朋友は六親に叶うとは言うけれど
「みんな知ってると思うが、二年半振りの新人だ。みんな仲良くしてやってくれ。」
ゲームでは広場だった所に、いつのまにかギルドの訓練場が出来ていた。
気になって、辺りをきょろきょろと見回してみる。
地面は少量の乾いた草と、茶色い土肌。あと、沢山の石柱が吊るされた木が数本あった。ちょうどギルドの真裏に位置してて、広さは学校の校庭ぐらい。ちょうど真下に、あの闘技場があるのだろう。
訓練生は…みんな怖そうな人達ばかり。見た目で判断するのはあんまり良く無いけど。
「よ…よろしく…」
訓練所のルールは簡単だった。七日置きに、暴挙の石片を採ってくる実践テストがあり、見事に受かれば卒業。出来なければ留年だった。
一ヶ月で卒業する者も居れば、十年掛かる者も居るそうだ。
「さてと。じゃあそろそろ行くとするよ。」
「え?」
「それじゃあ頑張ってね。ルー。」
「えぇぇぇぇ…」
ギルドマスターはそそくさと帰って行く。
ここからでもギルドの建物は見えるが、いきなり知らない人達の中に放り出されるとは…
「あ…ああ…あの…!僕は…ぜ…ぜ…ぷと…るーいん…って」
僕のコミュ症が炸裂してしまう…希望とは裏腹にどんどん人は集まるし…
「い…いやぁ…ここは暑いなぁ…汗も出るし顔も火照るし。」
「………」
「………」
屋外とは思えない沈黙が包み込んだ。
そうだ…だからゲーム内コミュニティに入らなかったんだ…
『ガン!ガン!』
人混みをかき分けて、無骨で巨大な甲冑に身を包んだ冒険者が現れる。
「おい!大丈夫か!?顔真っ赤だぞ!」
「ぴゃう!」
気迫と距離感に圧倒され、思わず尻餅をついてしまう。
『ジャラジャラ!』
「ぬう!?」
顔も見えない甲冑の冒険者は、不意に巻きついた鎖で引き戻される。
「いやあんたが一番怖がらせてるんでしょ。」
少ししたら、鎖の主がここから見える位置に出た。
紺色のチャイナドレスの様な服装の女の子だ。年は僕と同じくらいかな…
「このゴリラが迷惑かけたわね。行くよ、ナイベ。」
「待てよファコラ!」
ファコラ…て呼ばれた女の子は、ゲームでは腕に巻くはずのバトルチェーンを髪留めの代わりにしている様だった。
確かに、あれだと鎖が邪魔にならない。
「ふう。で、君は今日が初日?」
「は…はい…」
「自己紹介するね。あたしはファコラ・レイ。君の指南役に抜擢されたエリートよ。」
ナイベって呼ばれた甲冑の冒険者が立ち上がる。
「お前、自分で志願したんだろ?」
「うるさい!このバカ!」
ファコラさんは瞬時に向き直る。
「ま…まあ、志願者の中から抜擢されたって意味よ。来て!」
僕はファコラさんに、出来るだけ離れない様についていった。
すると、あの石柱が吊るされた木の内の一本の前に着いた。
「えっと…これって…」
「モニュメントよ。見るのは初めて?」
ゲームでも、こんな奇妙な物は見た事が無かった。
「まあ、これを出現させる力自体、二年前に出たばっかだしね。君は新人だけど、あの呑んだくれ鬼教官懲らしめちゃったんだから…」
ファコラさんは、吊り下げられた石柱の内の一つに手を触れる。
『ピィィィィン…」
高音と共に石柱に光のラインが走り、そこから青白い煙の様な物が現れ、次第に形になっていった。
「こうやって、実体を持った幻影が手軽に召喚できる代物よ。あたしが呼び出したのはウルフ。十年前に絶滅した雑魚の内の一種。」
確かに狼だけど…
その様子を見ていた冒険者から声が上がる。
「おいそれ…狼は狼でも人狼じゃねえか?」
「あれ?」
青白い煙の狼は次第に大きくなり、二足に変わる。爪も鋭くなり、幻影とは思えない迫力を帯びる。
「ごめん…間違った…」
ファコラさんが弱々しく呟いた。




