この森のダンジョンレベル、昔は28だったらしい
「ま、ツァディがサポート特化なら、私は援護特化だね。知らんけど。」
時間圧縮にエネルギーを使い過ぎたのか、はたまた長旅からか、僕のお腹がゴロゴロと鳴る。
僕は思わず赤面した。
「ああ、ごめんごめん、ちょっと大変だったかな。」
ヅェイオは白黒の木の実を指差す。
「データじゃ、あの実は食用に適するってさ。」
「ねえ、どうしてヅェイオは元の世界にも現れられるの?」
「ん?ああ、ROMディスクに実体形成ファイルもあったからね。ツァディの奴、悔しがってたなぁ。」
ヅェイオは悪戯に笑う。
それと同時に、僕は世界を戻す。流石にこれ以上はきつい。
「あれ?さっきのお姉ちゃんは?」
「うーんと…僕の世界に居るよ。」
「…へえ、よくわかんないや。」
するとスチュウは、さっきヅェイオの言っていた木を登り始めた。
拳大の木の実を数個取り、ぴょんと地面に飛び降りる。
「はい!ルー!」
「あ、ありがと。」
オレンジ寄りの赤色をしていて、皮は素手でも剥ける薄皮。その下からはみずみずしい真っ白な果肉が現れる。
「エントだよ。すっごく美味しいんだから!」
「エント?」
不思議に思い、皮の剥けた部分にかぶりつく。
この見た目、この味、どう考えてもマンゴーだ。
「うーん!美味しいね!ルー!」
「うん。なんだか昔を思い出すよ。」
昔、叔父さんと一緒に行ったファミリーレストランで食べた、パフェの具を思い出した。
叔父さん、いい人だったな…。
「どしたの?ルー。」
「いや、なんでも無いよ。」
実っている木の種類や、実の大きさなどには少々の差異があったけれど、その味は確かに思い出の中の味だった。
スチュウの取ってきた分を二人で食べ終わる。
気がつくと、辺りは夜の帳に覆われていた。周囲にはモンスターの赤く光る眼光も確認できた。
「ねえ、ルーは寝ててよ。スチュウが守ってあげる。」
「え?でも、スチュウは大丈夫なの?」
「へーきだよ。だって、さっきまでぐっすり寝てたもん。膝枕使う?」
「いや、良いよ。でも、ちょっと休みたいな。」
スチュウに番を任せるのは気がひけるけど、今は他に方法は無いみたいだ。
「じゃ…おやすみ。」
ーー スチュウ ーー
「おやすみなさい!ルー!」
ルーは木にもたれながら、気持ちよさそうに眠った。
スチュウは同じ木の下に座って、幻影を二、三放す。
スチュウの能力はモンスターの幻影を出すけど、使う力の量はモンスターの大きさ分。
『………」
だから、小さいけど強い人狼とかフォレストファントムとか、一番楽ちんに強い幻影を選ぶ。
「もう……」
それでも近ずいてくる悪いモンスターは、スチュウ自身がやっつけた。
「コク…コク…」
お昼寝したとは言っても、やっぱり眠たくなってくる。
ううん、ルーはスチュウを信じてくれたもん。パパはスチュウを信じてくれなかったけど、ルーは信じてくれた。
「えいっ!」
ルーを起こさないように、静かに敵を倒していく。
でも、スチュウの方がだんだんうつらうつらしてく…むにゃむにゃ…
『パチン!』
思いっきり、スチュウのほっぺを自分で叩く。
スチュウが意識無くなると、幻影も消えちゃうから。
「…こうなったら…」
幻影の材料の霧を、手に集中する。
霧は形が変わって、大きな三本の爪になる。
エルダーシザース…の爪だけ。




