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密談 2




「ここ数年まともな雨が降らず……今年は、雨期に入ったにも関わらず、ただの一滴も降らないんですよ」


「……」


 村の長は、目をつぶりじっと村の窮状に耳を傾けていた。


「流行り病から4年。何とか村が立ち直ってきたとは言え、皆も疲弊(ひへい)しきっています。これ以上耐えられるかどうか……」


 ここ二〜二年、ルグミール村地方の雨の量は極端に減っていた。

 四年前の流行り病が何とか終息に向い、これから復興という時期に、その影響は計り知れないほどだった。

 そんな厳しい環境のなか、耐え忍び細々と生活してきたが、村の生活は徐々に困窮していった。

 そして、ついに今年は雨期に入っても一向に雨は降らず、村はもうぎりぎりのところまで追い詰められてしまったのである。



 ――このままでは、村が危ない。



 不安がべったりと張り付いた状況に、すでに冷静な判断など出来る状態ではなかったのだろう……。


 村の長はついに、禁断の儀式について重い口を開いたのだった。



◇◆◇



 かつてこの地方には「魔法」と呼ばれるものが、存在していたという。


 それらは限られた者にしか扱えなかったが、この国に繁栄をもたらしたと伝えられていた。

 もちろんそう言った者達は、とうの昔にいなくなっているが「魔法の素」tなるもの自体は、今もこの国のあらゆる土地に残っているとされていた。


 そして、すでにおとぎ話の中でしか存在していないにも関わらず、いまだに辺境の土地に根強く残る「魔法」に対しての厚い信仰が、水路事業の浸透を遅らせていた。


 今もなお、各地の小さな村々では天災の際に、かつて魔法が存在した時代から伝承されてきたという、古い儀式に頼ることがほとんどだった。

 一般的に行われるのは、祈りを捧げる祈祷(きとう)などだが、なかには非人道的な儀式も、密かに伝わっているところもあると噂されていた。


 そして、ルグミール村もまた「魔法」への信仰が、根強く残る土地のひとつだった。


 儀式の裏に潜む後ろ暗い内容を村の長の口から聞かされたあと、その場にいた者達は思わず息をのんだ。


「これが隠されておった儀式の裏の真実じゃ……。それでも行う覚悟は出来ておるのか?」


「……」


 重苦しい空気がその場を支配する。


「そして儂らが、“誰”かを……選ばなければならない」


「っ!」


 村の現状に、このままでは非情な儀式もやむを得ないと考える者も少なくなかったが、けれどいざ肝心のその役目を誰にと問われると、その罪の重さに誰も言葉を発することが出来なった。


 結局、その夜は誰も何も言えずに、解散したのだった。




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