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旅行の誘い

 目の前ではサクラがメアにもたれかかって眠っている。


 腕にはカイザーを抱き、肩にキャロルを乗せている。


 三匹ともサクラになついており、今ではゴッド・ワールド内のどこにいてもサクラについていた。


 あどけない顔をして眠る彼女を見る。


 鮮やかな桃色の髪を見て、過去に居た世界の花を連想した。名前が必要だったので咄嗟に浮かんだ言葉を口にしたが、直感のわりによく似合う名前を付けたものだと感心する。


「これで二つ目……」


 手に入れたアルカナコアのことを考える。


 最初に手に入れたのは【ⅩⅦ】の刻印が刻まれた【ザ・スター】だ。


 僕の恩恵の【ザ・ワールド】を【ゴッド・ワールド】へと進化させ、ダンジョン作成を可能にした。


 さらに【メテオ】という地形すら変えてしまう魔法を使うことができる。


 そして今回手に入れたのは【ⅩⅤ】の刻印が刻まれた【ザ・デビル】だ。


 魔力をコアに写し取ることで記憶・能力まですべてコピーした本人と寸分違わぬ存在を生み出せる。


 使い方次第では国を亡ぼすことも、世界を支配することもできるだろう。


「もし、すべてのアルカナコアを手に入れたらどうなる?」


 たった二つでこれなのだ。他のアルカナコアに秘められた力はどうなのか?


 今のところ、ダンジョンコアから力を引き出せるのは僕の恩恵【ゴッド・ワールド】のみだが、同じような能力の持ち主が生まれない保証はない。


「進むべきか、それとも踏みとどまるべきか……」


 過ぎた力は身を亡ぼす。僕はサクラを見つめながら悩み続けるのだった。








「えっ? キリマン聖国に旅行だって?」


 アンジェリカが唐突に切り出してくる。


「そうです、エリク様どうですか?」


 サクラが生まれてから数カ月が経過した。僕らはアカデミーの三年に進学していた。


「ええ、ロベルトを含む三年生は騎士団試験やらで忙しいみたいですが、エリク様は今のところ特に予定もないとお聞きしているので」


 アカデミーも三年になると段々とピリピリし始める。


 基本的にアカデミーを卒業した人間は優秀なので、城勤めや、街中でも良いところに勤めることができる。


 だが、それには試験がある上、人気の職場は競争率が高いため採用枠が決まっている。


 確かロベルトは近衛騎士団に就職を希望しており、数カ月の間は試験で様々な場所へ赴くとか言っていた。


「私は王国を継ぐ予定ですので、特に就職活動はありません。エリク様も暇でしたらどうかとお誘いしたのですが……」


 胸元に手を当てて確認してくる。緊張しているのか顔が赤い。


「キリマンか……」


 二年前に聖女として神殿に就職したセレーヌさんを思い出す。確かキリマンにはアレがあるという話だったか……。


「いいね、僕も丁度一度行ってみたいと思っていたんだ」


「そ、それじゃあ……」


 肯定的な言葉を告げるとアンジェリカは顔をぱぁっと綻ばせた。


「他に誰を誘おうか、ルナとかマリナにタックは他国の人間だから就職しないだろうし、ミーニャさんも誘えばついてくるかな?」


 僕がそんなことを考えていると、いつの間にかアンジェリカが前に立ち両手を僕の肩に置いた。


「で、できれば今回は二人が良いです」


「う、うん……アンジェリカがそう言うなら」


 その素早い動きに驚いたこともあるが、普段らしからぬアンジェリカの様子に僕は気圧されてしまい、首を縦に振った。


「ほ、本当ですかっ!? 後から皆さんが来るとかなしですからね?」


 まあ、確かに思い返してみると、あの連中が一緒では休まる時間がない。


 目を離せば物を壊したり、喧嘩を吹っ掛けたり。はたまたトラブルを引き寄せたりするから。アンジェリカの提案は、たまにはゆっくりしたい僕にとっても良い落としどころだった。


「それでは、エリク様。私は父上と母上の許可を貰いに王城へと向かいますので」


「うん、わかった。僕は旅行の準備と観光名所の確認とかしておくから、またね」


 アンジェリカは上機嫌で馬車に乗る。僕はというと、他の連中に気取られないようにするための対策を練るのだった。

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