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第215話モンスターボックス

 帝国の修練場はコロシアムのような半円の建物だった。

 天井からは空が見え、夜を過ぎているので現在は星が見える。


 アルカナダンジョンのスターを思い出す作りになっている。


「さて、ここが修練場だがまずルールについて説明をさせて頂こう」


 アルガス宰相はいやらしい笑みを浮かべながら話し始めるが周囲はざわついたままだ。


 無理もない。突然このような場所に連れてこられて試験をするというのだから。

 一応僕らは各国の代表探索者としてここにきている。


 なのに帝国の勝手な言い分で試験をするというのはおかしくないだろうか?


「俺たちの雇主はそれぞれの国であって帝国さんじゃねえ。なんの権利があってふるいにかけるつもりなんだ?」


 そのまま説明を受け入れる気が無かったのか、1人の探索者がアルガス宰相に意見をした。


「おやおや、これは私なりの親切のつもりなのだがな。君たちがこれから挑むのはかの悪名高きアルカナダンジョンなのだぞ。半端な実力の者が入ったところで犠牲が増えるだけ。今なら試験に落ちたという言い訳のお蔭で命を無駄にすることなく逃げられると思ったのだがな?」


 アルガス宰相はそう言うとその場の全員を見渡す。


「とはいえ、強制できるわけではない。この程度の試験も通らぬ探索者がアルカナダンジョンに入って無事で済むとは思えないが、試験を免除して欲しければ構わぬよ。そのような雑魚はモンスターの餌になるだけだろうからな」


 皆の目つきが変わった。


「ざけんじゃねえっ! 試験だろうと何だろうと受けてやらぁ!」


 プライドを揺さぶられた探索者たちはアルガス宰相の挑発に乗るのだった。





「それでは試験のルールを説明する」


 改めてアルガス宰相よりルールの説明がされる。


「これは古代文明が残した魔法具でその名を【モンスターボックス】という」


 目の前には黒い箱があり、そのところどころにダンジョンコアが散りばめられている。


「こいつは起動すると一定時間の間モンスターをその場に出現させることができるのだ」


 僕のゴッド・ワールドにおけるモンスター召喚みたいなものだろうか?

 あの箱の外にダンジョンコアが嵌っていることから原理は同じなのかもしれない。


「出てくるモンスターは完全にランダムだ。Fランクモンスターが出てくる場合もあればSランクモンスターが出てくるときもある」


 非常に面白そうな魔法具なので是非ゴッド・ワールドに欲しい。


「今から順番にこの中から出てくるモンスターと戦ってもらい、見事倒せれば合格とする。どうだ? 簡単な話だろう?」


 その説明に皆がほっとした様子をみせた。

 なんてことはない。低ランクモンスターの方が種類が圧倒的に多いのだ。普通に試験を受けるなら低ランクモンスターと戦う確率が高い。


「なんでぇ、そんなことか。ならまずは俺からだな。さっさと合格を決めさせてもらおうか」


 先程アルガス宰相に噛みついていた探索者が名乗りを上げる。


「ほっほ、威勢がいい事だ」


 アルガス宰相は箱から離れていく。その前には帝国兵士たちが立ち守っている。

 これから召喚されるモンスターが向かわないようにしているのだろう。



「それでは起動をするので健闘を祈りますよ」


 アルガス宰相の言葉と共に試験が開始されるのだった。





 モンスターボックスから煙が上がり始める。

 煙は散ることなく前に集まり始めると次第に形を作り始めた。


「へぇ、随分と面白い魔法具だな。どんなモンスターだろうと瞬殺してやるよ」


 探索者の男が剣を構えている間にも煙がどんどん出てくる。そして…………。


「あれは。Aランクモンスターのサイクロプスですね」


 どうりで随分と長く煙がでていたわけだ。煙が晴れると5メートルはある1つ目の巨人が立っていた。


「ふざけんなっ! いきなりこんな奴が出てくるとかおかしいだろうっ!」


 サイクロプスから距離を取ると探索者はアルガス宰相に怒鳴りつける。


「はっはっは。これはおかしなことをいう。あなたは実戦でもそんな言い訳をするのですかな?」


 アルガス宰相は高笑いをすると探索者をあざ笑って見せた。

 そんな彼らを見ていると…………。


「まるでエリクみたいだな」


「ええ、私もそう思いました」


「見ているといたたまれない」


 何か苦い思い出でもあるのかタックとマリナとルナが悲しそうな目をした。


「いや、流石にあそこまででは……え? なんで皆僕から目を逸らす?」


「実際似たようなこと言ってましたよ?」


 イブが楽しそうに首を傾げると僕を覗いてくる。いや、まあ……アルガス宰相の言うことも間違ってないしね。今後は言い方に気をつけようと思いました。


『ガオオオオオオオオオオオオオオオッ!』


 サイクロプスはまる――棍棒を振り上げると探索者を攻撃し始めた。


「ちょっ、くそっ!」


 流石はこの場に呼ばれるだけはある。サイクロプスの攻撃を避けて見せる。


「こんな奴にやられてたまるかよっ!」


 探索者は剣を振るう。だが…………。


「思っているよりもいい動きですね。普通にAランク相当のままでは?」


 巨体のわりには素早い動きだ。探索者の攻撃もそれほど悪くはないが、元々パワータイプなのか速度がない。

 相性の問題もあるのだろうが…………。


『グオオオオオオオッ!』


「ぐはあっ!!!」


 間合いをはかりきれなかったらしい、棍棒の直撃を受けて吹き飛ばされた。


「やれやれ、どうやらここまでのようですね」


 サイクロプスの姿が消える。どうやら敵を倒したらいなくなるらしい。

 地面には気絶して倒れている探索者がいる。


 次は自分がああなる番かもしれない。探索者たちの空気が張り詰めていく中……。


「さて、次は誰がチャレンジしますかな?」


 アルガス宰相は楽しそうに聞くのだった。



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