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親睦パーティー

 ガヤガヤと喧騒が沸く中、パーティー会場は異様な雰囲気が漂っていた。


 今回のパーティー会場でもある『フェンリルの間』は帝城でも7番目に格式の高い場所らしく、ここでのパーティーを申請できるのは帝国でも軍団長クラスだと警備している人間が教えてきた。


 まるで「貴様らのような下賤の輩に使わせてやるのは勿体ない」とでも言いたげな目をしていた。


「せんぱーい。ソフィアたち見られてますよぉ?」


 軽い声を出すとイブが僕へと近寄ってきて耳打ちをする。

 その視線は周囲の参加者たちを見ていて笑顔なのだが、不躾な視線で不機嫌になっているのが僕にはわかった。


「それにしても、やっぱり帝国の調度品は素晴らしいね」


 ここは7番目のパーティー会場というのだが、飾られている家具や壺にシャンデリアは超一流で間違いない。


 僕のリゾートホテルに使う調度品も品の良さをかってわざわざ帝国から買い付けたぐらいだ。


 対外的には最近振るわない帝国ではあるが、芸術という分野においてはこの世界でも一つ飛びぬけているようだった。


 そんなことを考えていると…………。


「よお。やっと来やがったな」


「数週間会わなかっただけなのに久しぶりだと感じますね」


「エリク、イブ。久しぶり」


 現れたのはタックとマリナとルナ。


「やあ、皆は国際会議の方にも参加してたんだっけ?」


「ああ、実に退屈な会議だったからな。代わって欲しかったぜ」


「ええ、あの時間を訓練にあてたかったです」


「私は寝ていた」


 内容について教えて欲しかったのだが、王族の守秘義務があるのだろう。それぞれ濁した言葉を口にする。


 3人が僕とイブに話しかけたことでますます周囲の注目を浴びる。


「マスター。皆『なんであいつが王族に話しかけられているんだ』『綺麗な女を囲って羨ましい』とか言ってますよ。やりましたね」


 イブがそっと耳打ちをしてきた。


 別に女を囲ってはいない。イブは僕の大切なパートナーだし、マリナとルナは弟子なのだから。


「ん。どうしたのですか?」


 そんなイブの耳打ちにマリナが反応する。


「いや、遠くで噂している人たちが僕とタックが綺麗どころを囲い込んでるって嫉妬しているらしいってね」


 言いたい奴らには言わせておけばよい。僕が気楽な様子で教えてあげると、


「これでも私とルナは宝石姫と言われて周辺諸国にその名を轟かせているのですよ。羨ましがられても仕方ないじゃないですか」


 そう言いつつマリナは普段以上に気合が入った上品な仕草で笑って見せる。

 周囲の人間たちはそんなマリナに見惚れているようだ。


「なるほど、確かにそういえばそうだったね。2人共綺麗だし」


 ずっと一緒にいたので感覚がマヒしているが、普通はこの2人と話をするのに緊張するのだろう。


「……聞きなれた麗句ですが、エリクから言われると何ともありがたみが無いですね」


「エリクは女心がわからないから」


「まあ、せんぱいですからお2人ともあきらめてくださいね」


 女性陣からの不当な評価に首を傾げる。


「ところで、1つ聞きたいんだけどさ。どうして皆武装しているんだろう?」


 今回のパーティーで正装として普段通りの探索者としての恰好で参加するように言われた。


 なので、格式高いパーティー会場にも関わらず集まっている連中は場末の酒場にでもいるような人間なので違和感を覚える。


「さあな、多分だが冒険者や探索者なんかはこういう場所でのスーツやドレスなんて持ってねえだろうからな。帝国側が配慮したんじゃねえのか?」


「でもそれなら武器は必要ないのではないですか? 帝国側は『戦える恰好で』と指定をしているのですから」


 タックの言葉をマリナが否定してみせる。


 確かにその通り、服装だけなら納得なのだが、武器の携帯を認めるというあたりに嫌な予感がする。


「そんなことどうでもいい。それよりもエリク。ケーキ食べたいから付いてきて」


 ルナは目を輝かせると僕をテーブルへと誘った。

 恐らく1人になると周りのギラついた目をした探索者たちに話しかけられると予想をしているのだろう。


「わかったよ。じゃあ行こうか」


 ルナを野放しにするという選択肢は存在していない。

 放っておくと男の尊厳を物理的に消し去られた悲惨な探索者がでてきてしまうかもしれない。


 僕はルナをガードするわけではなく、無意味な犠牲者を出さないためにルナに付いて行くことにした。




 それからしばらくの間、僕らはパーティーを楽しんだ。


 初めて味わう帝国料理も美味しく、十分に満足できたし。他国の探索者たちから挨拶もされた。


 中には先程ぶちのめした連中もいたのだが、こちらに関わってくるつもりがないのか距離をおいていた。


 そろそろ結構な時間が経ち、出された料理も減ってきたので解散かなと考えていると…………。


『会場に集まっている各国の探索者の諸君。私はブルマン帝国宰相のアルガスである』


 40代ぐらいの男がステージに現れた。


『諸君らには勿体ない程の帝国料理の数々と会場を提供したが、そろそろ満足していただけただろう』


 何かと棘が刺さるような物言いに招待された探索者たちの顔色が変わる。


『諸君らはアルカナダンジョンを攻略するという名目で集まっているのだが、生半可な実力で参加している者もいることだろう?』


 見下すような視線で会場を見渡すと言った。


『そこで、これからアルカナダンジョンに挑む資格がある者を選抜するための試験を行おうと思う。この場の全員は修練場へと移動してくれたまえ』


 ここにきてなぜ武装してパーティーに参加させられていたのかを全員が理解するのだった。



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