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星降りの夜最終日

「こうなったら三つのクラン合同で戦うしかないですね」


 アークの言葉が響く。

 あれからそれぞれがモンスターを退けたのだが、思いもよらぬ苦戦に多くの戦力を失う事となった。


「私達テンプルウォーリアで残ったのは私とセレーヌだけです」


 フローラはそう言うとセレーヌを見る。

 彼女たちは先のデッドリーポイズンエレメント戦で多くの戦士が戦闘不能になった。


「ロストマジックも魔力が尽きた者が脱落した。残るのは私とそこの小僧。後は数人といったところだな」


 ロレンスの後ろではタックが不敵に腕を組んでいる。


「グランドクロスは私の他に数名の前衛とマリナ様とルナ様が残っているだけです」


 アークのクランもルナの魔法とマリナの剣技が無ければもっと人数が減っていたに違いない。


「……残されたのはここにいる15名だけということですか」


 フローラの声が広がる。

 怪我をしたり魔力が尽きた戦士や魔道士に治癒士が外に出て行ったところだ。

 そして先程、夜が明けるとともに入口が閉まった。

 空を見上げると太陽が輝いているのが見える。


「最後に残された中央の魔法陣だが、まだ動き出す気配はないな……」


 これまでの戦闘の激しさが嘘のようにダンジョン内は静かだ。外周も狭まり、あれだけ多くのモンスター達を召喚してきた魔法陣はただ一つを除いて消滅している。


 中央では一際大きな魔法陣が脈動を始めている。そしてその上には数字が表示されていた。


「恐らくだが、この数字がゼロになった時モンスターが召喚されるに違いない」


 ロレンスが魔法陣を見立てる。魔力を扱うものとして魔法陣内に魔力が集まりつつある気配を感じ取っているのだ。


「つまり、当分はモンスターが召喚されないということか。少しは休めるんですね?」


 アークの言葉に全員がほっとする。

 残された人数は少数。これまでのペースでモンスターが湧いては休息をとる時間も無いのだ。

 態勢を整えられることに安堵するのだが……。


「だが、その分現れるモンスターは間違いなくこれまでで最強」


 考えてみれば当然のこと。これまでは召喚される時間が段々と長くなってきた。

 その度にモンスターの強さは上がっていったのだ。


 6日目の時点では4時間ごとの召喚だった。だが、最終日にある魔法陣は一つだけ。

 これまで最終日を生きて帰った者はいないので、どのようなモンスターが現れるか判っていないのだ。


 周囲が沈み込む中……。


「はっ、今更おじけづくぐらいならさっさと帰りゃ良かっただろうがよ」


 タックがつまらないものを見るように言った。


「だいたい、こうやって人が減ったのは神殿の連中が足を引っ張ったからだろ? それさえなけりゃ魔道士はもっと残せたんだ」


 ロレンスの指示により多数の魔道士がテンプルウォーリアに加勢をした。

 デッドリーポイズンエレメントの耐久のせいで多くの魔力を消耗したのは事実。


 だが、客観的に見てあそこでテンプルウォーリアを見殺しにしてはその先が成り立たなくなる。

 もし壊滅したら次に流れてくる先はロストマジックだったし、更に言うならロストマジックに治癒士が残っていなかったからだ。

 つまり、最終日に進むためには双方の陣営に人が残らなければならなかったのだ。


「あっ、あなたっ! 最低ですっ! 神殿騎士の皆さんはそちらにモンスターを流さないように必死だったんですよっ! それを……」


 その時、黙って聞いていたセレーヌが立ち上がるとタックを非難した。


「んだよ、足引っ張ったのには変わりねえだろうが。そっちの陣営は聖女が二人残るだけだぁ? 仮にも騎士を名乗るのなら命に代えても身体張って守るべきじゃねえのかよ?」


「なっ…………!」


 タックの言葉に顔を真っ赤にするセレーヌ。そんな空気を読んでか読まずかルナがぼそりと声を発する。


「いずれにしても残ったのは15人。退路が塞がっている以上一蓮托生」


「そうですよタック王子。ここで争っても誰も得はしないのです、協調性を持つべきですよ?」


 マリナが窘めるように言うと。タックは舌打ちをする。だが、マリナの言ってる事にも一理がると思った。


「わーったよ。仕方ねえ、あんたらは後ろに隠れてな。守ってやるから」


 マリナやアーク達が前衛を受け持つ以上は中盤を抑えるのがタックの仕事。

 ロレンスを守るついでに二人の聖女も守ることになるのだ。


「あっ、あなたなんかに守ってもらわなくても結構です!」


 売り言葉に買い言葉で答えるセレーヌ。


「全く。最後の試練を前に喧嘩とはそちらの少年は余裕がありますね」


「若さゆえの暴走と言う奴だな。貴様にも覚えがあるだろう?」


 ロレンスの言葉にアークは過去を振り返ると苦笑いをする。


「いずれにせよ今は休みましょう。恐らくですが次にモンスターが召喚された瞬間から私達は一切の休みをとることが出来ないのですから」


 それから協力することを約束した三つの陣営は何かあればすぐ動けるように固まると休息を取るのだった。







「それでは、作戦通りに動いてください」


 アークは後ろを振り返ると全員に向かって言葉を発する。

 あれからゆうに10時間は経過した。魔法陣の数字は減少を続け、間もなくカウントをゼロにする。


 残された15名は交代で休憩をとり、体調を万全に整えてその場に立っていた。

 先程陽が沈み、もうじき星が空に顔をだすだろう。

 その時に数字がゼロとなりモンスターが召喚される。


 誰もが息を飲む中、魔法陣の輝きが増す。そして…………。


「くるぞっ!!」


 誰かの声が聞こえるとともに魔法陣が輝き下から何かがせりあがってくる。


「で、でかい……」


 それは黄金色の鎧をまとった10メートルほどの高さの…………。


「これがアルカナダンジョンのボスなのか?」


 これまで感じたことのないオーラを纏った巨人が姿を現した。




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