辺り四方は静止寸前の筈
「ギロマさん!?」
「おお、急に静かになったんでな。どうした事かと思えば。」
ギロマさんは、この状態でも自由に動き回っていた。色も、元のままだった。
「世界ってのぁ不思議なもんだなぁ。対人100戦練磨かと思えばそこらの雑魚にやられちまったり。迷子のガキかと思えば、こんな都市伝説じみた能力とはな。」
「えっと…」
「ん?ああ。お前自身も、俺より動けないらしいな。ちょっと時間を作ろう。」
ギロマさんは突進してくる騎士を持ち上げ、反対方向を向かせた。当然、騎士は反対に突き進んでいきその姿がとっても面白かった。
「ん?こいつは何だ?」
「えっと…キーボード…」
「きーぼーど…か。あんと、見た所、時間圧縮中にしか現れないらしい。何が出来る?」
「使うと、この状態が…」
「ああ、問題ない。それが何なのか普通に気になるとからな。」
打つコマンドが思いつかないが、取り敢えず…
“coW.give me.random.item“
エンターキーを押し、世界が再び動き出す。二つ差異があるとすれば、ギロマさんが元の席についている事と、僕の手が妙な武器を手にしていた事だ。
水晶の剣らしい。装飾品などは殆どなく、ただ形容的な剣そのままの形をしていた。
『ゴオオン!』
騎士が壁に激突し、パラパラと少量の小石が散った。
再びこちらに向くと、今度はランスを捨て長剣に切り替えた。
『キン!キン!』
騎士は僕に斬りかかり、剣での決闘になった。ふと思い付き、少し距離を取る。
僕の専門はコンピュータだ。剣術じゃない。よって、
「やってられない。」
もう一度、僕の時間が始まった。ふと、些細な違和感にも気づいたが、今はどうでも良かった。
”coW.dbf.this night.speed-75%”
コマンドが実行され、騎士の動きが格段に遅くなった所を、僕は騎士の首元に剣を当てた。
「……!」
「ふう…ふう…ふう…」
観客席からざわめきが聞こえる。そこで思い出した。これは別に勝つ必要は無いんだって。それと…
『バタ…』
僕は倒れて、ギルドマスターが慌てて駆け寄る。
「い…一体何が…斬り合いになったかと思えば突然…」
「…眠いです。」
ギロマさんが僕の事を乱暴に担ぐ。
「ガキかと思えば強者かと思えば、やっぱガキだな。時間圧縮あんなに使っちゃガス欠に決まってんだろ。」
「時間圧縮だって!?この子が!?」
だんだんと目を開けていられなくなり、そのまま僕は眠り込んでしまった




