少女は夢を見る
しばらくして、二人を送り届けたヴィリーが帰ってくると、おもむろにベッドに飛び乗り、ルルの隣に体を横たえた。
ヴィリーも自分と同じで、不在を寂しく思ってくれていたのだろうか。
ルルがヴィリーの頭を撫でてやると、ぐりぐりとルルの手に押し付けてくる。
その甘えた仕草に、思わずふふっと笑みがこぼれた。
「私も寂しかったよ。ヴィリー」
それから、離れていた時間の寂しさを埋めるように、ヴィリーの全身を撫でまくりながら、王都での出来事をヴィリーに語り始めた。
馬車でのジョージとの会話、初めての王都の光景と実際の水路を見た時の衝撃と感動、ルーカスの祖母の店で、恋人に間違われた事や、無事に薬を置いて貰えるようになった事。
そしてライアンと出会いと王都の街巡りの話……。
一晩では語り尽くせない程の初めてだらけの体験。
まだまだしゃべり足りなかったが、どうやらルルの目蓋は、もう限界のようだった。
「それでね、すごく体調が悪くなったんだけど、無性に森に帰りたくなって……。わがまま言って、みんなを困らせて……」
お喋りも、途切れ途切れになりながらやがて、そのまま眠ってしまったルル。
隣りで少女の穏やかな寝息が聞こえ始めると、ヴィリーがふいに一度、顔を上げ何かを確かめるように、じっとルルを眺めていた。
そして、しばらくするとまた、顔を伏せ静かに目を瞑った。
◆◇◆
夢を見た。
夢の中には少女がひとり。それは、少し昔の自分だった。
ずっとひとりぼっちだった。
でも、寂しくはなかった。それが普通だったから。
そう思っていたはずなのに、そんな私に会いに来てくれる人が出来た。
一緒に遊んで、笑ってくれた。とても、楽しかった。
その後、帰らなきゃといってその人が立ち上がった。
初めて、感じる寂しいという気持ち。
けれど、またねと言って帰っていったら、本当にまた来てくれた。
嬉しい、寂しい、嬉しいの繰り返し。
だけど、ある日突然またひとりぼっちになった。
一度でも知ってしまったら、もう以前のような「普通」には戻れなかった。
誰かと一緒にいるという喜びと寂しさを知ってしまったから。
私のこと忘れたのかな……。
ねぇ、早く思い出して、私はここにいるよ。
ずっとここで待っているから。
もしも、もう一度会いに来てくれたら、いいものあげる。
ほんの少ししかあげられないけど、君の欲しいもの。
どうして、欲しいものを知ってるのかって?
君の事が、大好きだからだよ。




