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準備期間

「それにしてもあの時の宰相の顔といったらなかったぞ」


「ええ、本当に。エリク君は良い仕事をしますね」


 アレスさんとアルテミスさんはスッキリした笑顔を僕へと向けた。


「別に僕は普段通りに行動しただけなんですけど……」


 あれから、1週間後にアルカナダンジョン攻略に向かうことを決めるとその場は解散になった。


 そんなわけで、親交のある王族たちが集まってこうして話をしている。


「かかか、ギガンテスを吹っ飛ばしておいて普通とは言わねえぞ」


 バチルスさんがいつものように笑うと。


「それにしても、どの子も大きくなるもんだな。まさかその年でSランクモンスターを倒せるようになるとは」


 アーサーさんがアゴに手をあてて感心した様子でマリナたちを見ていた。


「すべてそこにいるエリクとイブのせいです」


「ああ、奴らのしごきに耐えたからだよな」


「……まさに地獄だった」


「そこは普通、僕らのお蔭って言わない?」


 身体を震わせる三人に僕は突っ込みを入れた。


「それにしてもイブ思ったんですけど」


「ん。どうした?」


「確かにタックさんたちは強くなりましたよね。でも現時点ではアルテミスさんやアーサーさん、バチルスさんの方がまだ強いと思うんです」


「そりゃあな」


「そう簡単に子供に負けるわけにはいきませんもの」


「追いつくには100年はええよ」


 イブの言葉にまんざらでもなさそうな返事をした。


「王族の皆さんが協力してアルカナダンジョン攻略を目指せばどこか1つぐらい制覇できたんじゃないですかね?」


 確かに。この世界の王族は強い血筋を取り込むことで子孫に強い力を継承してきた。


 世界最強のパーティーがあるとすればそれは王族同士で編成したパーティーだろう。


「俺たちもできればそうしたいがな」


「できないのですか?」


 イブが首を傾げると……。


「そもそも、バチルスさんたちは国を纏める立場の人間だからね。それぞれがいくら強かろうと失うリスクがあるなら攻略に参加できないよ」


「うむ。エリク君の言う通りだな。国を離れている間に他国から攻められる可能性もあるし我々は攻略に参加できる立場ではない」


 アーサーさんが頷く。


 この3人は良好な関係を築いているようだが、実際に攻略するとなると各国のバランスであったり陰謀を警戒しなければならなくなる。


 アルカナダンジョン攻略で注意しなければならないのは決してダンジョンそのものだけではない。


「ちょっとまて。それだと俺たちも駄目になるんじゃねえのかよ?」


 タックが首を傾げると……。


「かっかっか、安心しろ。もしお前が戻ってこなくてもその時はタニアに婿を取らせて魔王の座を継がせるからよ」


 タニアというのはタックの3つ下の妹だ。何事も力技で片付けようとする兄に比べて知恵を巡らせるのが得意で、現在は魔国アトラスでその手腕を振るっているらしい。


「うちもアルマがいるから平気よ」


 アルテミスさんが同じように呟く。アルマというのはルナの妹だ。


「アナスタシアは元々ジェイクがいるからな」


 アーサー王もマリナの弟の第一王子の名を出す。


「ひでえな、俺たちが失敗する前提なのかよ」


 迷いのない返答にタックは眉をよせるのだが……。


「別にお前たちの失敗を願っているわけじゃねえよ」


「怪我をしないで戻ってきてくれるに越したことはないしな」


「それにエリク君がいれば失敗しても命は守ってもらえそうだもの」


 三人の親からの瞳を受け止める。そこまで信頼されたら答えないといけないだろう。


「安心してください。タックたちは特訓のお蔭でそう簡単に殺されませんから」


「なんだったら、残る準備期間で鍛え直したらどうでしょうか? 先程マリナさんも言ってましたからね。私たちに勝てるぐらいじゃないとアルカナダンジョンに入れないって」


「えっ……?」


「そうだね。マリナの意気込みをかって試験をしてあげないと」


「ちょ、ちょっと!?」


 焦り声を浮かべるマリナに僕は笑って見せると。


「冗談だって」


「……あんたたちの冗談は本当にわらえないのだけど」


 心底疲れた表情をした。


「ところで、一つ疑問が残ったのですけど……」


「うん。どうした?」


 イブは唇に手をあてると、


「タックさんたちが強いのは王族だからというのもあるのはわかるんですよ」


「そうだな。これまで取り込んできた優秀な血のお蔭というのは認めよう」


 イブの言葉にアーサーさんが頷く。


「だとしたらそんなタックさんたちに引けを取らないミーニャさんって一体なんなんですかね?」


 イブの質問に答えを返せる人間はその場にいなかった。



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