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シーソラスの杖

「ふぅ……疲れた」


 旅行初日の夜。僕はベッドへと身体を投げ出すと言葉を漏らしてしまった。


『マスター引っ張りだこでしたもんね。イブはマスターが人気者で嬉しいです』


 本日。大型魔道車で移動ということで、僕は早朝から調理室に籠って車内で食べられるお菓子を作った。

 結果は大好評で、皆の「美味しい」という言葉を聞くたびに嬉しくて表情にでそうなところを何とか抑えていた。


 そのおかげもあってか、話しかけづらい壁のようなものが取り払われ、皆と打ち解けることができた。

 特に3年で実技の優秀者のアークさんや、魔法の優秀者のレイラさん。この2人はアカデミーの休日には有名店に食べ歩きに出るぐらいにお菓子が好きだったらしく、僕らは意気投合して甘味について話をした。


 そうしていると途中でイブから『モンスターがいますね』と警告を受けたのだが、同時にトリスタン先生が振り返った。

 そして「これから訓練を行う」と言われて戦闘に駆り出された。


 そんなわけで大型魔道車を停車し、現れたモンスターと対峙してみると相手はキラーアント。集団戦闘でならCからBランクに相当するモンスターだ。

 倒してよいのなら魔法1発でケリがつくのだが、今回は訓練だとトリスタン先生が言っていた。


 なので僕は他の生徒達の訓練を邪魔するのをやめとこうと思い、サポートに徹することにしたのだ。


 結果はこちらの圧勝だった。

 途中、アークさんやレイラさんなど他の生徒達の動きが悪かったので、思わず口だししてしまったのだが、戦闘終了後「ナイス指揮官」と肩を叩いて褒められた。


 そして本日泊まる宿につくとトリスタン先生やメリダ先生を含めて色々質問責めにあったのだ。


「戦術は誰から教わったのか?」


「複数の魔法を使っていたが、いつから訓練していたのか?」


「その杖の製作者はだれなのか?」


 質問は僕自身から装備品にまで及んだ。

 戦術は前世でやっていた戦略シミュレーションゲームからだし、複数魔法が使えるのは子供のころから訓練していたからだと言って乗り切った。

 杖に関してはダンジョンで拾ったので僕も良く知らないので適当に誤魔化しておいた。


『【シーソラスの杖】魔法を使う際の範囲と威力を使用者が決定することができる。使い手次第で神器にも勝る素晴らしい杖ですよね』


 今イブが言ったとおりの効果をこの杖は持っている。

 僕は先日、何とか頑張って温泉に浸りながら【リペア】を使い続けた。


 そのおかげもあって、杖は元の姿を取り戻した。

 イブの解析により杖の効果が判明したのだが、時刻は深夜になっていた。


 早く試してみたかったが、翌日は旅行なので使えないと思っていた。

 だが、丁度良くモンスターが出てきてくれたのでここぞとばかりに使ってみた。


「威力が調整できるのは本当に助かる。これまではファイア打ったらフレアになるみたいな状況でおいそれと魔法を打てなかったからね」


 僕が打つ魔法の威力はかなり高い。それこそ、ただのファイアが魔王が打つ魔法みたく必殺レベルにまで昇華されてしまっている。

 この杖は僕の「手加減が苦手」という弱点を完全に補ってくれたのだ。


「範囲は指定できるし、威力もコントロールできる。これならば対象だけを燃やしたり凍らせたりできるもんな」


 きっとこの杖が壊れた状態であの場所にあったのは僕の手に収まる為だろう。


『何より凄いのがマスターには【温泉の魔石】がありますからね。魔力切れしそうな程に魔力を込めても連発できちゃうんですよね』


 そうなのだ。ただの攻撃魔法でも威力がありすぎるのでそんな状況になることはそうそうあり得ないとは思う。だが、これは切り札の1つとして使える。


 高火力の魔法を相殺するのに相手は全力を出すだろう。そこで打ち止めになった所で次撃が、それを何とかしてもその次が……。


 考えただけでも震えが止まらない。もしそんな状況に追い込まれるようなことがあれば僕も敵さんに同情してしまいかねない。そんな思いにふけっていると……。


『マスター。今日はそちらで寝るんですよね?』


「うん。何かあった時に召集されたりとか、誰かが部屋を訪ねてくるかもしれないからね」


 アークさんとかを筆頭に何人かの生徒と仲良くなったので夜遊びの誘いがあるかもしれない。


「それにしても疲れたけど楽しかったな」


 明日も楽しいハプニングが起こると良いなと考えると僕は目を閉じるのだった。


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