一つの幻影は三首の幻影
「……!」
思い出したかもしれない。
ギルドマスターの言ってた、最初の一体を超えれなかった冒険者の一人。
「ん?どしたのお姉ちゃん?」
「ねえ、君の名前は?」
「私は…えっと…スチュウ!きっとスチュウ…であってるはず。」
すると、スチュウちゃんの膝が少しぐらついた、
担いでいるヤオハライの重量に耐えきれなくなってきているのか。何しろそれは、僕の背丈ほどはあるからね。
「あ、引き止めてごめんね!僕はそろそろ行くよ。」
「おはなししてくれてありがと!じゃあねルー!」
ヤオハライを運びながら、スチュウはよたよたと西の街道を進んでいった。
あの子は、いつか悟る日が来るまでああやって父を待ち続けるんだろうな。昔の僕みたいに。
あれ…あの子釣竿忘れてるよ。どうしよう…
気づいて取りに来るかもしれないので、一応そのままにしておいた。念のため…
”coW.mark.this item“
マーキングもしておいた。
ふと、雲一つ無い空を見上げてみる。
ここはゲームなんかじゃ無いんだなって。アムムトの味も、今のこの気持ちも、全部本物だ。
「わああん!」
後方から、早速スチュウの声がした。
アムムト…じゃなくて、一緒に侵入していたダーククイナに追われていた。
足の長く、空を飛ばない紫色の鳥のモンスターだ。
「10…10秒でいいから待ってよー!」
少しハラハラしたけど、だんだんその心配も無くなっていった。
スチュウの手から、青白い煙が徐々に発生してきている。
『………』
煙は瞬時にその形を変えて、ダーククイナと交戦を始めた。
絶望と夜想の獣…の、幻影だ。
狼、鶏、龍の頭と、背から生える蜘蛛の足。ゲームでは誰も倒せなかったボスモンスターだ。…僕を除いてだけど。
『ギャウ!』
当然、ダーククイナの勝てる相手では無かった。
「うう…気分悪い…」
「大丈夫?」
「ルー!うん、平気!…ちょっと頭痛がするけど。」
スチュウは少し周囲を見回すと、地面に落ちていた釣竿を拾い上げる。
「良かった…壊れて無かった。」
釣竿をキュッと抱きしめて、スチュウは幻影の獣の上に乗る。
しかし、石碑から出てきたものと同じく幻影は消えてしまい、転げ落ちてしまった。
「えへへ…」
何となく儚げで、健気で、楽しげな子だ。




