15分はかかった
「色々大変だったね。ごめんね、ルー。冒険者らしい仕事があんまり無くて。」
「いえいえ、アムムトは天災みたいな物ですよ。それに、楽しかったですし。まあおやすみなさい、ギルドマスター」
「ああ。おやすみ。」
とは言ったけれど、借金が膨れ上がる一方だし、今までのは全部クエストじゃないため、収入も無し。
「ああーまずいー」
何度か所持金変更コマンドは試したけど、効く気配が全く無かった。ゲームでは借金は想定されて無かったからかも。
ギロマさんが勝手に返済期限まで決めちゃったし…
『コンコン』
「ん?」
ノックの音がする。誰かな?
『ガチャ』
「起きてる?」
「今寝ようとしてた。」
ファコラさん?
僕のパジャマ姿を拝みに来るなんて、ギロマさんくらいかと思った。
「どうしたんですか?ファコラさん。寂しくなったんですか?」
「いや、違うけど…」
よく見ると、ファコラさんの背中には小さな影が眠っていた。
「スチュウ?」
「この子の家が壊れちゃってね。まあ、雲魚の燻製とか即席の燻製釜とかくらいしか無かったからね。」
ファコラさんは上がり込んで、スチュウをベッドに寝かせる。
「この子置いとけない?ここに。」
「ええ?」
「この子の家壊れちゃってね、お願いだよ後生だから。」
「ファコラさんの家に置いたら良いんじゃ…」
「あたしに家なんて無いよ!寮生活だよ!」
少し視線をおとして、スチュウの寝顔を見てみる。
「仕方無いですね…」
「うーん!ルーはやっぱり良い人だね!」
子供の寝顔に負けただけだよ。
それに、スチュウもなかなかの訳ありみたいだし。
「じゃ、頼んだよ!おやすみルー。」
「はあ…おやすみなさい。ファコラさん。」
なんだか色々疲れたな。
僕はスチュウを少し横に寄せると、自分も眠りについた。
…今度は何か起こっても寝ててやる。
◇
「ん…くかぁ…」
何も起きなかった。
ここは外の光は入ってこないので、時間になれば光石の照明がつく仕組みになっていた。
「むにゃむにゃ…ん?」
スチュウもむくりと起き上がる。
「ルー…?あれ?ここは…」
「なんか知らないけど、ファコラさんが君をここまで運んできてね。ど?寝てる間に僕に潰されたりしなかった?」
「なんだか、パパを思い出したな。」
スチュウは起き上がって、部屋の外に出る。
その背中には、いつもの釣竿もあった。
さてと、僕も…って、あれ?
なんとなく心配になって、部屋の外を見てみる。
足音は出口とは反対方向の、闇に沈み僕も入らない廊下の奥に続いていた。
「うそ…迷子…?」
僕は急いで、その暗い方に小走りで向かった。
奥に行けば行くほど、地面の埃は分厚くなり、両壁のドアの劣化も進んだものとなっていった。
「分かれ道?」
T字に分岐した場所があり、奇妙な壁画らしき物もあった。
壁画は、巨大な蜘蛛の巣のような模様で、その下の方に小さく赤い点が付いていた。
…地図だ。
おそらく、この空間は街の地下全体に広がっている。故に広大だ。
途方にくれた時に、ふとある事を思い出す。
確か、スチュウの釣竿にマーキングが付いていた筈。解除した覚えもない。
「ここか!」
あれ…地上…?
スチュウの通った道を、僕も辿っていった。
松明の鈍い光だけが頼りではあったが、僕がいつも行く方とは別の階段を見つけた。
すぐさま急ぎ足で登っていくと…議事堂の扉が見えた。
「あれ?ルー?」
「スチュウ。地下の廊下に詳しいんだね。」
「うん。昔、パパと良くここに来たんだ。あと、ルーはお外には出ない方がいいと思うよ。」
「え?どうして?」
「だって、ルーまだパジャマだよ。」
「…あらら本当だ。」
慌てていて気がつかなかった。
素足で石の床を進んだんだ、冷たいわけだ。
「ルー、ここにどのくらい詳しい?」
「お目目つぶっても行きたい場所に行けるくらいかな。」
「…僕の部屋の場所まで連れてってほしいな。」




