アカデミーを歩いてみると、多くの女子生徒たちに囲まれた。


 皆が口を揃えて「デート楽しみです」などと口にしていた。


 アカデミーを徘徊させていたドッペルゲンガーの制御が甘かったらしく、やつは次から次に女生徒をデートに誘っては学園生活を満喫していたらしい。


 僕は頬を引きつらせながら彼女たちに応対して、ようやくすべてのスケジュールをこなすころにはすっかり日が暮れてしまっていた。


「や、やっと落ち着いた……」


 それにしても妙だ。サクラに確認した限りだと、アカデミーを歩き回るドッペルゲンガーには問題がなかったという。


 複数のドッペルゲンガーを同時に操っていた以上、完全に見張ることもできなかったのだろうが、女生徒との約束が多すぎる。


 まるで誰かが意図的にやったかのような気がしてならない。


「とにかく、一度、ゴッド・ワールドに戻って休まないと」


 精神的に疲労している。僕がゴッド・ワールドの中に入ろうと入り口を開くと。


「エリク、待っていた」


「マスターお待ちしておりました」


 入口の前にはルナとイブがいて、濁った瞳を僕に向け笑みを浮かべていた。

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