これがプロローグかも知れない
「これで…終わるよ。」
このエンターキーで、色々な物が終わる。この国の経済とか、色んな人の人徳とか…僕の人生とか。
アキレス腱はもう切れて使い物になら無いし、後頭部にはずっと銃口が突きつけられてるし、そもそも僕の身体は、椅子にきつく縛られてる。
「…………」
指が震える。やっぱり、死ぬのは怖い。
どうして、あんな話に乗ったのか…もし断れば、今頃はクーラーの効いた部屋で、お気に入りのゲームをしてたはずだった。
とは言え、仮に今生き残ったとしても一生獄中だ。
なんなら天国でも地獄でも、いっそ次の方がマシだ。
これで、国際連合の重役の、極秘のスケジュールを閲覧するプログラムが完成する。
「カタン」
「バン!」
エンターキーの音と、銃声が同時に聞こえた。
「……?」
おかしい、確かに今殺された筈。後頭部に雷の様な痛みも感じたし…痛み?
慌てて後頭部を手で触るが、風穴どころか、傷さえも無かった。それに、拘束されていた筈の左手の自由も効く。何かがおかしい。
見上げると、そこには黒っぽい岩壁があった。どういうわけか、さっきのボロボロの倉庫が、中規模程度の洞窟に変わっていたらしい。
どこか懐かしい様な、でも此処には初めて来る。まるで子供のころにテレビで一度見た場所に来た様な感覚だった。
『ツル…』
「きゃ!?」
鉄パイプの椅子が、ツルツルの岩のコブに変わっていたため、滑り落ちてしまった。
慌てて立ち上がるが、そもそもさっきまで立ち上がれなった筈。
一体どうなってるの…?
洞窟の中らしい湿った空気が嫌になり、おもむろに光のさす方に歩みを進めると、洞窟の入り口か出口付近に出た。
小高い岩山の上、少し強い横風が吹いているが、随分と見晴らしが良かった。
「まさか…」
傍に置かれた風化した龍の像。平野の先の少し遠望に見える小さな町。
間違い無い。これはシサラの洞窟。そして此処は、“LELLARAP WORLD”。ゲームの世界だ。




