二人旅五里霧中
「ルー、少し頼みがあるんだ。」
「どうしたんですか?ギルドマスター。」
ギルドマスターは、真新しい紙を出してくる。
「本部の方達が、君に会いたいってさ。」
「本部?ギルドの本部ですか?」
「北の果ての城塞都市さ。」
ギルドマスターの持っていた紙は、赤い文字で召喚状と書かれていた。
はあ、断っちゃダメ系の紙だな。これ。
「それじゃ行ってきますね。」
「え?荷造りとか無いのかい?」
「僕はいつも身軽ですよ。稼いだお金もギロマさんが使い込んじゃうし。」
「君はギロマの愛人か何かかい?」
「な!」
「はは、冗談だよ。」
仕方無く、ギルドの建物を出る。
「ツァーディー。」
「はい、ツァディです。何かご用ですか?」
「あのさ、」
「なお、未登録の土地にはテレポートはできませんのでご了承ください。」
「やっぱり聞いてるよ。ん?待って?じゃあどうやって…」
「冒険者らしく、その足で行けば良いでしょう。」
ツァディ、仕事なのは分かるけどもうちょっと愛想良くても良いじゃん。
「あ、もしかしてツァディ妬いてる?」
「そんな事 ありません!もー!」
ツァディは何かのコマンドを実行する。
「これで貴女のそのなよっちい身体でも、遠く離れたギルドまで行けますよ!」
「何したのかよくわかんないけど、気が効くね。」
「だってだって、もし私にグラウンドで使える3次元の体があれば…」
「ごめんごめん、そろそろ行くよ。」
「貴女なんて…って、あれ?い…行ってらっしゃいませ。」
ツァディ、昔の僕より人間らしいかも。
ある意味、心って言うのは作り物なのかもしれない。そうだな、水の流れに逆らって泳ぐ魚を、努力と呼ぶか、本能と呼ぶかで見方が変わる感じかな。
「ルー!スチュウも付いてって良い?」
「え?スチュウ?」
よく見ると、スチュウはおでこに召喚状を貼り付けて遊んでいた。
新人はみんな本部に顔出すシステムになったのかな。
「良いよ。一人じゃ危ないし。」
「わあい!」
不意にスチュウが飛び付き、僕の手が振り上がりキーボードが現れる。
「あ、」
「可愛いお嫁さんですね。瑠衣様。」
「違うよ!」
僕はすぐに世界を戻す。
「えっとえっと、頑張るね!」
「何を…」
スチュウにくっつかれたまま、僕は早速街を出る。
「ねえ、ギルド本部ってどうやって行くの?」
「んと、北に行く!」
まあ、今のあてのない中正解ではあるんだけどね。
「ねえね、ルーはさ、どこでその装備貰ったの?」
「えっと…生まれた時からしてた。」
「あはは!」
多分冗談だと思われてるんだよね。
少し歩くと、僕はある事に気づく。全然疲労を感じないのだ。
やっぱりツァディのお陰かな。僕は手をかざす。
「一体何回呼ぶんですか…今回3回目ですよ?」
「ごめんねツァディ、北の果てに行く一番良い方法無い?」
ツァディはキーボードを操作すると、地図のようなものが現れる。
「貴女が言っているギルド本部は、恐らくこの辺りでしょう。」
ツァディが地図を指でなぞる。
「人里を数カ所と、ギルド本部手前の遺跡を経由していけば安全でしょう。」
「ありがとうツァディ!って、もうツァディが全部やってよ。」
「私の権限にも限界という物が有るんですよ。」
世界が元に戻る。
「スチュウ、あっちに行くとどこに着く?」
「ウレの村だよ?どして?」
僕はその方角を指差す。
「じゃ、そこ行こう。」
◇
ーー ファコラ ーー
「あの二人が本部に?」
「ああ、召喚状が送られてきてね。参ったよホント。」
「………」
ギルド本部に呼び出されるのは、ギルドにとって重要な存在で有ると認められた証。
あたしが10年かけても、未だに取れない証。
「ギルドマスター…少し、外に出てて良いですか?」
「ん?ああ、構わないよ。」
あたしは訓練所に出て、すり減り砂時計の様な形になった木の前に立つ。
「はあ!」
『ガシン!ガチャン!』
木にバトルチェーンが当たり、辺りに騒々しい打撃音がした。
結局は能力…どんな努力も、結局は能力でひっくり返される。
ルーはある日突然現れたかと思ったら、街を天空に飛ばすは災害は食い止めるは…
スチュウは、ついこの間までただの子供だったってのに、あの幻影術であたしに出来ない事を軽々とやってのける。
『ドサ!』
腕が疲れてきて、木の前に少し座り込んだ。
涙が数的、手の甲に落ちる。




