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【書籍化】ダンジョンだらけの異世界に転生したけど僕の恩恵が最難関ダンジョンだった件【コミカライズ】  作者: まるせい


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マーモ皇帝

「なっ……お前はっ!?」


 アルガスの驚き声が会議室に響く。目を大きく見開き、口を開けパクパクとさせている。


 隠し通路から現れた人物は周囲を見渡すとそれぞれ自分を見ていた人間と目を合わせる。そしてゆったりとした動きで歩くとエリクの隣に立った。


「ブルマン帝国の皇女ミーニャさまです」


 エリクがそう口にすると、ミーニャはお辞儀をしてみせた。


「ご紹介にあずかりました。ブルマン帝国マーモ皇帝の娘、ミーニャです。お見知りおきを」


 ミーニャが顔をあげると、皆は唖然として彼女を見ていた。

 宝石を散りばめたシルクのドレスは素晴らしく、普段メイド服を着ていた時からは信じられないほどに彼女の容姿を引き立たせている。


 その所作からは気品が感じられ、周囲の人間はその美しさにしばらく見惚れていた。


「ふっ、ふざけるなっ! 突然何を言い出すっ! ミーニャが皇女なはずあるかっ!」


 アルガス宰相は顔を真っ赤にしてミーニャを怒鳴りつけた。突然現れて名乗りを上げたミーニャの存在に動揺している。


「別にふざけてなんていません。彼女は確かにこの帝国の皇女ですよ?」


 エリクは表情を変えることなくアルガスの言葉を否定した。


「私はそのような話を皇帝から聞いたことがない!」


「あれ~? でもおかしくないですかね?」


 ソフィアのからかうような声に苛立ちを募らせる。アルガスは青筋を浮かべ、ソフィアを睨みつけた。


「弱みを握ってミーニャさんを脅して、エリク先輩に抱かれてこいって言ったのアルガスさんですよね?」


 その瞬間、アルガスの表情が強張った。

 病気の皇帝の命を握ることを材料にミーニャに命令をしていた。その事実をソフィアから指摘されたからだ。


「そのようなことを……本気で言ったのか?」


「最低ね」


「これは大問題だな……」


 アーサー王とアルテミス王女、そしてアレス王が眉根をしかめる。


「ち、違うんですっ! すべてはそこの女の戯言だっ!」


 ここにきて、ミーニャがエリクにすべてを話したことにアルガスは思い至った。

 もしそうだとすると自分の企みがバレたことになる。


「大体、この女が皇女だと? それこそ何の証拠もないではないかっ!」


 アルガスは怒鳴りながらも冷静に頭の中で考えていた。

 ミーニャが裏切ったのは誤算だった。彼女は皇帝の命という鎖で縛っていたので反抗できるはずがないと高をくくっていたからだ。


 ミーニャが皇族である証明が可能なのは実の父親であるマーモ皇帝のみ。母親は既に死んでいるし、仮に生きていて証言したとしても真実とは判断されない。


 既に皇帝が死亡している以上、その血筋を保証できる人物はこの世に存在しない。


 アルガスは語気を強めるとミーニャを睨みつけた。


「貴様。よくもでたらめを申したな! 即刻処刑にしてくれるわっ!」


 だが、これまでの口ぶりからしてエリクとソフィアが無策とは考えづらい。ミーニャから情報を引き出し、自分を陥れることなら可能。

 これ以上しゃべらせるのは危険と判断し、口を封じることにした。


「いいんですかね?」


 状況を読めていないのか、エリクののんびりした声が聞こえる。


「言っておくが、ミーニャは帝国の国民だ。煮るのも焼くのも私の裁量次第なのだ!」


 アルガスは帝国の宰相。つまり帝国内で二番目に偉い立場だ。


「私が最高権力者だ。異を唱えることが出来る者は存在しない。私が処刑だと決定したらそれは確実に実行される」


 そして、帝国法により罰が決まってしまえば他国の人間では手の出しようがない。


「そ、そんな無法が許されるとでも思ってるんですか?」


 マリナがアルガスに食ってかかる。


「許すもなにも、皇族詐称は死罪と決まっている。私はしかるべき手順に従っているまでだ。貴女の国では他国の法に介入することが許されるのか?」


「くっ!」


 悔しそうな声が漏れる。王族であるマリナはそれが越権行為であると理解していた。


 俯いているため、ミーニャの表情は伺えない。

 マリナを含め、全員を黙らせたと判断したアルガスは笑みを浮かべるのだが――


「ほぅ。貴様が最高権力者? 随分と偉くなったものだな」


「なんだとっ! もう一度言ってみろ!」


 振り返って声の主を怒鳴りつけたアルガス。その表情が徐々に強張ってくる。


「ば……ば、かな……死んだはず……では?」


「ブルマン帝国皇帝マーモの名において命ずる。アルガス、貴様を処刑する」


 全員が新たに登場した人物に注目する中、無慈悲な宣告がアルガスに降り注ぐのだった。

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